NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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『LIFE SHIFT』について語るときに僕の語る本 ① − 『LIFE SHIFT』のまとめと振り返り

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『LIFE SHIFT』について語るときに僕の語る本 ① − 『LIFE SHIFT』のまとめと振り返り

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事ではベストセラー書籍『LIFE SHIFT』という本の読むべきポイントについて、私自身の人生の振り返りを実例としてご紹介します。

なぜ『LIFE SHIFT』を読んだのか

今年の夏は意図的に予定を減らして本を読んだり、考えたりする時間を取るようにしていました。
自分で決めたテーマを元に色々なジャンルの本を同時に何冊も読みながら、そのテーマについてあれこれ考えてるというのが習慣というか趣味のようになっているのですが、今年は特に意図して決めたつもりではないのにどうしても引きつけて考えてしまう本があります。

昨年11月の発売から話題となっている本です。今年に入っても売れ続けており、各地で勉強会なんかも開かれているようですね。私は年末年始の休暇中に著者の前作である『WORK SHIFT』(ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉)と2作続けて読みました。

いやもう本当に面白い。これからの時代にとても大事な本だと思います。
ぜひ多くの人に読んで欲しいですが、個人的には特に教育に関わる人はぜひ読むべきだと考えています。なぜなら自分たちの目の前にいる子どもたちが大人になるとき、彼ら彼女らがいったいどんな時代を生きることになるのか、想像力を持って接するのが教育など子どもに接する仕事をする大人として誠実な姿勢だと思っているからです。どんどんと不確かさが増していく時代の中で、確かな将来を予想することは難しいですが、だからこそ一人ひとりが想像力を持っていくことは大事だと思います。で、『LIFE SHIFT』という本はその想像するという作業を行うための前提条件というか考えるヒントをくれる本ではないかと。
丁度昨年転職をして自分の仕事や人生について考える機会も多かったことから、自分のこれまでとこれからの歩みを『LIFE SHIFT』の文脈に照らして考えてきたのですが、なかなかすべてがストンと腹落ちするわけでもなく、未熟なりに模索している日々の道行きすべてが順調ということにも残念ながらなかなかなりません。むしろ日々の実践については泥沼かと思うほど、足取りは重いことが多いです。
それで色々な本を読みながら考え続けていたのですが気づけば今年も後半戦。そんなタイミングで東洋経済が『特集 LIFE SHIFT実践編』という特集号を出したことで、改めて同書自体について考える機会を得ました。

この雑誌を読んだことをきっかけに改めて『LIFE SHIFT』についての自分の考えを振り返りながら整理したのですが、今回は『LIFE SHIFT』に関連して読んだ本と一緒に整理してみたいと思います。

基本的に自分の考えの整理のための記事ですが(なので恐ろしく長いです)、LIFE SHIFT時代の日本社会についてや、自分自身のLIFE SHIFT実践についてモヤモヤと考えている誰かのヒントにもなれば幸いです。
 

LIFE SHIFTとはどんな本か

さて、前置きが長くなりましたが、まず『LIFE SHIFT』とはどんな本かを簡単にまとめていきましょう。 

「人生100年時代」は何を意味するか

著者のリンダ・グラットンがまず前提として指摘するのが「超長寿化」です。
2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107歳まで生きると予想されています。
多くの人が100歳を超える人生を生きる時代が到来するというのです。
そしてこの「人生100年時代」がもたらすのは「働く期間の長期化」です。
これまでの時代であれば、「学ぶ・働く・引退する」という3ステージで人生を構成すればよかったのに対して、長寿化により延びる「引退期」を支えることが難しくなっていきます。引退期間が伸びればその分必要な貯蓄は増えますし、なおかつ少子高齢化にともない公的年金制度には歪が入り受給年齢の引き上げや給付金額の切り下げが行われていきます。その結果、多くの人が働く期間を延ばす必要があるということです。
考えなければいけないポイントはまだあります。これまでの3ステージ型のライフスタイルであれば人生の前半の「学び」の期間に培ったスキルで労働市場に参入し、働きながら深めたスキルをもって約40年程度の労働人生を渡りきることが可能な場合が多かったのですが、今後現役として働く期間がが50年、60年と延びていくと、その間に当然に社会の変化が起こり、一つのスキルセットだけで労働人生を渡りきることは難しくなると、著者は指摘します。単純にいまいる会社で働く期間を何年か伸ばせば良い、という話ではないということです。少子高齢化を背景とする公的年金制度の崩壊や終身雇用制度の崩壊、AI等の技術革新による労働市場・環境の変革などすでに変化が見えてきているものだけでも、社会全体に、そして私たち一人ひとりに大きな影響を与えることが想像されます。不透明な時代を予想するのは難しいですが、少なくとも新卒入社した会社一社に勤め上げる社会人人生というのが社会のスタンダードではないということはいえそうです。

マルチステージの人生 

同書の中盤以降ではそんな「人生100年時代」を生きる私たちが意識すべきいくつかのキーワードを解説しているのですが、その中でも特に重要だと感じる2つのキーワードについて考えてみたいと思います。
まずひとつ目が「マルチステージの人生」
これまでの学ぶ・働く・引退するという3ステージが通用しなくなり、働く期間が長期化する時代においては、学びや仕事のステージをいくつも移行しながら、複数のキャリアを経験していく「マルチステージの人生」へとシフトしていくとのこと。 
著者は新たに登場する具体的に3つの「ステージ」を紹介しています。
エクスプローラー
長期間の旅をするなど、日常生活から離れたところで経験を積み、人脈を広げたり社会に対する見聞を広める時期。 
インディペンデント・プロデューサー
既存の企業など組織の枠から外れ、独立して生産的な活動に携わる時期
この時期の生産活動は事業の成功自体よりも、やりがいや人とのつながりを重視したものとなることが多いとのこと。 
ポートフォリオ・ワーカー
企業勤め、副業、NPOでのボランティア、地域での活動など異なる種類の活動に同時にいくつも関わる時期。お金ややりがい、人とのつながりなどの複数の目的に応じて活動をアレンジする生活となります。
3ステージ型の人生では、20歳前後で就職し、60歳程度まで働いて、引退するというライフステージに則り、同世代が一斉行進のように進んでいきましたが、マルチステージの時代においては明確なロールモデルを上の世代に求めることはできなくなり、年齢に関わらずステージを転身していくためより多様な生き方が実践されていくといいます。
 

無形資産

そして2つ目のキーワードが「無形資産」です。
長く続くマルチステージの人生をしっかりと歩んでいくためにはお金などの有形資産だけでなく、家族や友人、スキルや知識、健康といった無形資産を築いていくことが不可欠だということです。
無形資産は次の3つに分類することができるそうです。
生産性資産
仕事に役立つスキルや知識、仕事につながる周囲との人間関係や評判など仕事の成功に役立つ要素
活力資産
健康、友人、愛など、それぞれの人に肉体的、精神的な幸福感と充実感をもたせ、やる気をかきたて、前向きな気持にさせてくれるもの 
変身資産
新ステージへの移行を成功させる意志や能力、多様性に富んだ人的ネットワークなど

その他の重要キーワード

さらにその他にも、マルチステージの移行を促す要素がいくつか紹介されています。 
アイデンティティ
長い人生を主体的に生きるために、「自分が何者か」というアイデンティティをつねに意識することが必要
リ・クリエーション(再創造)
余暇時間をレクリエーション(娯楽)ではなく、リ・クリエーション(再創造)に使うことが必要
夫婦の役割分担
夫婦共働きの家庭が増え、夫婦のいずれもがマルチステージの人生を歩んでいくために、いずれかが新しいステージへの以降をする際に互いの役割を調整し、サポートし合うことが必要
 
ここまでが、『LIFE SHIFT』で語られる内容についての非常にざっとしたまとめです。
先進国の中でもトップクラスに少子高齢化が進んでいる日本は特にLIFE SHIFTする必要性に迫られているといいますが、皆さんはどのように感じるでしょうか。
 

『LIFE SHIFT』に書かれているポイントをざっと掴むためのオススメ 

LIFE SHIFTについては東洋経済の特集号が日本の状況に照らして解説を試みています。同書のざっくりとした要約に加えて日本で様々なLIFE SHIFTの実践を行っている人たちの例をわりと多く載せているのでなかなか面白いです。ただ、現在の日本の状況をどのように捉えるか、その中で自分はどうあるべきかはまさに自分のアイデンティティに基づいて考えるべきだと感じますので、人の実践例を参考にするよりは未読の方はまずは原初を手に取り、自分はどこから考えたいかを感じてみることをおススメします。
 
とはいえ、分厚い本ではありますので、なかなか読む暇ないよ!という方でまずそのエッセンスだけを感じたい方は、以下のほぼ日の糸井重里さんと著者リンダ・グラットンの対談記事がオススメです。内容を簡潔に要約しつつ、糸井さんが良い感じに日本の文脈に照らした発言をしていて分かりやすかったです。
 

 
 

私はどんなライフステージ・ワークステージにいるか

さて、ここで少し私自身について書いてみたいと思います。これまでやってきたことをLIFE SHIFTの各ステージに則って振り返ってみます。 

大学時代(2006年4月〜2010年3月):エクスプローラー

  • 筑波大学で社会科学を学ぶ。専門は地方政治
  • 課外活動でさまざまなボランティア活動に参加
  • ボラティアセンターを学生団体で運営し、地域のボランティアニーズと学生のマッチングやボランティアコーディネートを行う
  • 児童養護施設での学習指導ボランティア。ボランティア先の施設では非常勤の職員も経験
  • つくば市市議会議員の元での議員インターンシップ、市民活動センターでのアルバイトなども経験
 
などなど、細かく書き出すとキリがないのですが、色々とやっていました。
「意識高いね」と言われることもよくありました。(当時は今ほど揶揄的な意味合いは少なかったように感じますが)
大学時代というのはLIFE SHIFT的な言い方をすると私にとって最も「日常生活から離れた」時期でした。
ほとんどの学生が大学の宿舎もしくは大学周辺のアパートで一人暮らしをするという筑波大学の環境は、4年間まるごと宿泊学習をしているような生活であり、それまでの人生と大きく変わった生活でした。
また、総合大学であることや課外活動が活発であることとも合わせ、友人や地域の人たちと非常に濃く関わることのできた4年間は私の人生の中でもとても大切な時間となりました。
多くの人と時間をともにしながら、一人旅や読書など自分一人での時間も贅沢に楽しむことのできた学生時代は私にとってはエクスプローラーの時期であり、この時期に考えたことや経験したことは現在の私の考えや仕事にも非常に大きく影響しています。 

就職〜社会人6年間(2010年4月〜2016年4月):ポートフォリオ・ワーカー

大学卒業後、私が選んだのは楽天株式会社という会社への新卒入社の道でした。
学生時代にソーシャルセクターに関わる活動をしていたので、NPOへの就職ということも考えたのですが、まずは企業での就職を選びました。
なぜその選択をしたのか色々と理由はあるのですが、ソーシャルセクターに関わるのであれば自分なりの武器を身につける必要があるというのが大きな理由であり、当時私が武器として考えたのは「ビジネス」と「インターネット」でした。そんなことを考えながらリーマンショックの余波を食らった就活市場を漂っていた私がたどり着いたのが楽天という会社でした。
楽天では新規事業開発系の部門にて主に広告関連のサービスを担当していました。
そして、楽天に勤めていた6年間の間に、会社の外でも様々な活動を行いました。
  • NPO向け寄付サイトの立ち上げ
  • 児童福祉分野で活動するNPOでのプロボノスタッフ
  • IT/Web関連の中間支援プロボノNPOの立ち上げ 
などなど。
将来的にソーシャルセクターに関わることを考えていたのでそのお試し的な活動に様々に挑戦していました。
また、自分自身のスキル磨き用にWordPressでサイトを作ってみたり、ブログを書いてみたりといったこともいくつも取り組んでいました。このブログもそのうちの一つです。
こうしてシンプルに文字に書いてみるとすっきりとしたものですが、色々と悩みながら迷いながら本業を含めた一つ一つの活動に向き合っていたのが実際です。
楽天という会社が本業だったので、当然にフルタイム(残業も決して少なくはない)です。『LIFE SHIFT』でいうポートフォリオ・ワーカーというのはもう少し自由度の高いアレンジなのかもしれませんが、現状日本企業に勤めながら実践するポートフォリオ・ワーカーとしては「平日日中フルタイム&平日夜と土日でプロボノ」というのはもうしばらくは現実的で有効なあり方なのではないかと思います。副業を認めている会社も増えていますし、どんどんこの動きは加速していって欲しい。

社会人7年目〜(2016年5月〜):インディペンデント・プロデューサー

そうした悩みながら進む時期を経て、ついに昨年転職。30歳になる年でした。株式会社PubliCoという会社に昨年5月に入社し、現在も勤めています。 
NPOやソーシャルビジネス、自治会など公益的な活動をしている組織に対するコンサルティング支援やセミナー等を行っている会社です。
組織のビジョン・ミッション作りやファンドレイジング(資金調達)の支援といったテーマを扱う他、特に個人的には前職のスキルに関連してWebマーケティングやWebディレクションなどをテーマとした支援に取り組んでいます。
ここまでのストーリーだけ見るとなかなか順調に進んできて、きれいにオチがついているような感じもありますが、一人前のプロとしてソーシャルセクターで食べていくというのはなかなか簡単なことではないと感じながら、模索する日々が続いています。
『LIFE SHIFT』について改めて考えるという時間を取ってみて、いまこの時期を自分のインディペンデント・プロデューサーの時期であることを改めて認識し、より実験的なチャレンジをしてみようと最近の関心事を整理し直しているところです。
 

まとめ

以上、本記事では自分のこれまでの歩みを『LIFE SHIFT』のマルチステージに当てはめて振り返ってみました。
ここからはそんな自分なりにLIFE SHIFT的な歩みをしてきた自分が、同書を読んで感じたことや、それを元にさらに考えるためのヒントにした本を紹介していきます。
長くなったので続きは記事を分けます。
  • 「働くこと」について考える本
  • 「活力資産」を貯める生き方について考える本
  • LIFE SHIFT時代をマクロ視点から考える本

の3つに分けて更新する予定です。

 

【8/29更新】続きの記事を公開しました。

第2弾