こんにちは。読書好きのNPOコンサルタント堤大介( @22minda )です。本記事では私が2015年に読んだ本の中から特にオススメの本をご紹介します。
本記事の概要
昨年のまとめ記事
小説・エッセイ以外の本
大きく"小説・エッセイ"と"それ以外”に分けてます。まずは"それ以外"の方から。
国家はなぜ衰退するのか(上・下)
エピゲノムと生命
DNA研究で面白いなと思っていたエピジェネティクスの勉強用に購入しました。DNAは「装飾」が行われることで、同じDNA配列でも多様な表現型が発生しうる、というエピゲノムを研究する分野。福祉分野に携わる人間として面白いなと感じているのは、エピゲノムの影響が世代間を超えるというもの。例えば貧困対策など、親に対して行った福祉的措置が子世代にも好影響を及ぼす可能性がある、これ今後研究が進んでくると非常に面白いので、福祉や教育に携わる人たちは今からチェックしておくべき分野なのではないかと勝手に思っております。
知の英断
フェルマーの最終定理
数学読み物としてだいぶ有名な本ので前々から気になっていたのですが、やっと読みました、サイモン・シン。読んでよかった。期待を裏切らない楽しさですね。私はもっぱら文系で、しかもあまり研究がうまくできない質だったので、研究を生業にしている人たちには尊敬というか憧れがあるのですが、さまざまな分野の基礎になる数学の研究者というのは数ある研究分野の中でも頭の良さが飛び抜けているように感じます。数字から世界の成り立ちを考えられるってきっと楽しいだろうなぁ。数学を勉強したくなります。
武装解除-紛争屋が見た世界
学力の経済学
今年教育分野の本で割りと売れた本ですね。面白かった。「親の年収が高いほど東大進学率が高まる」といったような統計結果が紹介されることも増えましたが、そのような教育にまつわるあれこれをきちんとデータを元に分析し、経済学定期な視点から捉えようという本です。子ども手当の是非や教員の質に関する議論など、各トピックの細かいところでは、行政的なオペレーションまで含めると、分析結果だけがすべてではないのではと感じるところもあったのですが、全般的には非常に賛同できる本です。”データを元に判断する”これはとても大切なことのはずなのに、教育をはじめ日本の各行政・政治の現場であるいみ忌避されてしまっている悲しい伝統がありますが、こういう本が多くの人に読まれ、その大切さが少しずつでも広がってきているのは良いことだよなと感じてます。
ユダヤ人の歴史
ダイアローグスマート
城を攻める 城を守る
今年の後半、本好きの人に出会うたびに薦めていた今年読んだ新書では個人的に最大のヒットだったのがこの本。お城ブームは何年も前から来ているし、お城を好きな人おあちこちにいますが、歴史小説家でもある著者はそんなにわかお城好きに一石を投じます。「城とは見るものではない。戦うためのものである」と。どうしても観光名所としては天守閣が残っている大きな城ばかりが注目されがちですが、城の構造や縄張りを丁寧に研究し、そこで行われた攻城戦について思いを馳せる。どのような指揮官が難城をどのように攻めたのかとか、籠城戦に強い城の仕組みや戦略上の必須ポイントなど、日本全国の名城とそこで繰り広げられた戦を取り上げながら解説してくれます。超面白い。戦国時代の歴史小説と一緒に読むとなお面白いです。私は司馬遼太郎の『新史太閤記』と一緒に読んだのですが、秀吉と勝家が争った賤ヶ岳の戦いなんかは面白さが倍増しました。また、著者は歴史小説家ですが、エッセイ的な取り組みではなく、あくまで「研究」として取り組み、歴史の解釈にもなるべく独自の視点を盛り込んでいるというのも面白いところ。今川家と織田家の関係における今川方の狙いについての解釈(今川の狙いは上京ではなく、織田家の経済圏奪取が目的であった)なんかはとても新鮮で楽しめました。
社会的インパクトとは何か
情報感度の高いNPOやその他の分野の関係者の間ではかなりホットなトピックになっている社会的インパクト。「自分たちの活動は実際にどれだけ社会を変えることに寄与しているのだろうか?」この悩みを感じたことがある人は少なくは無いのではないかと思います。それを示すことの大切さがやっと求められる時代になってきました。とくにNPO関係のみなさんは早めに読みましょう。本の内容としてはけっこう難しいです。なんというか総論は理解しやすいのですが、各論に入った途端にいきなり難しくなる。理解することが、というより現場までの落し込みとかオペレーションを考えると途方もなく感じるというか。NPO関係者はもちろんのこと、行政や企業に関わる人たちも、社会に関わる大人として常識的な視点になるまでどれくらいかかるか分かりませんが、少なくとも来年は要注目の動きになることは確か。
こんな夜更けにバナナかよ
小説
華麗なる一族
カラマーゾフの兄弟
学生時代に『罪と罰』を読んで打ちのめされて以来のドストエフスキー。いつかは再戦したいと思っていたのですが、やっと手に取ることができました。先にも少し書きましたが、今年は宗教について少し勉強していたので、キリスト教についてもざっとやってから読んだのですが、これが良かった。やはりベースにキリスト教があるので、それについて知ってから読むと理解できる範囲が一気に広がります。それにしてもこの小説はすごい。宗教、家族、恋愛、社会など色んなテーマで読むことができ、そのすべてが高レベル。なぜ、人間のことをこれほどまでに描くことができるんでしょう。個人的にはこれまで読んだ小説の中で最強の一冊になりました。また、名作と言われる作品に多いですが、この作品も読むときによって感じ方が変わったり新たな発見がきっとあると思います。ドストエフスキーの後期作品にはそんな作品が多そうな気がしてますので、早めに他の作品も読んでおきたいですね。次は『白痴』あたりかなー。
流
153回直木賞受賞作。同タイミングの芥川賞受賞の『火花』と『スクラップ・アンド・ビルド』も面白かったですし、この2冊の方が話題を集めがちでしたが、この作品もかなり面白かった。舞台は1970年代の台北。外省人(中国本土から渡ってきた人たち)3世である主人公の青春小説なのですが、青春小説としても単純に面白いし、この時代の台湾の様子を描いた小説としても優秀。
路
吉田修一の作品。流と同じくこちらも台湾を舞台にした小説です。2000年代の台湾で、台湾に日本の新幹線を導入する事業に関わった人たちの群像劇。さすが吉田修一という作品なのですが、流と続けて読むと同じく舞台となっている台湾の様子も楽しめます。
鏡のなかの鏡
ミヒャエル・エンデの作品。『モモ』や『はてしない物語』と並んで有名な代表作らしいのですが、前の2作が児童文学であるのに対してこの作品は児童向けというわけではありません。30個の連絡短編集なのですが、不思議な小説です。シュールレアリスムの小説なので文字通り読んでるだけじゃ意味の分からない部分とかときには矛盾したところもあるんだけど、その一方で非常に示唆的に感じる部分も多い。この「示唆的に感じた」という感覚を自分以外の人も感じるのかどうか。他の人はこの小説を読んでどう感じるのかな―と気になる小説でした。読んだことのある人いたら、感想教えて下さい。
ということで以上16作品でした。
今年もたくさん楽しみました。
来年の良い本にたくさん出会えますように。