こんにちは。NPO支援家の堤( @22minda )です。本日は「愛されSNSアカウントに共通する5つのポイント」と題し、SNSアカウントの運用において大切にしたいポイントについてお伝えします。自組織のSNS運用の改善方法に悩んでいらっしゃる方のヒントになれば幸いです。
愛されSNSアカウントに共通する5つのポイント
SNSはNPOの広報やマーケティングにおいて欠かせない重要なチャネルの一つとなっており、多くの団体が日々の情報発信に活用しています。ただ、十分に活用できているかや成果がしっかり出ているかというと、なかなか難しいという団体が多いのではないでしょうか。私にもよくSNS運用に関するご相談をいただきます。
SNSはサービスの種類も多く、それぞれのサービスごとで考えるべきことも様々で、さらに次々と機能やトレンドが変わっていくため「これさえやっておけば大丈夫」ということが非常に言いにくく、少しずつ長く続けていくことが求められるところが、難しく、もどかしいポイントでもあります。それでも多くのNPOのSNSのご相談を受けてくる中で、意識できていない団体さんが多いけれど、実は重要なポイントというのもあるなと考えていまして、私のSNS研修ではそういった内容を主にお伝えしているのですが、本日の記事でお伝えするのもそうした観点の一つです。
SNS運用をする際には、日々どうしても「投稿ネタをどうしようか」「クリックやリーチを伸ばすためにはどうしたらいいか」という自団体目線でばかり考えてしまいがちですが、SNSをうまく運用されているアカウントは「どのように見られるか」「どのように愛されるか」というフォロワー側の視点からの発想で工夫しているポイントが実はたくさんあります。本日はそのようなポイントを「愛されアカウントに共通する5つのポイント」としてまとめて5つ紹介します。
なお、本記事で紹介する5つのポイントは元々は『デジタル時代の基礎知識 SNSマーケティング 第2版』に掲載されているものです。同書の紹介は後ほど改めて記載しますが、本記事では同書で紹介されている5つのポイントについて、NPOならではの観点で翻訳したり私が重要だと考える視点を加えたものを解説いたします。
5つのポイント
愛されSNSアカウントに共通する5つのポイントとは以下の5つです。
- タイムリーである
- 親しみやすい
- 共感できる
- 役に立つ
- ユーザー参加型
①タイムリーである
まず一つ目は「タイムリーである」です。季節や記念日、年中行事、そして時間帯など投稿を行うタイミングに合わせたテーマを盛り込むことが重要という話です。例えば国際協力の分野で活用する団体が、世界◯◯の日などの国際デーに合わせて投稿を行うことは少なくありませんが、基本的には自組織の活動内容や受益者に関わりのある国際デーで投稿を行うということが多いかと思います。もちろんこれは重要なのですが、今回の記事でお伝えしたいポイントとしては必ずしも団体の活動や受益者に直接の関わりの有る無しに関わらず、世間一般の人がSNS上で(というよりも日常生活で)気にしているであろう文脈に合わせた投稿をすることで目に止めてもらいやすくなる、ということです。
また、話題となっているニュースや流行に関する話題も「タイムリー」であると言えます。Xの「トレンド」、YouTubeの「急上昇」動画など各SNS等では盛り上がり、話題となっているテーマを見つけやすい機能もありますので、こうしたところから自組織の投稿ネタを検討することも有効です。
②親しみやすい
ユーザーに親しみやすさを感じてもらえる投稿も非常に重要です。特にNPOはそもそもが「堅苦しい」「よくわからない」「うさんくさい」等のイメージを持たれている場合も少なくありませんし、団体名を冠したアカウントで真面目なお知らせや投稿ばかりを投稿しているけれど実は新しく多くの人とのつながりを増やしていきたいと考えているような場合にはご検討いただきたいポイントです。
企業等では自社キャラクターなどの活用をすることも少なくありませんが、NPOでキャラクターを持っているところはそう多くはないかと思います。そのときにはぜひ、スタッフやメンバーなどのNPOで活動している人の顔や様子が見える投稿を考えてみてください。どのような人が活動しているのかが見えるようになることも親しみやすさの重要な要素となります。
また、SNSやYoutube等で「◯◯に向けての第◯日目」など趣味や仕事等で少しずつ上達していく過程や準備が進んでいく過程を見せていくようなコンテンツを見たことのある方もいらっしゃるかと思いますが、このように「不完全さ」「舞台裏」「過程」を見せていくことも、親近感や期待感につながる要素となります。
③共感できる
3つ目は「共感できる」です。「共感」はNPOの情報発信においてはよく聞かれるキーワードですし、社会課題に関わる普及・啓発や寄付・ボランティアの募集等の際に共感していただくことを意識した投稿を普段から考えていらっしゃる方も少なくないでしょう。
こうした観点が重要なのはもちろんですが、今回本記事でお伝えしたいSNSにおける共感は普段NPOの方たちがよく使っているempathy(あるいはsympathy)ではなく、もう少し気軽で反射的な感情表現のことを指しています。「嬉しい」「かわいい」「すごい」「懐かしい」「感動する」「驚く」などなど。各SNSには「いいね」機能があり、いいね数をなるべく増やしたいと考えていらっしゃる担当者の方がほとんどだと思いますが、社会課題や受益者への共感(empathy)をストレートに感じてもらうことを考えた投稿だけで思ったような反応を得ていくことは難しいです。パッと見で「嬉しい」「かわいい」「すごい」などの感情表現がしやすい気軽な投稿を織り交ぜていくことも考えてみましょう。
④役に立つ
有意義な情報は目に止まった際に受け入れやすいですし、周りの人にも伝えたいと感じる方も少なくないためシェアされやすいコンテンツです。役に立つ投稿はフォロワーに「フォローしていて良かった」と感じてもらいやすく関係維持につながりますし、またシェアしてもらうことによって新規のフォロワー獲得にもつながっていきます。
知識やノウハウ、豆知識・雑学などの切り口で投稿案を考えてみましょう。社会課題に関する統計データ等(例:日本の子どもの約9人に1人が貧困状態)も知識に関わる内容となりますので、特にまだまだ認知が不十分であるという社会課題に取り組んでいる場合にはイメージのしやすい数値情報と合わせて伝え方を考えてみると良いと思います。
また、直接社会課題そのものに関わるものでなくとも、様々な切り口が考えられます。例えば森林の保護に関わっている団体であれば、森林や動植物に関しての雑学や、日常生活では必要ないけれど現場で活動する中では重要なちょっとしたスキルや技能といったこともあるでしょう。そうした情報や写真等も豆知識・雑学として受け入れてもらいやすいものだといえます。皆さんの活動分野ならではの情報にはどんなものがあるでしょうか。自分たちだけでは当たり前になりすぎて考えにくいという場合には、活動歴の浅いボランティアさんやお知り合いの方とお話しながら「活動を始めるまで知らなかったこと」「意外だったことや驚いたこと」などを考えてみると良いでしょう。
⑤ユーザー参加型
最後は「ユーザー参加型」です。自組織独自のハッシュタグ付きの投稿を呼びかけたり、クラウドファンディングの際にシェアを呼びかける「シェア祭り」を開催していらっしゃる団体も多くありますが、フォロワーを始めとしたSNSユーザーが気軽に参加できる企画を用意していくことはとても有効な手法であり、企業等のSNSアカウントでも日常的に活用されています。
具体的にはクイズや問いかけ、大喜利などの形式が採用されることが多くあります。気軽にコメントしやすい投げかけは、コミュニケーションのハードルが低く、フォロワーとの関係を深めやすいです。
大喜利はどうしてもお笑い要素が強いので、取り入れにくい団体も少なくないかとは思いますが、クイズや問いかけは比較的どんな活動分野の団体さんであっても取り入れやすいのではないでしょうか。
クイズや問いかけをコンテンツに取り入れる際のコツは「気軽に答えやすい」ものにするということです。「◯◯市の名産品は?」などその地域や団体のことを知っていないと答えられない質問や、「海外旅行の定番のお土産は?」などのすぐには連想できないような質問、「◯◯の3つのポイントは?」など答えるのにたくさんの文字数が必要なものなどは気軽には答えにくく、興味を持ってもらったとしても思うような反応が期待しにくいです。誰でも答えられるもの、あるいは自由な発想でどんな答えでも大丈夫なものなど、多くの人が気軽に答えやすいかどうかという観点を意識しながら考えてみてください。
アルゴリズム変更により「愛される」アカウント運用が重要になっている
さて、ここまで5つのポイントそれぞれを解説してきましたが、なぜ最近のSNS運用においてはこのようなポイントをおさえて「愛される」アカウント運用を目指すことが重要なのか、という点についても少しお伝えしたいと思います。
それは「愛されるアカウントでなければ、投稿を見てもらうことができなくなっているから」です。各SNSには投稿の表示順や表示有無を決める仕組み、アルゴリズムがありますが、最近はどのSNSにおいても「フォロワーからの反応をもらえているかどうか」という観点が重視されるようになってきています。どのようなフォロワーからどのような反応をもらうことが重要なのかについてはSNS毎に異なりますし、同じSNSでも仕組み自体が変遷していくものではありますが、基本的には多くの人に関心を持ってもらえているコンテンツであれば他の多くのユーザーにも関心を持ってもらいやすいと期待できる(と各SNSサービスのアルゴリズムが判断する)ので「おすすめ」に表示する、といったことや普段からいいねやコメントをしているユーザーにはそのアカウントの新着の投稿を優先的に表示をする(逆も然り)といった仕組みが取り入れられています。
ですので、週に◯回とか、毎日投稿などの投稿頻度だけを守りながら運用をしていたり、あるいはとにかくフォロワー数を伸ばすことにばかり注力をしていても、肝心の投稿がまったく見られていない(注目されていないというだけでなく、場合によってはそもそも表示すらされていないという場合もあります)ということになりかねません。それを防ぐためには、普段からフォロワーと良い関係を築いていくことが重要であり、SNS上でのコミュニケーションのハードルを下げ、気軽にいいね・コメント・シェアなどをしてもらいやすい投稿の切り口の例が本日ご紹介した5つのポイントなのです。これらのポイントを活用しフォロワーとの関係を深めておくことで、いざ注目して欲しい投稿や支援のお願いなどの重要な投稿をした際にも多くのユーザーに表示され、注目してもらえるチャンスが広がると言えます。
5つのポイントを活かすために
フォロワーとの関係を強化しSNS運用の効果を高めていくために、ぜひ本記事でご紹介した5つのポイントを活かすような投稿案を考えていただければと思いますが、考えていく際に悩みになりそうな点についても触れておきます。
すべての投稿で5つのポイント全部を網羅する必要はない
今回5つのポイントをご紹介しましたが、必ず網羅しなくてはいけないということはありません。活動分野や組織の特性、SNSの運用方針などによっては取り入れにくいポイントもあるかと思いますので、全部やらなくてはということではなく、自組織でも取り入れられるものはどれだろうか、という観点で気軽にチャレンジしてみてください。
アイディア出しには掛け合わせも有効
5つのポイントを活かした投稿ネタを考えるアイディア出しをする際には、5つの観点それぞれでどのような投稿が考えられるかを考えるだけでなく、複数のポイントをかけ合わせてアイディア出しをすることも有効です。例えばANAでは「バレンタインに世界中のハート地形の島の写真を投稿する」といった形で「タイムリーである」と「ユーザー参加型」をかけ合わせた投稿をしています。いろいろな組み合わせでアイディア出しをしてみましょう。
他団体アカウントの分析にも使える
5つのポイントを元に投稿案のアイディアを考えるのが難しいという場合は、他団体のアカウントの分析から始めるのもオススメです。参考にしたい団体のSNSアカウントを見て、投稿に愛されアカウントの5つの観点がどのように活かされているのかを分析してみましょう。具体的な事例で活用されている例を知ることで、自組織なりの活かし方についてヒントを得ることができるはずです。
本記事の5つのポイントの出典元の書籍
最後に、本記事でご紹介した5つのポイントが掲載されている書籍についてご紹介します。
『デジタル時代の基礎知識 SNSマーケティング 第2版』
本書は、SNSマーケティングの基本的な知識から、各SNSの特徴を踏まえたコンテンツの考え方、分析方法、フォロワーとのコミュニケーション方法、SNS広告へのチャレンジなど組織としてSNSを活用するための考え方の基本が網羅的に扱われています。Facebook、X、Instagram、LINE、YouTube、TikTokと主要なSNSについて幅広くカバーしていますし、マニュアルや運用ルールの作成についてなど組織的な運用についてという視点で欠かれている内容も多いので、一人もしくは少人数で複数のSNSを管理していかなければならないNPOの担当者にはオススメできる本です。
本記事の内容が参考になり、他にも自組織の運用に活かせるポイントについて学びたいという方はぜひ手にとって見てください。
書評ブログの方では、本書も含めてSNS担当者の方にオススメの書籍や、どのような視点で読む本を選んでいけば良いかについて書いた記事を書いていますので良ければこちらもお読みください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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