NPOコンサルタント堤大介のブログ - 朝ぼらけタイガー

NPOなど公益組織のコンサルタント。ファンドレイジングやWebマーケティングなどNPO支援に関する記事の他、読んだ本のレビューなどを書きます。

2018年読んで面白かった本15冊

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。

早くも1月も中旬ですが、2019年初投稿です。

最近NPO関連や仕事関連の投稿が続いてましたが、実は本ブログは書評ブログとしてスタートしております。最近すっかり書評書くペースは落ちていますが、年一のまとめ記事ぐらいは続けていきたいと思います。

ということで、昨年読んだ本の中でオススメの本のご紹介です。
読むジャンルはバラバラで、小説からノンフィクションから実用書から思想まで雑食に読みますが、技術書系の本は外して選んでます。紹介順は読んだ順番です。

 


目の見えない人は世界をどう見ているのか 

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

 

 2017年度から日本ブラインドサッカー協会さんとお仕事をさせていただいており、全国でブラサカチームの立ち上げ・経営改善に取り組む方向けの連続講座の講師を務めております。NPOに中間支援で関わることの楽しさの一つがそれまで自分がまったく知らなかった世界を知ることができるということ。「目の見えない人の感じる世界」というのもその一つでした。ということで、ブラサカへの興味から派生して手にとった本。目の見えない人は視覚という感覚の代わりに、聴覚や触覚による空間把握が非常に優れているという話など思わず「なるほど!」と唸ってしまいました。丁寧な取材と素直で深い考察から「目の見えない人の世界」を楽しみながら知ることができ、知的好奇心を激しく刺激される一冊です。著者の目線が優しく、他の本も手にとって見たいと思いました。(昨年出版された『どもる体 (シリーズ ケアをひらく)』とかきっと面白いに違いない)

 

人類史のなかの定住革命

人類史のなかの定住革命 (講談社学術文庫)

人類史のなかの定住革命 (講談社学術文庫)

 

 帰省した際に親父の本棚から持ってきた本。『サピエンス全史』をはじめ人類史関連の本が流行ってますよね。でもね、どれも分厚いですよね。『サピエンス全史』しかり、『銃・病原菌・鉄』しかり。「興味はあるけどなかなか手が伸びない」という方にはこの本をオススメします。人類の歴史として「狩猟採集の時代から農耕が始まったことにより人類の定住化が起こり文明化へと続いていった」という「農耕文化」を起点とした歴史(「農業革命」による歴史)というのが一般的に思い浮かぶものだと思いますが、本書はそれに異を唱え、「農耕ではなく定住が先だ」といいます。定住したからこそ農業を始めとする大規模な施設や協業を必要とする生活形態を採用することができたのだと。論旨は明快。サクッと読めて、激しく面白いです。

 

人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則

人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則

人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則

 

 コンサルなど対人支援職を生業とする人でファンは多いのではないでしょうか、エドガー・シャイン先生の著作。内容はタイトルの通り。「人を助ける」というシーンにおいてどのようなコミュニケーションが適切か、コミュニケーションを行う際に何が起こっているのかについて丁寧に解説する本。一口に「人を助ける」といってもその場面は色々で。コンサルティングや医療など、仕事としての支援もあれば、家庭内や友人関係におけるコミュニケーションにおいても「助ける」は当然起こります。あらゆる場面の豊富な事例やシャイン先生自身の体験談を交えながら書かれており、とても読みやすく納得度の高い本です。

 

ファンベース

ファンベース (ちくま新書)

ファンベース (ちくま新書)

 

 2018年私が人にオススメする機会の最も多かった一冊。今年も引き続きオススメします。特にNPOマーケティングやファンドレイジングに関わる方は必読。
詳しくは以下の書評をお読みください。

 

www.daisuketsutsumi.com

 

 

今こそ読みたいマクルーハン 

今こそ読みたいマクルーハン (マイナビ新書)

今こそ読みたいマクルーハン (マイナビ新書)

 

 メディア論の大家マクルーハン。NPOのマーケティングやファンドレイジングのご支援を仕事にする中では様々なチャネルやツールを使ったコミュニケーションの設計に関わります。そんな自分の仕事がどんな意味を持ちうるのかを改めて考えるために大学時代以来にマクルーハンを改めて考えてみようということで手に取った本。マクルーハン自身の著作はとても分かりにくいと言われるものですので入門書からの方が分かりやすいと私は思います。本書も新書一冊で簡潔にまとまっています。「メディアはメッセージである」という言葉が一番有名ですが、実は近い言い回しで他にも色々言っているんですよね。「メディアはマッサージである」とか。他にも「hotなメディアとcoldなメディアとか。大学のころはピンと来なかった議論も自分が実務として「メディア」に携わってみると色々と考えられるところが増えていて楽しかったです。

 

世界神話学入門

世界神話学入門 (講談社現代新書)

世界神話学入門 (講談社現代新書)

 

 講談社新書の新刊予定でたまたま見かけて即購入を決意した一冊。期待通り面白かったです。これも神話や宗教の話というよりは人類史の話です。大きなリサーチクエスチョンは「なぜ世界の全く離れたところで共通した神話が語られるのか」。世界各地の神話を分析すると大きな神話の流れは新旧の2つに大別することができるといいます。新旧2つの神話群はそれぞれどのような要素を持つのか、2つの流れはどのような経緯で分布するに至ったのか、そしてそれらは人類の文明史にどのように影響してきたのか。神話という観点から読む人類史、面白いです。

 

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 

 昨年非常に話題になり、未だに売れ続けている本。やはり面白かったです。とても分厚いですが読んで損はないです。要約とか初回記事だけ読むとティール組織とかホラクラシー組織というような水平的で自律的な組織が強く目指すべき理想の姿だ!と簡単に思ってしまいがちですが、個人的に本書の組織論の要諦は組織における進化論であるという点ではないかと思っています。社会全体の中で組織というものが進化していくという話でもあるけれど、個別の組織としても進化というか前の段階をちゃんと踏まえた上で自立的な組織を目指すべきなのであって、例えばそこら中のNPOがティールの議論を知って「なるほど、やはり成果至上主義は時代遅れだ。我々の価値は測れないし目標で管理すべきものではない」と開き直るために使われてしまっては残念です。ということで分かったような議論をしたくない方はご一読を。

 

暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由

 尊敬するNPOの尊敬する経営者安田さんの著作。何年もブログを購読して本が出版されるのを心待ちにしていたので出版されたのがとても嬉しかった本です。そして期待以上に面白く、大切な本の一冊になりました。詳しくは書評を書いておりますのでこちらをご覧ください。

 

www.daisuketsutsumi.com

 

完全教祖マニュアル

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

 

 『ファンベース』に続いてNPOマーケティングの文脈からの書評を書こう書こうと思いつつ時間がとれないままになってしまった本。ぶっ飛んだタイトルですよね。「教祖になるためのマニュアル」という体で書かれた本で、「大衆に迎合しよう(第二章)」「甘い汁を吸おう(第七章)」などなど中身も本当にぶっ飛んでいます。が、ぶっ飛びつつも宗教というものがどのような要素で成り立っているかということや、有名な宗教がどのような教義をどのような意味合いで持っているのかということが自然と頭に入っていて、著者の筆力に驚かされます。NPO関係者にとっては「NPOとの違いはなんだろうか」と考えながら読んでみるととてもおもしろい本です。宗教の本質は「弱者の救済」であるとか、布教(共感)の考え方とかNPOにも共通する部分は実は多くて、考えさせられる点がきっとあるハズ。

 

私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む

私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む

私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む

 

 『成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか 』のポール・タフの新刊。前作で子どもの成長における「非認知能力」の重要性を指摘したことに続いて、本作で考える問いは「どうすれば子どもの非認知能力を高めることができるのか」です。前半は主に家庭において、後半は主に学校現場において、それぞれ子どもたちが非認知能力を獲得していくプロセスについて検討しながら、子どもたちに対してどのようなアプローチをすればよいのかが描かれています。具体的で分かりやすいエピソードが豊富で読みやすいのですが、本書の本質は単なるエピソードの紹介ではなく、各種最新の研究結果を噛み砕いた上での解説やエピソードであるということ。子どもの養育や教育はともすれば印象論で語られがちな分野ですので、こういう本が子どもに関わる人をはじめもっと多くの人に読まてほしいなと思います。

 

レッド・マーズ〈上〉・〈下〉

レッド・マーズ〈上〉 (創元SF文庫)

レッド・マーズ〈上〉 (創元SF文庫)

  • 作者: キム・スタンリーロビンスン,Kim Stanley Robinson,大島豊
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1998/08/26
  • メディア: 文庫
  • 購入: 1人 クリック: 14回
  • この商品を含むブログ (22件) を見る
 

 

レッド・マーズ〈下〉 (創元SF文庫)

レッド・マーズ〈下〉 (創元SF文庫)

 

 テラフォーミング物のSFとしては最高傑作なのではないでしょうか。いま2作目の上巻を読んでいる最中ですが、すでにその確信があります。読んだきっかけは地域づくりやまちづくりへの関心から飛躍して江戸の都市づくりの歴史に興味を持ったり、SFのテラフォーミング物やファンタジーの建国紀的な作品へと興味が伝染する中で手にとって一冊だったのですが、出会えて良かった。火星のテラフォーミングを行うために先遣隊として派遣された100人の科学者たちが主人公で、さまざまな人物の視点、思惑、興味関心が入り混じりながら総体としての火星環境が少しずつ変化していく様が描かれているのですが、地球の各国政府や大企業の状況やその思惑の絡み方など現実世界に照らしても考えさせられる部分の多い作品です。本作レッド・マーズに続いて、『グリーン・マーズ』、『ブルー・マーズ』とそれぞれ分厚い上下巻が続く骨太の作品です。SF好きの方はぜひ。

 

終わらない「失われた20年」

終わらない「失われた20年」 (筑摩選書)

終わらない「失われた20年」 (筑摩選書)

 

 社会学者北田暁大先生の著作。北田先生が極めてまっとうな激しい反論を行っていた上野千鶴子先生との対談など、北田先生の論考と対談が交互に含まれています。平成の日本社会における歴史に残る大きな傷跡が「失われた20年」です。この20年は単に過去として過ぎ去った訳ではなく、その20年で世代として貧乏くじをひかされることになったいわゆる「ロストジェネレーション」は消え去るわけではなく、年を取ったに過ぎず、今後も当然に日本社会の構成員で有り続けます。若者支援分野などでも若者の定義が一般的に「39歳まで」となっていることによる問題点などが指摘されることがありますが、そうした世代をどう捉えるのか、そしてそれらの問題を棚上げにしてやる気を失い高みの見物を決め込み始めた左派論壇の巨人たちに対しての北田先生の議論。平成が終わる前に読んだ方が良い本です。

 

社会を変えるには 

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

 

『終わらない「失われた20年」』のあとに読んだ本。新書ですが分厚いです。社会を変える行動としての「デモ」について丁寧に解説された本ですが、個人的にはデモについての記述自体は「2018年現在、その”盛り上がり”に参加していた人たちはどうなっているだろうか。本当にそれで社会は変わるのか」という点が気になってしまったのですが、社会運動史のまとめは非常に勉強になりますし、変えるべき対象としての現代社会を分析するにあたって、近現代社会の歴史と社会科学/思想の発展が解説される「第5章:近代自由民主主義とその限界」は端的にまとまっていてとても良いです。社会科学について学びたいと思っている人はまずこの章だけでも読んでみると良いのでは。

 

医療ケアを問いなおす ──患者をトータルにみることの現象学

 広く社会一般を考える本から一転して「対人支援」について考える本。対人支援において受益者とどう関わるか、受益者をどう捉えるかというのは非常に大きなテーマです。本書では医療における患者を捉える視点として哲学の「現象学」を用いる議論について解説する本です。現象学は医療や看護において非常に大きな分野となっているらしいのですが、それ以外の対人支援分野ではあまり聞いたことがありませんでした。個人的に人生100年時代の働き方改革やAIによる労働の置き換えが進んでいくと、営業等も含む対人職というのは増えていくと思いますし、人と関わる場所としての地域のあり方やそこにおける対人関係のあり方というのは今後の社会の大きなテーマになっていくと思っています。そうしたことを考えていくためにヒントになる一冊。

 

わたしが・棄てた・女

新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫)

新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫)

 

 昨年は遠藤周作の本では『海と毒薬』の続編である『悲しみの歌』も読んでとても良かったのですが、今回はこちらを選定。『海と毒薬』や『悲しみの歌』に比べるとサッと読めてしまう書き口なのですが、問いかけるテーマは軽くはありません。遠藤周作作品にはキリスト教的な、というかキリスト自身のような圧倒的な献身性を持った人物が登場することが少なくないですが、本作品の特徴はそうした人物が物語の中心人物であるということ。人に(ときには気まぐれ的に)辛く当たってしまうという経験をもつ人は決して少なくないと思います。そうした経験や自身の立ち振舞いを静かに見直したり、身の回りの人を大切にしたいという感情をこういう方向から考えさせる作品もあるんだなぁと。

 

以上15冊でした!

1冊でも興味を惹かれる本があれば幸いです。

 

昨年以前のおすすめ本紹介記事 

www.daisuketsutsumi.com

www.daisuketsutsumi.com

www.daisuketsutsumi.comwww.daisuketsutsumi.com