NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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「役に立ちたい」だけでは長続きしない?自分起点のボランティア動機のススメ

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「役に立ちたい」だけでは長続きしない?自分起点のボランティア動機のススメ

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事では「「役に立ちたい」だけでは長続きしない?自分起点のボランティア動機のススメ」と題し、NPO等におけるボランティア活動の動機のあり方について考えてみたいと思います。ボランティアをマネジメントする立場にある方、あるいはNPO等でのボランティア・プロボノ活動に興味のある方に読んでいただければ幸いです。

 

 

ボランティアの動機の第一位は「役に立ちたい」

内閣府が三年に一度実施している「市民の社会貢献に関する実態調査(市民の社会貢献に関する実態調査 | NPOホームページ)」では寄付やボランティアに関するさまざまな調査が行われており、NPOでファンドレイジングやマーケティングに携わる方に有意義な基礎データが公開されています。

この調査の中に、一年間以内にボランティア活動を「したことがある」と答えた方を対象に「ボランティア活動に参加した理由」を回答してもらう設問があります。以下のグラフは最新版の令和元年公開の調査結果から作成したグラフです。

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内閣府「市民の社会貢献に関する実態調査(令和元年度)」より作成

一位となっているのは「社会の役に立ちたいと思ったから」。54.5%の人が「役に立ちたい」という気持ちが動機であると回答しています。第二位、第三位はそれぞれ「自己啓発や自らの成長につながると考えたため(32.0%)」「自分や家族が関係している活動への支援(26.4%)」 となっており、「役に立ちたい」はボランティア活動をする人にとって一般的な動機だといえます。

この問いは回答が選択式で、しかも複数回答可の設問ですので、この回答を選ぶ方が多いことに特段の違和感はありません。私自身が回答者だったとしてもおそらく複数回答の一つとして選ぶと思います。ボランティア活動が社会の役に立つものであるというのはある意味一般的なイメージともなっており、そのイメージ自体に明確な違和感を持っていたり、あるいは明確に他の選択肢が自分の動機に近い!と強く感じるものがあったりするのでなければ、特に違和感なく多くの人が「社会の役に立ちたいから」を選ぶでしょう。

実際、私自身がボランティアコーディネーターとして多くのボランティア希望者と面談を行ってきた経験の中でも「人や社会の役に立ちたい」「誰かのために力をつかいたい」というようなボランティア動機を話してくださる方は多くいらっしゃいました。

ただし、こうした「役に立ちたい」「誰かのために」というボランティア動機には注意が必要だと個人的には感じています。場合によってはせっかく活動を始めてくれたボランティアさんが早々に活動への参加を辞めてしまうことにつながってしまいます。

「誰かのために」だけでは挫折しやすい

「役に立ちたい」や「誰かのために」という動機ではなぜボランティアの早期挫折につながりやすいのでしょうか?

それはこうした動機・理由が他者起点の発想となってしまっていることがあるからです。他者起点というのは、自分がボランティア活動をすることで「誰かが喜んでくれるだろう」「誰かがありがたいと感じてくれるだろう」と、他者の感情を自分の発想の出発点にすることを指しています。

ボランティア活動といっても活動の種類によってどのように人や社会と関わるのかはさまざまですが、過度の他者起点の動機は「あなたのためにやっているのです」という押し付けとなり、特に対人支援の活動の場合には、受益者・被支援者の負担になったり、拒否感につながってしまう場合もあります。

また、そもそもボランティア活動は活動を開始する前の予想通りにはうまくいかない場合も少なくありません。例えば私自身は社会的養護下の子どもたちへの学習支援の活動に長く携わっていましたが、活動自体の立て付けが「学習指導」だったとしても、子どもたち自身が「勉強をしたがっている」かどうかは別問題です。もちろん「勉強をしたがらない」「勉強嫌い」になってしまう背景にも社会的養護に至るまでの複雑な事情があったり、あるいは個々人の特性やあるいは気持ちの問題などさまざまな背景があるので一概には言えませんが、「勉強したい子どもが来る」という前提の学習塾とは事情が異なります。(社会的養護下の子どもを対象とした学習支援活動においても子どもたちの自発的意思の表明やその醸成を重視するタイプの活動もあると思いますが)

「学習指導をすることで子どもの役に立ちたい」と考えていても、子どもの側が勉強をしたがらずにうまくいかないこともあるでしょう。
「勉強を教えたい」という気持ちは強いけれど、思うように教えられないこともあるでしょう。
そもそも子どもとうまくコミュニケーションが取れず、関係がつくれないこともあるでしょう。

対人支援の活動を始めたときになかなかスムーズにいかないということは決して珍しいことではありません。珍しいことではないのですが、こうしたうまくいかない事態に直面したときに他者起点の理由しか持っていないと「あなたのためにやっているのに、なぜ?」と独りよがりな挫折をしてしまう場合があるのです。

大切にしたい「自分起点」の活動動機

ではどうしたら良いでしょうか?

私がオススメするのは他者起点ではなく、自分起点の活動動機を持つことです。

自分起点の動機とは自分勝手や自分都合のことではありません。「社会の役にたちたい」「誰かのために」という動機を否定することでもありません。

大切なのは(他者起点の)動機を一段掘り下げて「なぜ役に立ちたいと考えるのか?」を考える(考えてもらう)ことです。

なぜボランティアに参加したいのか?という問いに対して「社会の役にたちたいから」と第一声では同じ答えを表明する方がいたとしても「なぜそう思うのか?」「社会の役に立つことがなぜあなたにとって重要だと考えるのか?」と掘り下げる問いを考えてもらうと、人によってさまざまな答えが返ってくるはずです。

「本業の仕事では直接お客さんと触れ合う機会がないので、自分の力で人や社会の役に立つという実感を持ちたい」という背景に自分起点の理由があるのかもしれません。
「昔地域の人との関わりの中で「ありがとう」と言われた経験が嬉しかった」というその人自身の価値観に源泉があるのかもしれません。

あるいは「社会の役にたちたい」「誰かのために」などの他者起点からはいったん離れて「会社以外のコミュニティに所属したい」「新たな経験や学びを得たい」というストレートに自分起点の動機が出てくる場合もあると思います。

正解があるような問いではありませんので、どのような答えでも大丈夫ですが「自分はなぜボランティア活動をするのか?」という問いに自分を起点とした動機で答えられる人は、活動開始後に少々うまくいかないことがあったとしても、自分の動機に向き合いながら乗り越えていってくださり、長く活動を続けてくださることが多いでしょう。

あなたがNPO等でこれからボランティア・プロボノ活動をしたいと考えているのであれば、ぜひ本記事を参考に自分がボランティア活動をしたい理由を考えてみてください。

ボランティア希望者との面談で自分起点の活動動機を確認

あなた自身がボランティア活動者ではなく、NPO等でボランティアやプロボノを受け入れる側の場合には、自組織のボランティア受け入れまでの流れの中で自分起点の動機を確認できているかを再確認してみてください。特にボランティアやプロボノが長続きしないという悩みを抱えていらっしゃる場合には要チェックです。

ボランティアを受け入れるまでには、面談を実施したり志望動機書などの記入を求めるなどして多くの場合、何らかの方法・タイミングでボランティアの参加動機を確認しているのではないかと思います。

繰り返しになりますが「役に立ちたい」「誰かのために」という発想を持っていてはいけないということではありません。そうした発想が動機として表明される方は他者を思い遣る優しい心を持っている方であることも多いのです。あくまで確認をすべきなのは「自分起点の動機」です。「役に立ちたい」「誰かのために(例えば「子どものために」)」という動機を口に出す方がいらっしゃれば、「なぜそのように感じるのですか?」「なぜそれがあなたにとって大切なのですか?」と一段掘り下げるWHYの質問をしてみましょう。

自分起点の理由や価値観は持っていても自分自身でも明確には意識ができていない場合や、そもそも自分起点の動機が発想になかったという場合もありますので、面談の会話の中で考えてもらえるようにできると良いでしょう。

そして、できるならその考えてもらった理由を記録に残し、ボランティアさん自身としても受け入れ側である団体としても意識をしながら活動ができると良いでしょう。ボランティアさんが活動開始後にうまくいかなかくて、自信を失ってしまっているようなことがあれば、自分起点の動機を思い出してもらうことでうまくいかない場面にも向き合うことができるようになることもあります。

また、活動開始から半年や一年が経ったときには一緒に振り返りもできると良いです。改めてそのボランティアさんに聞いてみましょう。自分起点の動機から振り返って、自分は始めたときの動機・理由に応えられる活動成果が出ているかを考えてもらい、そのまま同じ動機をもって続けるのか、あるいは新しいチャレンジをしたいという動機や理由が生まれてくるのか、そうしたことを考えてもらい、団体として望んでいる次のチャレンジも提示しながらすり合わせを行うことでさらにモチベーション高くボランティア活動を続けてもらえるようになるでしょう。

いかがでしたでしょうか。本記事では「「役に立ちたい」だけでは長続きしない?自分起点のボランティア動機のススメ」と題し、ボランティアマネジメントに関わるテーマを考えてみました。良いボランティア活動をする人や活動場所が増えていくための参考にしていただけると幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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