NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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2015年読んで面白かった本15+1冊

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2015年読んで面白かった本15+1冊

こんにちは。読書好きのNPOコンサルタント堤大介( @22minda )です。本記事では私が2015年に読んだ本の中から特にオススメの本をご紹介します。

本記事の概要

気づけば年の瀬です。書評書きたい本も溜まっているのですが、書こう書こうと思っているうちに今年が終わってしまいそうですのでまとめだけでも。書評は全く書けてませんでしたが本はしっかり読んでました。
今年は100冊読破を目標に掲げていたのですが、達成率は8割程度。あまり良くないのですが、全体的に読み応えのある本をこなしていたので満足感はわりとあります。
そんな今年読んだ本たちの中から特に面白かった本をご紹介します。今年もジャンルはバラバラ。紹介は基本的に読んだ順です。
昨年に引き続き15冊選ぼうと思ったのですが、どうしても削ることができなかったので15+1冊の合計16冊です。(上下巻などは一作で一冊とカウントしてますので正確には15+1作品ですね) 
 

昨年のまとめ記事 

www.daisuketsutsumi.com

 

小説・エッセイ以外の本

大きく"小説・エッセイ"と"それ以外”に分けてます。まずは"それ以外"の方から。

 

国家はなぜ衰退するのか(上・下)

年初に読んだ本。中身はタイトルの通り。歴史上のさまざまな国家を取り上げ、繁栄と衰退について分析します。
視点として非常に強く扱われるのは「制度」の重要性。特に「多様性の寛容」「破壊的イノベーション」の視点は面白く、日本も欧米諸国もそれぞれの国なりに閉鎖感が漂い始めている中で、改めて歴史的な視点から現在の社会状況を考えると面白さよりも恐ろしさを感じてしまいます。
また、序章で同じく文明の繁栄要因について扱った研究としてジャレド・ダイアモンドの『文庫 銃・病原菌・鉄』に強く批判を行っているのも興味深いのですが、読んだ感想としてはどちらが正しいというよりも互いに保管しあえる理論のように感じました。
 
 

エピゲノムと生命

DNA研究で面白いなと思っていたエピジェネティクスの勉強用に購入しました。DNAは「装飾」が行われることで、同じDNA配列でも多様な表現型が発生しうる、というエピゲノムを研究する分野。福祉分野に携わる人間として面白いなと感じているのは、エピゲノムの影響が世代間を超えるというもの。例えば貧困対策など、親に対して行った福祉的措置が子世代にも好影響を及ぼす可能性がある、これ今後研究が進んでくると非常に面白いので、福祉や教育に携わる人たちは今からチェックしておくべき分野なのではないかと勝手に思っております。

 

知の英断

前作の『知の逆転』に続けて読みました。世界のさまざまな分野の第一人者に対してのインタビュー集で、分野違いのスペシャリストたちにおなじ質問(例えば「教育について」や「おすすめの本」など)をしてその考えの違いを楽しめるシリーズなのですが、2作目の本作ではネルソン・マンデラが集めた世界有数の指導者たち「エルダーズ」のメンバーへのインタビューとなっています。登場人物はジミー・カーター、フェルナンド・カルドーゾ、グロ・ハーレム・ブルントラント、メアリー・ロビンソン&マルッティ・アハティサーリ、リチャード・ブランソン。ネルソン・マンデラの元に集った人たちということで、大統領や世界的な外交官など政治分野の人が多いのですが、みんなかっこいい。日本でいう「政治家」とはどうしてこうもイメージが違うのだろう。語る言葉の力強さと、そこから感じるのは「公平」とか「真摯」など。世界的に影響を及ぼすような交渉の場面でそうした清冽さを貫くことの大事さを語れるのは本当にすごいです。
 

フェルマーの最終定理

数学読み物としてだいぶ有名な本ので前々から気になっていたのですが、やっと読みました、サイモン・シン。読んでよかった。期待を裏切らない楽しさですね。私はもっぱら文系で、しかもあまり研究がうまくできない質だったので、研究を生業にしている人たちには尊敬というか憧れがあるのですが、さまざまな分野の基礎になる数学の研究者というのは数ある研究分野の中でも頭の良さが飛び抜けているように感じます。数字から世界の成り立ちを考えられるってきっと楽しいだろうなぁ。数学を勉強したくなります。

 

武装解除-紛争屋が見た世界

「平和は良いもの」誰でもカンタンに口にすることのできるこの綺麗な言葉の裏にある「平和を作る」という仕事の凄まじさ。PKOなどで実際に紛争地域の武装解除のオペレーションを行ってきた伊勢崎さんが語る平和を目指す道。なんとなく「国際協力したい」と言いがちな高校生や大学生あたりにぜひ読んで欲しい。
 
 

学力の経済学

今年教育分野の本で割りと売れた本ですね。面白かった。「親の年収が高いほど東大進学率が高まる」といったような統計結果が紹介されることも増えましたが、そのような教育にまつわるあれこれをきちんとデータを元に分析し、経済学定期な視点から捉えようという本です。子ども手当の是非や教員の質に関する議論など、各トピックの細かいところでは、行政的なオペレーションまで含めると、分析結果だけがすべてではないのではと感じるところもあったのですが、全般的には非常に賛同できる本です。”データを元に判断する”これはとても大切なことのはずなのに、教育をはじめ日本の各行政・政治の現場であるいみ忌避されてしまっている悲しい伝統がありますが、こういう本が多くの人に読まれ、その大切さが少しずつでも広がってきているのは良いことだよなと感じてます。

ユダヤ人の歴史

昨年世界史の勉強をしていたのですが、その流れで今年は宗教について何冊かの本を読みました。その中の一冊。ユダヤ人について、私たち日本人はほとんど何も知りません。ユダヤ教も、ユダヤ人の歴史も、なぜキリスト教からそれほどまでに嫌われているのか、など。そうしたユダヤ人に関する通史を一気に知ることができる本として非常に貴重な本です。また、社会の成り立ちや文化など人間のコミュニティのエッセンスについて考えるためにも良い本です。ユダヤ人は歴史的に、自分たちの国を持たない時代が長く、多くの国や地域に分断された少数民族として歴史をつくってきました。分断された状態でなぜ歴史を紡ぐことができたのか?民族としてのアイデンティティはどこから出てくるものなのか、など「社会とは何か」を考える上での示唆をくれるのもユダヤ社会のおもしろさというかすごさです。大学の社会学系の授業でディアスポラ社会について取り上げられることが多いのも納得というもの。いまさらそこに納得してどうするんだという感じですが、これに限らず背景を知ることで初めて楽しく感じたり、重要性を知ることができるものというのも多いものですよね。

ダイアローグスマート

nanapi創業のけんすうさんがどこかでオススメしていた本。コミュニケーション能力の大切さ、というのはもはや言われすぎて食あたり気味のトピックですし、関連の本も多すぎて困ってしまうのですが、やはり良い本はいくつもあります。この本もぜひ読むべき一冊。ビジネス上やプライベート上で必ず直面する難しい局面にどのような対話をするべきなのか。自分のこれまでのコミュニケーションを振り返り、改め、実践していくために何度も読み返したい本になりました。

城を攻める 城を守る

今年の後半、本好きの人に出会うたびに薦めていた今年読んだ新書では個人的に最大のヒットだったのがこの本。お城ブームは何年も前から来ているし、お城を好きな人おあちこちにいますが、歴史小説家でもある著者はそんなにわかお城好きに一石を投じます。「城とは見るものではない。戦うためのものである」と。どうしても観光名所としては天守閣が残っている大きな城ばかりが注目されがちですが、城の構造や縄張りを丁寧に研究し、そこで行われた攻城戦について思いを馳せる。どのような指揮官が難城をどのように攻めたのかとか、籠城戦に強い城の仕組みや戦略上の必須ポイントなど、日本全国の名城とそこで繰り広げられた戦を取り上げながら解説してくれます。超面白い。戦国時代の歴史小説と一緒に読むとなお面白いです。私は司馬遼太郎の『新史太閤記』と一緒に読んだのですが、秀吉と勝家が争った賤ヶ岳の戦いなんかは面白さが倍増しました。また、著者は歴史小説家ですが、エッセイ的な取り組みではなく、あくまで「研究」として取り組み、歴史の解釈にもなるべく独自の視点を盛り込んでいるというのも面白いところ。今川家と織田家の関係における今川方の狙いについての解釈(今川の狙いは上京ではなく、織田家の経済圏奪取が目的であった)なんかはとても新鮮で楽しめました。

社会的インパクトとは何か

情報感度の高いNPOやその他の分野の関係者の間ではかなりホットなトピックになっている社会的インパクト。「自分たちの活動は実際にどれだけ社会を変えることに寄与しているのだろうか?」この悩みを感じたことがある人は少なくは無いのではないかと思います。それを示すことの大切さがやっと求められる時代になってきました。とくにNPO関係のみなさんは早めに読みましょう。本の内容としてはけっこう難しいです。なんというか総論は理解しやすいのですが、各論に入った途端にいきなり難しくなる。理解することが、というより現場までの落し込みとかオペレーションを考えると途方もなく感じるというか。NPO関係者はもちろんのこと、行政や企業に関わる人たちも、社会に関わる大人として常識的な視点になるまでどれくらいかかるか分かりませんが、少なくとも来年は要注目の動きになることは確か。

こんな夜更けにバナナかよ

この本がプラスの1冊。この本は再読なので入れなくても良かったのですが、いろいろ考えることも多かったのでどうしても外せませんでした。筋ジストロフィーという難病を患い人工呼吸器をつけながら、ボランティアを集めての自立生活を送る鹿野さんとボランティアなど彼の周りに集まる人たちを取材したルポルタージュ。ボランティアや福祉関係のルポでは自分が知る限り最高の一冊です。この本については(おそらく年明けに)別に書評を書きたいと思います。
 

小説

続いて小説から5作品をオススメします。

華麗なる一族

山崎豊子さん、初めて読みました。独特の読み味ですね。日本の巨大組織を描く作家さんとして有名ですが、なんというんですかね、人間的な要素が薄いというか。もちろん小説ですし登場人物のキャラはものすごく立っているのですが、内面の動きなどはどこか一歩引いた視点から描かれているように感じます。あくまで権力の方が主でそれが人間にどう働きかけているか、というか。他の作品も読んでみたいな―と思いつつ、分厚いものが多いので読むタイミングをどうしようか悩み中です。

カラマーゾフの兄弟

学生時代に『罪と罰』を読んで打ちのめされて以来のドストエフスキー。いつかは再戦したいと思っていたのですが、やっと手に取ることができました。先にも少し書きましたが、今年は宗教について少し勉強していたので、キリスト教についてもざっとやってから読んだのですが、これが良かった。やはりベースにキリスト教があるので、それについて知ってから読むと理解できる範囲が一気に広がります。それにしてもこの小説はすごい。宗教、家族、恋愛、社会など色んなテーマで読むことができ、そのすべてが高レベル。なぜ、人間のことをこれほどまでに描くことができるんでしょう。個人的にはこれまで読んだ小説の中で最強の一冊になりました。また、名作と言われる作品に多いですが、この作品も読むときによって感じ方が変わったり新たな発見がきっとあると思います。ドストエフスキーの後期作品にはそんな作品が多そうな気がしてますので、早めに他の作品も読んでおきたいですね。次は『白痴』あたりかなー。

153回直木賞受賞作。同タイミングの芥川賞受賞の『火花』と『スクラップ・アンド・ビルド』も面白かったですし、この2冊の方が話題を集めがちでしたが、この作品もかなり面白かった。舞台は1970年代の台北。外省人(中国本土から渡ってきた人たち)3世である主人公の青春小説なのですが、青春小説としても単純に面白いし、この時代の台湾の様子を描いた小説としても優秀。

吉田修一の作品。流と同じくこちらも台湾を舞台にした小説です。2000年代の台湾で、台湾に日本の新幹線を導入する事業に関わった人たちの群像劇。さすが吉田修一という作品なのですが、流と続けて読むと同じく舞台となっている台湾の様子も楽しめます。

鏡のなかの鏡

ミヒャエル・エンデの作品。『モモ』や『はてしない物語』と並んで有名な代表作らしいのですが、前の2作が児童文学であるのに対してこの作品は児童向けというわけではありません。30個の連絡短編集なのですが、不思議な小説です。シュールレアリスムの小説なので文字通り読んでるだけじゃ意味の分からない部分とかときには矛盾したところもあるんだけど、その一方で非常に示唆的に感じる部分も多い。この「示唆的に感じた」という感覚を自分以外の人も感じるのかどうか。他の人はこの小説を読んでどう感じるのかな―と気になる小説でした。読んだことのある人いたら、感想教えて下さい。

 

 

 
ということで以上16作品でした。
今年もたくさん楽しみました。
 
来年の良い本にたくさん出会えますように。