堤大介のブログ - 朝ぼらけタイガー

NPOなど公益組織のコンサルタント。NPO関連の話題の他、読んだ本のレビューなどを書きます。

2017年読んで面白かった本10冊

2018年が始まってあっという間に1月上旬も過ぎさってしまいそうですが、やっと新年初投稿です。今年も昨年読んだ本のまとめから。

 

昨年読んだ本のうちマーケティングなど仕事関連の実務本は除いて選びました。
全10冊のうち、前半8冊が小説以外の本。残りの2冊が小説です。


過去のまとめ 

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小説以外の本

まずは小説以外の本から。並べてみると今年は新書ばかりでした。考えてみれば時間なくて分厚い本避けがちだったなぁと反省。

 

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

 まず最初の1冊は『LIFE SHIFT』。もう説明不要というぐらいに有名になった本ですね。この本を読んだことがなくとも「人生100年時代」という言葉を聞いたことのある人は多くいらっしゃるのではないかと思いますが、この言葉は『LIFE SHIFT』の表紙にも抜き出されている本書の議論の前提となるキーワードです。少子高齢化を始めとする様々な社会課題が存在し、そしてAIやフィンテックを始めとする新たな技術革新がこれまでにない社会変化を起こす気配を感じさせている中で、自分自身はどう生きていくのか。将来をどう考え、いま行動していくのか。これを考えるのは簡単なことではありません。日本社会においては「働き方革命」が今年も引き続きキーワードになっていくと思いますが、単に社会や会社側の変化を待つだけでなく、自身が主体的にこの変化の中を生きていくためにどうするのか。最初の考える切っ掛けをくれるのに、出版から一年以上経ちましたがやはり今でもこの本が価値を持っていると思います。未読の人はぜひご一読を。

 

以下の記事にてレビューも書いております。

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100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

 

 年初に『LIFE SHIFT』に続いて読んだ本。テーマ的にも『LIFE SHIFT』と地続きだと捉えています。「人生100年時代」に向けて「働き方革命」をというとどうしても「仕事」が先に来てしまいがちですが、仕事よりも先に考えるべきことがあります。この『100の基本』という本は生きる、生活する上での100のルールを定めようというものです。生活の上での100のルールとは、仕事とプライベートのどちらを優先すべきとかそのバランスをどうこうするかという話ではなく、そもそもその前提として自分自身が「どうありたいか」ということです。どんな人として日々を、時間を過ごしたいのか。周りの人とはどうか。そしてどんな仕事を、どんな風にしたいのか。一年の初めにまずはそんな自分なりの「100の基本」を考えてみるのも良いのではないでしょうか。

 

レビューはこちら。 

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子育て支援と経済成長

子育て支援と経済成長 (朝日新書)

子育て支援と経済成長 (朝日新書)

 

 昨年は面白い新書を何冊も読みました。気づけばこのリストも今年は新書が多い。なかなかページ数の多い本に手を出す暇がなかったということも理由ですが、実際に読んでよかったと思える新書が多かったのも確か。この本もそのうちの一冊です。テーマはタイトルの通りなのですが、単純な子育て支援施策についての分析ではなく、まさにタイトルの通り子育て支援を経済成長と絡めて分析しているという点が面白く、そして現実的な提言だとも感じるポイントです。著者の柴田さんは様々な社会政策の効果を経済効果の観点から分析している方で、本書については柴田さんの言葉を借りれば「子育て支援の『本来の目的についての効果』ではなく、子育て支援の『副次的な効果』について」分析を試みるものであり、それはどういうことかといえば子育て支援が社会全体に対してどのような経済効果を持ち、それが財政にどのような影響を与えるのかということです。結論は総論としてはタイトル通り「子育て支援政策は経済成長や財政の改善に効果がある」ということなのですが、産休育休制度の充実、保育環境の整備、現金給付などさまざまな政策の中でどれが効果があるのか、そして他の分野への投資と比べて子育て支援は効率的な政策なのか、様々な観点から分析されており読み応えがあります。


ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援

 子育て支援につづいて子ども支援に関するテーマの本。児童相談所という施設の名称については多くの方がご存知だと思いますが、その役割までご存知の方は少ないのではないでしょうか。その名称は児童に関する相談にのってくれる施設ということですが、分かりやすくいえば児童虐待などの通告を受け、通告に対する対応やその後の子どもや親とのコミュニケーションやフォローをする施設です。本書で深く扱われている一時保護所というのは虐待等を受け保護された子どもたちが、家庭に戻ることができるのか、できないのであれば里親家庭か児童養護施設乳児院かどの場所で養育することになるのかを判断している期間に一時的に子どもたちを保護する場所のことで、児童相談所内にあります。本書は複数の一時保護所への住み込みやインタビュー、そして一時保護所での生活を経験した子どもたちへのインタビューなど丁寧な取材を元にして書かれた貴重な本です。児童相談所についてその役割を知っている方は少ないでしょうと書きましたが、実は子ども支援に関わる業界の人でも児童相談所の実態については知らないことが多いのです。乱暴に中身を紹介するとすれば、良い児童相談所と悪い児童相談所があるということ。その差を生む本質な違いは何か。そして、差をなくしていくためにできることは何かということが書かれています。子ども食堂などで子ども支援に関わる人は今年も増えていくかと思いますが、多くの方にぜひ読んで欲しい本です。

 

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縮小ニッポンの衝撃 

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

 

 2016年9月に放送されたNHKスペシャル「縮小ニッポンの衝撃」の取材班が、取材対象地域に番組時点よりもさらに踏み込んだ取材を重ねてその内容をまとめた本。少子高齢化が進むことで私たちの住む地域は、暮らしは一体どのようになるのか」をこれ以上ないリアルさで伝えています。なぜなら、すでにそれが現在の話となっている地域が日本にはたくさんあるから。そしてこのまま行けば日本中例外なく私たちの地域や暮らしは「縮小」したり、あるいは「消滅」したりする。本書では東京のとある区も「消滅可能性都市」として取り上げられています。たとえ東京でも他人事ではないということ。少子高齢化というのは日本人であれば誰でも知っている言葉です。私は現在31歳ですが、小学校の教科書にはすでに載っていたように思います。ただ、ずっと警告され続けているにもかかわらず、私たちの日々の暮らしはそんなには変わらないじゃないか、というのが少なくない市民の感情ではないかと思います。それでも少子高齢化は、それによる過疎化は、地域の・日本の財政の悪化は確実に日々の生活を蝕んでいきます。私はいまNPOコンサルタントとして働いており、日々社会課題の解決のために取り組む人たちと仕事をしていますが、改めて日本社会がいまどこにいて、このままだとどこに向かっていこうとしているのか。それに対して自分はなぜ今の仕事をしたいと思っているのか。改めて足元を確認する本となりました。

 

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分解するイギリス 

分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流 (ちくま新書 1262)

分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流 (ちくま新書 1262)

 

 続いての本は視点を世界に移し、イギリス政治についての本です。2016年に国民投票によりEUからの離脱を決めたイギリス。アメリカ大統領選の結果に続けて世界に衝撃が走ったニュースでした。本書はイギリスの歴史や、社会経済の変化からなぜイギリスが「分解」し、「EU離脱」という結果につながったのかを分析します。イギリス政治とは長らく日本政治にとって手本となるものだったと筆者はいいます。これまでの小選挙区制の導入や首相のリーダーシップ強化などの政治制度改革における大きな方向性として「政権交代のある健全な競争」を機能させようというものがありましたが、イギリスはその重要なモデルだったといいます。ただ、その「モデル」たるイギリス政治の根幹である「合意と多数決」を形作ってきた各種制度が変容し分解してきたことによって、イギリスの合意と多数決が十分に機能しなくなった結果、民意の漏れが起こっている。イギリスのEU離脱にしろ、アメリカ大統領選挙にしろ、ポイントとなるのは「民意の漏れ」です。もちろん日本も。複雑化した社会の中で民意をいかに汲み取るかというのは簡単なことではありませんが、今後政治システムが民意を反映するように最適化していくことができるのかは大切な点であり、だからこそ本書で分析される「なぜ民意の漏れが起こったのか」については知り、考える価値があります。

 


人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊

 AI関連では今まで読んだ本の中で一番面白かった。副題が「2030年の雇用大崩壊」とされていますが、単に「人工知能によって仕事を奪われる」という危機感を煽るだけの本ではありません。人工知能の発達にはどのような方向性があり、それぞれの特徴や可能性を丁寧に解説した上で、それぞれが社会に及ぼす影響をマクロ経済の視点から紐解き、最後にはベーシックインカム制度の導入を提言しています。主題の方で「経済の未来」と冠されていますが、人工知能による社会の変革は、紀元前一万年前から始まった「定住革命」、蒸気機関や工場生産の発明の「第一次産業革命」、電気や石油、化学技術による革新の「第二次産業革命」、インターネット・通信技術の革新による「第三次産業革命」に続く第四次産業革命になりうるものであるとしますが、この解説が素晴らしく分かりやすかった。経済全体のインプットを「機械」と「労働」に分けてそれによる「生産活動」が行われる。その結果アウトプットとしての生産物が生まれ、それを消費したり再生産のための投資とする。このとき技術というのは生産活動の効率性を上げるものである。こうして要素を分解していった際に、これまでの産業革命によってインプット・アウトプットにどのような変化があり、今後人工知能によりどう変化するのか。議論を非常に簡潔にしながらも言葉が丁寧で、センシティブな内容であるからこそ読者への配慮も感じるとても良い本でした。


かかわり方のまなび方: ワークショップとファシリテーションの現場から

西村佳哲さんの本。2017年には前作である『自分をいかして生きる』も再読しましたが、この本はまだ手にとっていませんでした。初めて西村さんの本を読んだのは就活のときで、『自分をいかして生きる』を読んだのは社会人一年目でした。その後発売された今作については、「ワークショップ」や「ファシリテーション」というキーワードがあまり当時の自分の環境にピンと来ておらずに手を出していませんでした。あれから数年たち、気づけばコンサルタントや研修講師としてワークショップを行ったり議論の場のファシリテーションを行うということもいつの間にか増えてきており、今こそ!と思いとても楽しみにしながら手に取りました。ワークショップを生業にしているたくさんの人達の言葉と、西村さんの思考が丁寧にちりばめられていて、読んでいて非常に心地よい本でした。一度で消化できるような内容ではないのですが、それでも心地よかった。それはたぶん、ワークショップという場やファシリテーションというのが本質的に人に興味を持ち、尊重しようとする姿勢を大事にするからであり、本書に登場する方たちからはみなその本質を感じるからだと思います。人と関わるということを自分なりにどう捉えていくのかは今年も引き続き、実践しながらも考えていきたいテーマで、いまはエドガー・シャインの『人を助けるとはどういうことか』を読んでいます。「かかわる」ということについて考えるきっかけとなる本たちについても改めてまとめて考えてみたいなと思います。


星を継ぐもの

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 SFに入門しはじめてこれまでに何冊か読んできました。クラークだったり、ハインラインだったりと有名所からポツポツ読みはじめる中でたどり着いたのがホーガンのこのシリーズ。『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』『内なる宇宙』と前作読み、シリーズを通して面白かったのですが、第1作目である『星を継ぐもの』の面白さは圧倒的でした。「面白い小説読んだなぁ」という気持ちの良い読後感を久しぶりに強烈に感じた本でした。前に読んだSFがハインラインの『夏への扉』で、あれもとても面白かったのですが、やはりハードSFと呼ばれるだけあった『星を継ぐもの』は裏付けとなる技術や知識に対する書き込みや構成が非常に読み応えがあり、全編を通して徐々に解かれていく謎にただただもう興奮するばかりでした。2作目以降は1作目を超える謎解きのドキドキ感はなかったものの、それぞれの主題となるテーマ(遺伝子学や仮想現実など)はとても面白く、ホーガンの他作品も読みたくなりました。


アルケミスト 

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

 

 世界中で読まれているお話。「自分の直感に従って生きる」とはどういうことか、「夢に生きられなくなる」とはどういうことかということを教えてくれるお話です。本記事で紹介されている本たちを振り返ると、社会の変化は引き続きどころかますます世知辛くなる中で、どんな風に働いていけば良いのかということを否が応でも考えねばならないようです。そんなことに向き合うときに背中を押してくれるのは小説であり、お話であるという方も少なくないのかなと思います。私はそうです。人生の節目節目で大切な小説に出会ってきましたが、きっと本書は世界中でたくさんの大切な役割を果たしてきたんだろうなと感じる力強さと優しさを感じる本でした。子どもも読める童話的な本ですが、むしろ大人が読んだほうが良いのではないかと思います。

 

以上です。

少しでも誰かの読書を幸せな時間にすることにつながれば幸いです。

 

さぁ今年もたくさん読むぞー!