こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事では仲間内の集金アプリ「Tilt」についてご紹介します。
ソーシャルペイメントサービス「Tilt」
年々盛り上がりを見せるクラウドファンディング市場ですが、海外では"お金を募る"やり方として新たな形が登場してきています。
mashable.com「Tilt」というサービス。アメリカから始まったサービスで、現在欧米8カ国で展開中のようです。今回オーストラリアでサービスインしたということで記事になっていました。
※2019年4月追記
Tiltというサービスはその後2017年にairbnbに買収されサービスを終了しました。
Tiltとはどんなサービスか
クラウドファンディングは製品の開発やサービスその他の企画など何かしら挑戦したいプロジェクトについて不特定多数の人からの資金提供を募るもので、基本的にそのプロジェクトは社会に対して何かしら新しい価値を提供することを目的としています。そして出資者はその提供される価値(やそのプロジェクトに付随するリターン)に共感して資金を提供します。
これに対して「Tilt」に掲載されるプロジェクトはもっと個人的なものです。
- Hoanのサプライズプレゼント代を集めたい!
- Brielleの卒業祝いにMacbookproを買ってあげよう!
- 一緒に船を借りて遊びませんか?
などなど。
仲間内のちょっとした企画がたくさん掲載されています。
中には「近所のおもちゃ屋さんを救いたい」なんていう一般のクラウドファンディングのプロジェクトに近いものもあったりしますが、いずれにせよ自分の知り合いやその周りの顔の見える範囲を意識した小さなプロジェクトのためのプラットフォームとなっています。
サービス提供側も小さなコミュニティ向け、という点はとても意識しているようで、
- メインターゲットは学生(ミレニアル世代)
- 仲間内の集金に関する利用は無料
- 学生向けの販売(チケットその他の商品)を行いたい事業者からは手数料
という形で、仲間内での気軽な利用のハードルを下げています。
インターネットサービスには「オープン→クローズド」の流れがある
このサービスが面白いなと思うのはインターネットサービス流行の大きな流れに沿っているなと感じる点。
個人的にインターネットで流行るサービスはまずオープン形式で広がり、その後クローズドにシフトしていくと考えています。
例えばSNSでは、mixiやFacebookなどのオープンなプラットフォームが登場し広がります。この普及の段階ではオープンであることが不可欠ですね。
で、一定以上にまで普及した後はクローズド化の流れがやってきます。例えばLINEのグループや家族・親しい友人のみに限定したクローズドなSNSです。
インターネットメディアもブログなど不特定多数へのオープンな公開の流れの中から、有料サロンなどクローズドなコミュニティを作成して公開先を限定する、という方法が登場しています。
必ずしも各サービスカテゴリ全体の流れがオープン→クローズドに移っていく訳ではないですが、一部の濃い部分にはこの手の動きが出てくるんじゃないかなと思いながら色んなサービスを見ています。
今回のTiltはまさにオープンなクラウドファンディングに対するクローズド化の動きですね。
さすがに身近な範囲のコミュニティを大切にしているだけあって、現状日本からはまだサービス利用ができません。日本への進出が楽しみですし、何かしら近いサービスが出てくると面白いなと思います。
日本における「仲間内の集金」の動き(2019年4月追記)
その後日本でもTiltに近い発想を持つサービスが登場しました。
polca(ポルカ)
まずご紹介するのはクラウドファンディングのCAMPFIREが新サービスとしてリリースしたpolca(ポルカ)です。
polcaは「フレンドファンディングアプリ」を標榜し、小さく個人的なプロジェクトを呼びかけるためのサービスで、本記事で紹介しているTiltと同様の発想です。
一般的なクラウドファンディングでは事前にサービス側の審査がありますが、polcaは無審査で気軽に始めることができます。ただし上限の目標金額が10万円までとされていることやスマートフォンに特化したサービス設計をしていることなど個人利用という側面をかなり強調した設計となっています。
NPO関係者も多く利用しており、polcaを通して初めてクラウドファンディングや寄付集めに挑戦したという方もかなり見かけますので、サービスの普及を図っていく際に「ハードルを下げる」ということがいかに重要かということを教えてくれます。
(追記:2020年10月1日でPolcaもサービス終了しました)
peer to peerファンドレイジング(P2Pファンドレイジング)
もう一つご紹介するのは特定のサービスではなく考え方ですが、peer to peerファンドレイジングと呼ばれるものです。NPOなど公益的な活動を行う団体が寄付者を集めるという一般的な寄付集めに対して、peer to peerファンドレイジングというのは「自分が応援している団体のために自分の身の回りの友人や知人に寄付を募る」という形で個人が個人に呼びかける寄付集めの形です。
欧米のデジタルファンドレイジングにおいてはかなりの割合がpeer to peer経由の寄付に移行しつつあると言われるほどに伸びてきており、日本においても誕生日をきっかけに寄付を募るバースデードネーションなどが増えてきています。
peer to peerファンドレイジングについては以下の記事に詳しく書きましたので良ければご覧ください。