NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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地球環境基金「若手PL研修」にて講師を務めました

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若手PL研修の様子

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事は2021年7月8日、9日に登壇した研修の様子をお伝えする開催報告です。研修自体の様子にも触れていますが、研修内容や構成をどのような狙いで検討していったのか、という点も解説していますので、研修の組み立てなどに関心のある方もお読みいただけると良いかと思います。

 

 

 

地球環境基金「若手PL研修」

今回講師を務めさせていただいたのは、環境系の助成財団である地球環境基金(環境省所管の独立行政法人環境再生保全機構により運用される環境基金の一つ)さんのプログラムである「若手PL研修」です。

若手PL研修とは、全国の環境系NPO、NGOの若手PL(プロジェクトリーダー)の育成を目的として、3年間という長期に渡り助成&育成を行う研修プログラムです。年間3回の合同研修において、PLとして必要な素養を身につけるためのさまざまな研修が行われ、3年間に渡ってフォローが続きます。また、この研修プログラムは助成プログラムとセットになっており、各団体は自団体における事業に対しての助成も同時に受けています。各団体の若手PLはこの助成事業のプロジェクトリーダーという位置づけであり、単に座学の研修を受けるだけではなく、学んだことを助成事業に活かし、助成事業における課題を研修内容や他の研修生との対話による学びを通して解決しながら成長していく、ということが狙いとなっています。

こうした手厚い3年間のプログラムが毎年、第1期・第2期…と続いており、今回私が担当したのは第7期生の2年目の研修です。

私は本研修の講師は以前にも担当させていただいたことがあり、第2期〜第4期でファンドレイジングやWebマーケティング、リーダーシップなどの研修を担当させていただいておりました。

今回講師を担当するにあたっては以前講師を務めていたときと大きな違いが一つありました。通年で研修講師を担当する、ということです。以前は年3回の研修はそれぞれ別の講師が担当しており、それぞれの講師からさまざまな専門性を学ぶという構成のものでしたが、現在では主に一人の講師が年間を通して研修生に伴走することでより深く研修生の成長に寄り添っていく形式となっております。

ということで、今回は今年度一年間うちの第1回研修の様子です。

 

「NPO経営戦略」を一気に講義で伝える

研修内容を考えた背景、狙い

今回の研修では、他の長期研修プログラムではあまり実施していない形式を採りました。一年間で全3回あるプログラムの初回に、私がコンサルティングや研修でお伝えしている「NPO経営戦略」の考え方を全体的に一気に講義でお伝えする、という超詰め込み型の講義の実施です。

2日間の研修のうち、私からの講義の時間は合計して5時間程だったのですが、その5時間でビジョン・ミッション、問題構造の分析や実態調査、外部・内部環境分析、事業開発、マーケティング、ファンドレイジング、組織開発などNPO経営に関わるテーマを一気にお伝えしました。

他の研修プログラムでは同じようにNPO経営戦略をお伝えする内容だとしても、第1回でビジョン・ミッションについて、第2回ではマーケティングについてといった形で徐々にその内容をお伝えし、ワークにも取り組んでもらいながら進めていきます。講義だけでなく、団体内の議論なども交えながら徐々に進めていかないとうまく学びにつながりにくいからです。では、なぜ今回はそのような形を採らなかったのかというと、もちろんそこにはいくつかの理由があります。

  1. 各団体からの参加者は”若手PL”一人であり、自組織に関するワークなどは基本的に一人で検討する必要があること(宿題を出す場合は別にしても少なくとも2日間の研修においては)
  2. 同じ環境系団体とはいっても、活動目的や事業の特性は大きく異なること(例えば子どもたち向けの環境教育活動もあればアドボカシー活動もあるなど)
  3. プロジェクトリーダーといっても、事業における役割は大きく異なること(組織の規模も様々で部下やメンバーが多くいる事業もあれば、組織内にはメンバーが少なく外部のステークホルダーとの関係を主に考える必要がある場合もあるなど)
  4. そもそも私が担当する研修の位置づけとして、それぞれの助成事業の進捗や事業目標の達成などの事業そのものよりも、研修生に対する”若手PL”としての育成に重きが置かれていること
  5. 特に私が担当する二年目研修においては、「事業」に関わるインプットを重視して欲しいという主催側の狙いがあったこと

まとめるとこのような感じでしょうか。

かんたんに一言でいえば、研修生全員に同じ到達点や同じアウトプットを求める研修ではない、ということです。それぞれの研修生が担当する事業で抱えている課題も、必要となる解決策も異なります。一方で、”若手プロジェクトリーダー”として助成事業の推進や、将来の団体運営のリーダーになっていくために、知識や経験として身につけて欲しい一定の水準もあります。

そこで、NPO経営戦略についての基本的な考え方や視点、ワークの方法などを一気通貫で伝えた上で、自組織(担当する事業)における課題を自分なりに分析し、解決のためにどのようなアクションを取っていくのかを検討してもらうということを実施しました。

二日間の研修の概要

上記のような背景、狙いを持った上で、二日間の研修は以下のような内容で進めました。

一日目(10:00〜16:45)
  • 10:00〜11:00 全体オリエンテーション(3期合同のオリエンテーション)
  • 11:00〜12:00 研修の流れ、研修生自己紹介(事前課題の事業診断結果を活用)
  • 12:00〜13:00 昼休憩
  • 13:00〜16:00 「NPO経営戦略」講義(堤からの講義、講義テーマ毎にブレイクアウトルームを用いて研修生同士での感想共有と講師への質疑を行う)
  • 16:00〜16:30 ワークの進め方議論(二日目午後のワーク概要と趣旨を説明した上で、時間の使い方を研修生内で議論し決定してもらう)
  • 16:30〜16:45 感想共有、事務連絡
二日目(10:00〜16:45)
  • 10:00〜11:30 「NPO経営戦略」講義(一日目の続き)
  • 11:30〜12:00 ワーク内容の説明(午後に取り組むワークの内容を共有)
  • 12:00〜13:00 昼休憩
  • 13:00〜16:00 個別相談/ワーク&相互フィードバック(講師と研修生の一対一の個別相談。並行して二日間の講義内容に関するワークの実施、ワークの実施中は講師が個別相談で不在となるため、ワーク内で出てきた疑問や課題は研修生同士の対話で解決したり相互フィードバックでブラッシュアップを行う。この時間の進め方を一日目の最後に自己決定してもらっていた)
  • 16:00〜16:30 重点取組課題の発表(講義、ワークを経て特に自分が担当する事業において解決しなければならない課題3点を明確にし、その解決のためのアクションのスケジュールを検討する)
  • 16:30〜16:45 感想共有、事務連絡
  • 後日の宿題 アクションプランのスケジュールについては研修後2週間を組織内での検討期間として後日提出とした 

本研修の特徴として、同期の研修生は3年間のプログラムをともに歩んでいく仲間であり、同期間の関係性や絆が強いということがあることや、今回は二年目研修であり、研修生同士の関係はすでにある程度できているということから、研修生同士の対話や相互フィードバックも重視して取り入れました。

若手プロジェクトリーダーができるようになるべきことは何か

今回の研修の内容や構成を検討する上で私が意識していたのは「若手プロジェクトリーダーができるようになるべきことは何か」という点です。もちろんプロジェクトリーダーとは何かやもっと大きくリーダーとは何かと考えていくと、話が大きくなりすぎて研修を考えることが難しくなってしまいますので、これまで多くのNPOに伴走する中で出会ってきた若手スタッフに共通する成長課題や組織からの期待などを踏まえて今回の研修一年間の到達目標を考えました。

  • NPO経営(非営利事業の運営)についての基本的な知識・視点を持っている(すべてを理解・習得していることまでを目指すのではなく、どのような考え方や視点があるのか将来的には身につけるべきものとして理解することを目指す)
  • 自組織や自分自身の状況において、NPO経営戦略の考え方に沿って、課題分析をすることができる(理想と現状のギャップを明確にすることができる)
  • 課題を解決するためのアクションを描き、実践し、修正することができる(PDCAサイクルを回すことができる)
  • 自分自身のリーダーとしての強み・弱みを認識できている

NPOにおける若手リーダーの成長課題として、実践の機会が少ないことや、自身の経験を相対化して捉える機会が少ないことが挙げられると感じています。各団体で特色あるプロジェクトを担当できることは、リーダーとして非常に貴重な経験なのですが、それがどのような特徴を持っており、どのような貴重な経験なのかということは、他の事例を知っていたり、自分自身の立場や行動、立ち振る舞いについてのフィードバックを得ることがなければなかなか認識することはできません。

今回の研修の特徴は同じ環境系団体で近しい立場の人材や彼ら彼女らが担当する他のプロジェクトを知ることができる点だと考えています。自分が担当するプロジェクトにおいての課題の特定や実践がある程度進むように、一定の視点や知識を伝えることは勿論ですが、他の研修生のプロジェクトにおける学びも相互の対話の中で深めていくことができれば、その学びの速度や深さなどは増していくことができると考えています。 

第2回以降の予定

10月の第2回、年明けの第3回研修では、第1回研修で明確にした重点取組課題やアクションの進捗をお互いに共有し、フィードバックし合うことを繰り返しながら、さらに学びを深めていってもらえるものにしたいと考えています。

具体的な内容は第1回終了後の宿題の取組状況や、中間研修(第1回と第2回の間に対話もしくは個別相談の回が設けられる予定)の内容を踏まえて検討していく予定ですが、

  • 第1回の講義だけでは伝えきれていない内容で、事業の課題を解決するために実践的に使いやすい知識や視点のインプットを行う
  • 研修生に新たな知識の「学びの方法」自体を伝え、継続的に成長するための視点を身に着けてもらう

といったことを狙って研修内容を検討していければと考えています。

まとめ 

以上、いかがでしたでしょうか。

本記事は、単なる開催報告ではなく、研修の構成を考える背景などを少しお見せするような記事として書いてみました。同じテーマであっても、研修の狙いや受講者の状況などによって、いろいろなことを考えながら資料・ワークを作成し、研修講師やコンサルティングを行っているということが伝われば嬉しいですし、このような研修実施の狙いに合わせた研修・セミナー作りの過程からご一緒することも多いですので、研修や講座・セミナー等の主催者の方で何かお悩みのことがありましたらぜひご相談いただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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