NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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『働く意義の見つけ方』『自分をいかして生きる』で「働くこと」について考える − 『LIFE SHIFT』について語るときに僕の語る本 ②

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 『働く意義の見つけ方』『自分をいかして生きる』で「働くこと」について考える − 『LIFE SHIFT』について語るときに僕の語る本 ②

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。人生100年時代を考える書籍『LIFE SHIFT』の読み方を考える記事の第2弾です。

昨日の記事はこちら。

昨日の記事では『LIFE SHIFT』という本自体のまとめと、そこで語られる「マルチステージの人生」に照らしてこれまでの自分の人生を振り返ってみました。今日からは、『LIFE SHIFT』の内容をより噛み砕いて考えていくために、私が参考にした本について書いていきます。

「働くこと」について考える

人生100年時代には働き続けることが求められる

『LIFE SHIFT』を読んででまず強烈に感じるのは「働き続ける必要がある」ということです。もっといえば「自分の生活を成り立たせ続けるためには働き続ける必要がありそうだ」ということ。
日々の仕事に忙殺されすぎていたり、仕事の楽しさを見出しにくいという状況にいる人にとっては「働き続ける」というのは苦しい未来と感じるかもしれませんが、著者のリンダ・グラットンはそうではないといいます。自分が何者であり、何をしたいのかを見つめ、一人ひとりが自分の人生の舵取りをしながら関わり合う社会はより活力に溢れた社会であるといいます。
とはいえ、じゃあ実践してみようかというときにエクスプローラーとか、インディペンデント・プロデューサーとか急に言われてもなかなか具体的な一歩をイメージすることは難しいのではないかと思います。
ではどうすればいいのでしょうか。
マルチステージの人生を生きていくためのベースとして著者が指摘するのは「アイデンティティ」です。長い人生を主体的に生きるためには「自分が何者か」というアイデンティティをつねに意識することが必要だといいます。
 

働き続けるために答えるべき問い「自分は何者か」

とはいえ、この「自分は何者か」という問いはストレートに考えるにはなかなか哲学的すぎる問題です。個人的には哲学するの好きですけど、働くということと合わせて考えるのであれば、いきなり自分に矢印を直接ぶつけるのではなく今自分がやっている仕事の方から考えてみる、というのも一つの方法ではないかなと思います。
「いま自分がやっている仕事は、自分にとって、社会にとってどんな意味があるのか?そしてそのことを自分はどう感じるのか?」
こうしたことを思考していくことによって「自分は何者か」という問いについても考えていくことができるのではないかと思います。
ということで、「働くこと」や「仕事」について考えるときのヒントになった本をご紹介。
 

『働く意義の見つけ方---仕事を「志事」にする流儀』

まず一冊目。 

どんな本か?

NPO法人クロスフィールズの代表小沼さんの本です。クロスフィールズというNPOは留職という「留学の仕事版」のような事業を行っているNPOです。(クロスフィールズさんのHPはこちら→(http://crossfields.jp/)日本の大企業で働く社員を発展途上国の現地NPOなどに派遣し、現地で働くことを通じて自分のプロフェッショナルとしてのスキルや姿勢で社会課題を解決にチャレンジする機会を提供するプログラムは、自分自身がプロボノとしてNPOと関わることで仕事のモチベーションを維持していたこと振り返ってみても貴重なプログラムだと感じます。
そんな事業に取り組むクロスフィールズの代表小沼さんがどのような経緯でクロスフィールズを立ち上げるに至ったか、留職という事業によりこれまでにどんなことが起こってきたのかということが描かれている小沼さんの自伝的な著作です。
  • 青年海外協力隊で働いたシリアの人たちから学んだ「社会とのつながりを持つ」という仕事の意味
  • マッキンゼーを経てクロスフィールズを立ち上げるまでの試行錯誤
  • 「社会を変える現場」経験を積むというクロスフィールズの留職事業の事例
『働く意義の見つけ方』というタイトルの通り、仕事の意義についてアツい小沼節で書かれています。(小沼さんのブログも大好きで、何年も購読しています。アツい小沼節についてはぜひブログをご覧ください→NPO法人クロスフィールズ 小沼大地のブログ

現在の仕事は「社会とのつながり」を感じるか?

小沼さんがキーワードとしているのは「社会とのつながり」です。
「自分」と「仕事」と「社会」という3つが1本の線でつながっているような状態であることが理想の働き方だといいます。
「自分」と「仕事」がつながっているとは、例えば
自分がなぜ今の仕事をしているのかに対して、納得できる答えを持てている
「仕事」と「社会」がつながっている状態とは、例えば
目の前の仕事が誰かの「ありがとう」につながっていることを具体的に想像できる

 ということ。

この両方のつながりが実現できていてはじめて3つが結びついている理想の働き方であり、現在日本の多くのビジネスパーソン(特に大企業で「目の輝きを失って」働いている人)はこの社会とのつながりを失っているのではないかというのが小沼さんの問題意識であり、「社会を変える現場」を目の当たりにする留職事業はそんな状態に対して小沼さんが提示する解決策の一つです。

 マルチステージの人生を切り開く「青黒さ」

『働く意義の見つけ方』の中でもう一つ面白いと思ったキーワードは「青黒さ」です。
「青臭さ」と「腹黒さ」を組み合わせた造語で、もともとはリクルートワークス研究所が作った言葉だそうです。
小沼さん自身の言葉を少し引用します。
理想や夢、社会の不条理に対する義憤、自らの志といったものをエネルギーにして進む「青臭さ」と、時には根回しや上手い立ち回りもしながら、組織の中で物事を戦略的かつ用意周到に進めていく「腹黒さ」。この一見相反する要素を兼ね備えることこそが、日本社会、特に大きな組織の中でおもしろい何かを成し遂げる人に最も必要な要件ではないかと僕は思う。
 これは大組織にいるときに関わらず、LIFE SHIFTでいうマルチステージの人生を立ち回っていくためにも非常に大事なことだと思います。
例えば、ポートフォリオ・ワーカーとしてプロボノなどの活動をする際、前提としてプロボノ先の団体に貢献するものでなければならないのは当然ですが、その活動を通して何を得られるか、得ようと思って活動をしているかという視点は重要で、ただ闇雲にプロボノをしていてもおそらく次のステージへの移行のタイミングは訪れないでしょう。
 

『自分をいかして生きる』

続いてもう1冊。 
 

どんな本か?

2冊目は、働き方研究家という肩書きをもって活動する西村佳哲さんによる仕事や働き方について考える3部作の2作目。1作目の『自分の仕事をつくる』(自分の仕事をつくる)で行った「いい仕事」をする様々な方たちのインタビューを元に、西村さん自身が「いい仕事とは何か?」という問いについて思考を深めていく思索的な一冊です。1作目は就活中に読み、2作目である今作は就職後に読んだのですが、LIFE SHIFTについて考える際にこの本のことを思い出しひさびさに読み返しました。

そもそも仕事とはなんだろうか?という問いを丁寧に考えていく西村さんの記述を読みながら、自分なりにあれこれと考えていくのはとても気持ちの良いものでした。

仕事の成果とは海に浮かぶ島のようなもの 

西村さんは仕事の成果というのは海に浮かぶ島のようなものだといいます。
海上からはほんのすこししか見えないが、島は海の上に突き出た大きな山であり、下には見えない山裾がひろがっている。
水面に出ている「成果としての仕事」の下にある山はいくつかの階層に分かれており、上から<技術や知識>、次に<考え方や価値観>があり、そして一番下には<あり方や存在>があるといいます。
あり方や存在とは、
どんなふうに働いているか。どんなふうに生きているか。毎日の暮らしの中でどのような呼吸をして、食べ、眠り。何を信じ、恐れ。話したり、聴いたり。ほかの人々や自分自身と、どんな関わりを持って行きているかということ。<あり方>とは生に対する態度や姿勢で、そこに自分の<存在>が姿をあらわす。
ということ。
仕事とはそれらの山全体のことであり、モノであれサービスであれわたしたちは水面に出た成果としての仕事だけではなく、丸ごと全部を受け取っているのではないかといいます。
目の前の仕事すべてに自分の丸ごと全部をさらけ出していく、というのはある意味とても厳しい姿勢だとも思う。
それでもLIFE SHIFT時代を生き抜く姿勢というのはそういうことなんだろうとも思う。
エクスプローラーというのはまさに自分なりの考え方や価値観、そしてあり方なんかを模索するステージでしょうし、そのプロセスを経ずにインディペンデント・プロデューサーとして自分なりの仕事を生み出していこうというのもきっとどこか片手落ちな仕事になってしまうのではないかと思います。

西村さんの考える「社会とのつながり」

社会とのつながりという点では西村さんは以下の様な図式を提示します。
 
<社会>ー<自分>ー<自分自身>
 
単に社会対自分という図式で捉えてしまうと、自分か社会のどちらか片方を大切にすると、残りのもう片方を大切にしきれないという状況も生じかねないといいます。
「本当はやりたくない」仕事をやらざるを得ないような時、自分の実感を感じていると、働きつづけるのが困難になる。こうした時、その耐え難さを味わう前に「ない」ことにして、とりあえず仕事をす付けるための心理状況が確保されることもあるだろう。<自分自身>に対する感受性にツマミがついていたら、それを0の側へまわして入力を絞るように。問題はこのツマミが、家庭用とか、仕事用とか、恋人用といった具合に細かく分かれていないことだと思う。個人的な経験からの見解だが、仕事における感情回路の遮断は、そのまま全体的な実感の喪失につながりかねない。こうした自己疎外の積み重ねが、場合によっては心身症や失感情症、適応障害や抑鬱状態をも招いてしまうのではないか。真面目でかつ能力の高い人。つまり社会の各種矢印に対応出来てしっかり応じようとする人ほど、この困難さを抱えやすい。
その自分を、<自分>と<自分自身>に分けて考えると良いそうです。<自分自身>も<社会>もどちらも大切で、<自分>はその間で双方の調和や調停をとるのが仕事である、という図式で捉える、ということ。
 

「仕事」と「自分」と「社会」の関係を説明できるか

小沼さんの「自分」ー「仕事」ー「社会」を1本の線でつなぐという考え方と、西村さんの「社会」ー「自分」ー「自分自身」という図式の中で仕事を捉えるという考え方、
どちらもとても面白いと思います。
私たちが学ぶべきなのは、これらの図式をがんばって頭に入れようとすることではなくて、「仕事」と「自分」と「社会」をどのように位置づけるかを自分の言葉で説明できるようになることなのだと思います。実感を込めた言葉で語れるように仕事をしていきたいですね。
 

以上です。

 

次の記事では、『LIFE SHIFT』でマルチステージの人生と並んで重要なキーワードとして掲げられていた「無形資産」について考えてみたいと思います。

 

【8/31更新】第3弾の記事を公開しました。 

22minutes.hatenablog.com