本日はつくば市役所で開催された「子育てde国際交流 in Ibaraki」というイベントに出席してきました。
このイベントはつくば市のNPO法人kosodateはぐはぐが主催するもので、kosodateはぐはぐが事業として実施しているホームスタートというイギリス発祥の家庭訪問型の子育て支援活動のグローバルイベントの一貫です。kosodateはぐはぐさんを少しご支援させていただいた縁で招待いただきました。本当にありがとうござました。
イベントの中身
- kosodateはぐはぐ代表前島さんからの挨拶、つくば市長挨拶
- イギリスとスリランカのホームスタート活動の代表からそれぞれの国の子育てに関する状況と活動の様子の紹介
- つくば市の保健師の方からつくばの子育て環境についてのお話
- つくばで子育て中の外国人ママからのお話(スリランカ、イタリア、チェコから)
- 会場からの質疑応答を交えてのディスカッション
- 会場を変えて市役所内レストランで軽食をいただきながら交流会
と盛り沢山な内容でした。
詳細はこちら。(Facebook)
ホームスタートは日本全国でも地域の事情に合わせた活動をしていることが特徴と聞いていましたが、グローバルな活動はなおさらですね。国によって子育て中の親子が直面する課題も、マクロレベルで国が課題としている指標も違ったりするので、それを受けての活動も色々のようです。
ホームスタートジャパンのHPはこちら。
イギリスとスリランカの話
イギリス
イギリスは出生率が人口維持水準より低い1.81であることや、出産年齢が上がってきている(30.4歳)こと、核家族化が進み子育て中の親が孤立しがちであることなど日本の子育ての環境と似ているところも多いようです。
日本と異なる点としては、新生児の28.2%が英国以外で生まれた母親による出産(つまり外国人ママ)であり、過去最高を更新してまだ伸びているという状況にあること。
この状況の中でホームスタート活動として言葉の壁を感じている親をいかに支えるかということは非常に大事なポイントになっているようです。
また、家庭訪問型の子育て支援であるホームスタートは元々出産後のサポートとして始まっていますが、近年の学術的な研究の結果を受けて、妊娠期からの支援に幅を広げていたり特に乳児期までの愛着という面を重視したサポートに力を入れていること、妊娠前や学齢期などホームスタートのカバー範囲の「前後の期間」をサポートする各プレーヤーとの連携、あるいは同じ期間でも他のプロフェッショナルとの連携などをとても意識された活動をしている点は非常に先進的で、さすが発祥の地といったところでした。
スリランカ
スリランカは日本やイギリスとは異なり、人口が維持から増えていくという水準にある国です。現在約2200万人の人口が2031年には2300万人になりさらに伸びていくという見込みとのことなので、すごい勢いです。これに伴い、課題として単純にホームスタート活動としての人員その他のリソースが足りなくなるという点を挙げていました。
ホームスタート活動の特徴としては国の行政との連携がかなり強固であるということ。子育て支援については出産前の時期から、カップルのためのケア→妊娠前ケア→妊婦ケア→分娩時のケア→出産後のケア→家族計画とリプロダクティブ・ヘルス→カップルのためのケア、と一連の支援がサイクルとして意識した設計がされている点はなるほどと思いました。一方で母子の栄養状態や安全でない妊娠中絶についてが課題に上がっていたり、国の指標として妊娠死亡率の減少が掲げられているなど公衆衛生面の話題が多かったことも印象的でした。
「話を聞く」のが一番大事
国の状況により様々なホームスタート活動ですが、それでもいちばん大事な要素は共通しているという点もイベントを通じて感じました。それは「話を聞く」ということ。
イギリスの代表の方が繰り返し繰り返し「Listening」とおっしゃられていたことはとても印象的でした。
わずかな時間だとしても話をする相手がいるということ、話を聞いてくれる存在がいるということはとても大切なことです。これは子育て支援だけでなく他の対人支援分野についても言えることです。
私は児童養護施設での学習支援ボランティアをやってきましたが、その活動において例え1週間に一度たったの1時間だとしても「自分だけの話を聞きにきてくれる人がいる」ということがなかなか大人を独り占めできない施設の子どもたちにとっていかに勇気づけられることであるかを感じていました。特に孤立して子育てという困難なことをしている親にとってホームスタートの活動というのはそういう心の支えになりうる時間なのだと思います。
つくばで子育てをする外国人ママの話とディスカッション
後半の市内の外国人ママによる実体験と会場を交えてのディスカッションも面白かったです。
つくばや日本で出産や子育てをする中で感じたこと、受けた支援、困難だと感じていることなどざっくばらんな話が語られていました。
市内で子育て中の親によるピアサポートの活動を運営されているという方から「英語は充分でないかもしれないけれど、そして一時的なものになるかもしれないけれど、それでも子育て中の母親が集まれるよという場所があったとしたらそれは役に立つか?また、それはどのような場所に発信すれば伝わるか?」という質問に対して、「集まれる場所はありがたい。ただ、支援がなくて困っているのは母親だけではなく、10代以上で日本語が苦手な子どもも居場所がないので彼ら彼女らの居場所もあると有り難い」という声や、「つくばにも外国人の親たちによるFacebookグループがありそこで情報交換はされている。困っていることは集まる場所や講師がないこと」という会話がなされていました。
比較的外国人が多いつくばですら支援が足りていない状況なので、日本全体で考えるとまだまだ厳しそうですね。
外国人の親が増えているイギリスの代表からは「外国人ママたち自身がボランティアとしてホームスタート活動に参加していくことが重要」という先をいく先輩国としてのアドバイスもありました。
元々私が現在のNPO支援のコンサルタントという仕事にたどり着いたはっきりとしたきっかけは大学のころの児童養護施設でのボランティア活動やボランティアコーディネート活動ですし、私のそうした活動の舞台であったのはつくば市です。今回こうしてつくばのNPOに関わる機会をいただいたことやつくばの地で個人的に思い入れの深い子育て支援の活動について改めて考えるきっかけをいただけたのは非常にありがたいことでした。
代表の前島さんを始め運営の皆さま本当にお疲れ様でした!