※本記事は前職株式PubliCo時代のメディアPubliCoジャーナルに執筆した記事を移行したものです。(元記事の公開日:2016.10.28)
インターネット上の注目度合いを表す「検索」という行動について理解を深めたり、分析をすることはNPOの事業活動や組織のミッションを伝えていく上で有益な情報を得られる場合があります。本記事では実際にGoogleトレンドでキーワードの調査を行いながら活用事例をご紹介いたします。
Googleトレンドとは?
Googleトレンドはその名の通り、検索エンジンであるGoogleにおける検索の「トレンド」を調べることができるサービスです。特定の検索キーワードの相対的な検索量の推移を調べたり、キーワード同士の検索量の比較をすることができます。
このサービスを活用することで特定のキーワードに対する社会的な注目度合いの変化を調べることができるということであり、NPOの広報活動の文脈でいうなら社会課題に対する社会全体の認知度や注目度合いの変化に関する参考情報を得ることができるということです。
以下では具体的な検索キーワードを調べた事例を元に活用イメージを解説しますので、ぜひ自組織の活動に関連したキーワードで分析を行ってみてください。
「寄付」関連キーワードのトレンド調査例
「寄付」「募金」「クラウドファンディング」の3つのキーワードについて調べてみました。
寄付
こちらが「寄付」という検索ワードについての直近5年間のトレンドです。日本の寄付市場は近年徐々に拡大傾向にありますが、「寄付」というキーワードでの検索状況は伸びておらず、検索にはその動向は表れてはいません。
大きく伸びているのは今年の4月17日〜4月23日の週、熊本地震が発生した週です。大きな災害の発生時には関連した報道が増えることもあり、「寄付」の検索も増えるようです。あまり大きな伸びではありませんが、毎年3月11日を含む週も検索が増えています。
募金
「募金」というキーワードについても調べたところ、「寄付」とは違ったトレンドを表していました。
4月17日〜4月23日の週の熊本地震の際に大きく伸びていることは「寄付」と共通していますが、「募金」ではそれ以外にも大きな山がいくつもあります。 2014年までで山になっているのはいずれも8月の最終週でした。
そこで、「関連キーワード」を見てみると「24時間 募金」「24時間 テレビ」といったキーワードが見られることから、日本テレビの24時間テレビが大きく影響しているようだということが読み取れます。良い面として人びとの検索という能動的な行動にまで表れる非常に大きい影響を与えているということもできます。ただ、一方でうがった見方をするならばチャリティをテーマに24時間にわたって放送する番組をもってしてもその影響は放送日のみに留まっており、その後の継続的な行動にはつなげることは難しいと見ることもできます。寄付者を獲得していくためには継続的に施策を打っていく必要がありそうです。
寄付と募金の比較
続いて「寄付」と「募金」を比較してみたところ、以下のことが分かりました。
・通常時は「寄付」の方が検索数が多い
・熊本地震のときには「募金」の方が伸びている
一つの事例なので参考までですが、緊急支援の際には「寄付」よりも「募金」のキーワードの方が検索される可能性があるといえるかもしれません。
クラウドファンディング
続いてNPOの資金調達方法の一つとして浸透しつつある「クラウドファンディング」です。この5年で検索数が大きく伸びてきていることが分かります。 「クラウドファンディング」は必ずしもソーシャルセクターのみに関わるキーワードではありませんが、市場の盛り上がり関心の広がりを表していることは確かなようです。
社会課題のイシュー別のキーワード調査例
続いては少し視点を変えて特定のイシューに関するキーワードを調べてみましょう。
「子どもの貧困」
昨今ニュース等でも話題に上がることの多くなった「子どもの貧困」のトレンドの変化です。
ここでは期間を現時点で最も古いデータの「2004年1月1日」から今月までの期間としました。 約12年間の間に徐々に伸びてきており、国内の社会問題としての認識が広まってきているといえます。
「Uターン」「Iターン」
続いて過疎地域で人口の社会増のための施策としても取り組まれている「Uターン」「Iターン」というキーワードについて調べてみました。
「Uターン」が毎年特定の時期に伸びていることは確認できますが、「子どもの貧困」とは違い、どちらのワードも平均的な検索ボリュームは伸びていないようです。
(ちなみに「Uターン」で毎年伸びているのはお盆・年末年始・GWであり帰省ラッシュの「Uターン」の意味での検索の影響が表れているようでした)
続いて、「Uターン」に近い関心を持った人が検索しそうなキーワードとして「田舎暮らし」「移住」との比較を実施しました。
どちらのキーワードも大きく検索が増えているという状況にはありませんが、平均的な検索ボリュームでは「Uターン」よりも多く検索されていることが分かります。 つまり、「Uターン」というキーワードだけを使用して発信するよりも、「田舎暮らし」「移住」といった関連キーワードを使用する方が、関心を持っている人に情報を届けられる可能性が増えるということです。
NPOが取り組んでいる社会課題の多くはニッチな問題であり団体内で当たり前に使用しているキーワードが実はターゲット層にとっては連想しにくい言葉であることもあります。
上記の例のように自分たちが普段使っているキーワードではなく、自団体のターゲット層が検索しそうなキーワードを洗い出して比較してみると、意外な情報を得られることもありますのでオススメです。
いかがでしたでしょうか。
皆さんもぜひ、自団体の支援者や受益者が関心を持ちそうなキーワードのトレンドを調べてみてください。