NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

NPOなど公益組織支援を行うコンサルタントのブログです。ファンドレイジング、NPOマーケティングなどのテーマについて発信しています。

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メールマガジン創刊で広報・マーケティング担当者が行った全タスクまとめ

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メールマガジン創刊で広報・マーケティング担当者が行った全タスクまとめ
こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本日は「メールマガジン創刊で広報・マーケティング担当者が行った全タスクまとめ」と題し、私自身がメールマガジンを立ち上げた経験を元に、メールマガジンの始め方をいちから解説します。メールマガジンはWebマーケティングの施策の中では比較的長い歴史を持つものです。 皆さんの中にも普段から気に入ったサービスやお店、あるいはNPOなどのメールマガジンを日常的に購読しているという方も多いのではないかと思います。普段から読者として見慣れているメールマガジンですが、いざ創刊しようと思うと、簡単なようで色々やることや考えるべきことがあります。 そこで本記事ではメールマガジン創刊までに私自身や組織内で行ったタスクをまとめて公開します。これからメールマガジンの創刊を検討されている方はぜひ参考にしていただければと思いますし、すでにメールマガジンを運用されている団体の担当者の方も、日々の運用の中で見直すポイントがないか確認に使っていただければ幸いです。 

  

本記事の対象者

本記事では主に以下のような方を読者として想定しています。

  • 自組織でメールマガジンの立ち上げを行いたいと考えている方
  • 自組織のメールマガジン運用体制について見直しを検討している方
  • SNSやオウンドメディアなど新たなマーケティングチャネルの開設を検討or担当している方

組織内でマーケティング系の業務に関わっており、メルマガの活用を検討されている方に参考になればと考えています。本ブログは普段NPOの支援を行っている私がNPOの運営改善につながることを目的に書いているものなので、基本的にはNPOの担当者向けに書いていきますが、メールマガジンという施策自体についてはNPOに限らず使えるものですので、営利組織のマーケティング担当者にも参考にしていただけるかと思います。(実際私のメールマーケティングの知識や経験は営利組織で培ったものも多いですし、営利組織対象のメールマーケティング講師等の経験もあります)

NPOにとってのメールマガジンの4つのメリット

 NPOにとってのメールの4つのメリット

NPOにとってメールマガジンは安価で誰でも始められる施策でありながら、情報到達力と、行動促進力の高い強力なマーケティングツールです。 

(1)無料もしくは安価で実施することができる(低コスト)

メールマガジンの配信ツールには一定の配信量(通数)までは無料で使える枠が用意されていることも多く、高機能な配信ツールを無料で使うこともできます。配信対象者の獲得、原稿作成、配信等の一連の作業について運用の手間はかかりますが、いずれも無料で実施することができるため、予算が取れない場合にも検討しやすいマーケティング手法です。

(2)高い専門性がなくとも実施することができる(手軽さ)

メールマガジン配信に関しては記事のライティング、編集に関するスキル、デザイン、マーケティング関連の知見など様々なスキルを活用することができますが、必ずしもリッチな表現のHTMLメールではなくテキストメールでも十分に効果を出すことは可能です。そのため特に高い専門性がなくとも、最低限人に読ませることのできる文章を書くことができれば実施できる施策です。また、メール配信ツールには多くの機能が付いていますので、HTMLなどのプログラミングが分からないという方でも比較的容易に配信までの作業を行うことができる環境が整っています。

(3)メールマガジンはプッシュ型のメディア(情報到達力)

メールマガジンの特徴は「自分で選んだ情報を、読者の元に送り届けることができる」ということです。自団体が選んだ伝えたい情報を発信することのできるオウンドメディアはNPOのマーケティングで非常によく使われますが、HPやブログでは訪問してくれたユーザにしか情報を届けることができません。また、FacebookやTwitter等のソーシャルメディアは各プラットフォームの表示ルール(アルゴリズム)上、いいねやフォローをしてくれている人全員に届くわけではありません。一方でメールマガジンはメールを開封してくれない可能性はあるものの、少なくとも情報を届けるというところまでは確実に行うことができるという強みを持っています。 

(4)アクションにつながりやすい(行動促進力)

情報到達力行動促進力

そもそもメルマガはマーケティング施策として古いのではないか?と考える方もいらっしゃるかと思いますが、メールマガジンを始めとするメールマーケティング施策は今でも有効です。株式会社ジャストシステムの調査データでは、インターネットショッピングサイト(ECサイト)からのお知らせをどのような方法で受け取るかというアンケートで「メルマガ」と答える人は「SNS」などよりも未だに多いです。また、「メルマガ」で受け取っている人のうち、「メルマガが購入のきっかけになる」と答えた人も44.3%※います。同じ調査では"プッシュ通知"や"LINE"の方が高い割合となっていましたが、NPOが手軽に利用できるマーケティングツールとしてはメールマガジンは現在でも強力なツールといえます。実際ファンドレイジングで大きな実績を持っているNPOはメールマガジンを中心としたメールマーケティングを丁寧に続けている組織が多いです。

※…株式会ジャストシステム『ECプロモーション別の消費行動調査』より 

 

創刊したメールマガジンの概要

私はこれまでにいくつもの組織でメールマガジンの立ち上げを行ってきましたが、本記事で創刊経験をご紹介するのは私がNPOコンサルタントとしてのキャリアを歩み始めるきっかけとなった株式会社PubliCoで配信していたメールマガジン「PubliCoニュースレター」に関する話です。

PubliCoでは2017年1月にメールマガジン(PubliCoニュースレター)を創刊しました。

まずはPubliCoが創刊したメールマガジンの概要です。

【名称】PubliCoニュースレター

【目的】

  1. PubliCoの最新情報の告知・公益組織のマネジメントに関する情報の周知
  2. 既存クライアントとの関係維持(日常的な活動報告だけでなく、スタッフの想いや個性を伝える場とする)
  3. コンサルティングやセミナーの依頼、人材獲得

【配信対象者】

  1. 潜在顧客
  2. 既存顧客、自社スクール・セミナー参加者
  3. HPからのニュースレター登録者

【配信ツール】Benchmark Email

【配信頻度】月1回

【準備期間】約1ヶ月(名刺のデータ化3週間、その他準備1週間 ※創業当時から創刊を想定して準備されていたものは除外)

メールマガジン創刊までに行った全タスクまとめ

ここからはタスクを書き出していきます。

意思決定系

  • 創刊日
  • 人員
  • 予算

インフラ系

  • 配信ツール選定
  • HPへの登録フォーム設置(必要に応じてフォームだけではなくメルマガの魅力などを記載した「メルマガ紹介ページ」と合わせて検討)
  • 配信対象リスト作成
  • 配信対象者決定
  • 名刺のデータ化(名刺を読者とするかどうか、は慎重に判断しましょう。PubliCoでは一定の目的の元で意思決定を行っておりました。他の組織でコンサルをする際にはオススメしない場合も少なくないです)
  • 登録フォーム経由の登録者のインポート
  • 創刊号以降の運用ルール

配信方針系

  • 目的の確認
  •  誰に送るか?(配信対象者)
  •  何を伝え、何をして欲しいか?(KGI。ビジネス的には「何のために配信するか?」ですが、読者起点での言語化をするのがオススメです)
  • KPIの設定(開封率やクリック率など)
  •  目的達成をどのような指標で計測するか(クリックの先の行動、つまりコンバージョンは何か)
  • 計測方法
  •  配信したメール自体の数値管理(配信ツールの機能で十分なのか、別途何かの準備を行う必要があるか)
  •  (HPへの誘導を行う場合)HPのKPI管理との兼ね合い(「コンバージョン指標の計測」や、「メールとSNSなど他の施策の比較」は配信ツールだけではできないことに注意)
  • マーケティング方法(新規読者の集客方法は何か)
  • メールマガジン名称
  • テンプレート作成
  •  件名
  •  配信形式(テキストメール or HTMLメール、スマートフォン対応など)
  •  本文の構成&レイアウト(構成の前提としてどのようなテーマのコンテンツを作成するか。ブログなどから流用か新規作成かなども検討)
  •  執筆担当者
  •  トーン&マナー(飾り線や文体のテイスト、用語の使用方法、表記ゆれ防止のためのルール決め)
  •  送信元情報&購読停止方法の明記(送信者の情報を明記すること及び購読停止方法の明記が法律で定められています)
  • 発行頻度&時期
  • バックナンバーの管理(ユーザーに見せる場合どこに設置するか)
  • 問い合わせ等の反響に対する方針
  • 返信の有無
  • 誰が返信するか
  • 配信停止希望や配信エラーアドレスへの対応
  • 創刊までの手順&役割分担
  • 運用フローの決定
  • レポート、定期MTGなど進捗確認の方法

作成したもの

  • 原稿
  • コンテンツカレンダー(いつの配信でどのようなコンテンツを作成するかを事業上の出来事との兼ね合いで検討・管理するためのカレンダー)
  • KPI管理表
  • 配信作業チェックリスト、マニュアル

配信設定

  • リストのインポート
  • 配信ツール上での原稿作成
  • テストメール配信&Wチェック
  • 配信承認作業

配信後

  • 配信完了確認(配信担当者は自分のアドレス or 確認用アドレスを使って配信完了確認を行うと良い)
  • 反響確認&対応(問い合わせ、配信停止希望などの反応に対して対応を行う)
  • 配信レポート作成
  • 振り返りMTG

 

メールマガジンを作るときに特に意識すべき3つのポイント

多くのタスクを列挙しましたが、ただただ上から順番にこなすのは大変ですので、特に重要なポイントを3つにまとめました。 

(1)目的の確認は必須

メールマガジンに限らずどんな施策にも言えることですが、施策を実施する目的を明確にしておくことは非常に重要です。特にメールマガジンは多くの方にとって馴染み深くイメージがしやすいがために明確な目的を定めないままになんとなく原稿を作成して配信してしまうということが起こってしまいがちです。また、メールマガジンは配信対象も、原稿も自分たち自身でコントロールすることができるため、様々な使い方ができます。「受益者に活動情報を届けるため」「自分たちが取り組む社会課題についての啓蒙を行うため」「寄付やボランティアなどの支援を募るため」など、いずれの目的もありえますが、自団体が何を目的に実施するのかは明確にして配信するようにしましょう。

(2)運用の効率化を意識する

メールマガジンは低コストで実施することのできるマーケティング手法ですが、運用には手間がかかります。本記事にはメールマガジン配信を行う上で考えるべきことを記載しましたが、配信毎にすべてのことを都度考えていくのは非常に大変ですので、なるべくルール化や仕組み化を行い効率的な運用を行っていくことが必要です。例えば原稿作成については、ブログ等で発信した情報を流用することで新規作成の手間を省くことができます。配信手順についても毎回共通する作業が多いためマニュアルを作成し、ボランティアやインターンの力を活用していくということも考えられます。 

(3)PDCAを回す

メールマガジンは配信して終わりではありません。配信後のレポート確認と振り返りまで完了して初めて一つの配信が完結します。メール配信ツールには開封数やクリック数を確認することのできる機能の他、A/Bテストを行う機能がついているものも多くありますので、数値を記録し改善していく工夫を続けていきましょう。また、数値の結果だけでなく、運用手順についても毎回振り返りを行いマーケティング体制を見直していくことも重要です。

 

以上、本記事ではメールマガジンを創刊するために必要なタスクをまとめてみました。いかがでしたでしょうか。皆さまの団体の日々のメールマガジンを使った情報発信に活かしていただければ幸いです。

メールマガジンの立ち上げや改善についてお困りのことなどがあればお気軽にご相談ください。