NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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クラウドファンディング・寄付キャンペーンの5つの注意点

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クラウドファンディング・寄付キャンペーンの5つの注意点

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事では『クラウドファンディング・寄付キャンペーンの5つの注意点』と題し、NPOのファンドレイジング施策として寄付キャンペーンを実施する際の注意点や施策立案する際に意識すべき点をお伝えします。

 

 

 

寄付キャンペーンは初めてのファンドレイジング施策に良い!しかし注意点もある

新型コロナウィルスの感染拡大の影響を非常に多くのNPOが受けています。ファンドレイジングについてもオフラインでの施策(対面でのイベントや街頭募金など)が制限を受ける中で、オンライン施策によるファンドレイジングを模索する団体も増えています。ファンドレイジングに関するコンサルティングのご依頼もオンライン対応やWebマーケティング・デジタルマーケティング戦略の策定をテーマにご依頼をいただくケースが増えています。

オンラインでのファンドレイジング施策と一口にいってもその種類はさまざまですが、特にここ最近目にする機会が増えているのが各種の寄付キャンペーンです。寄付キャンペーン自体についての解説やファンドレイジング施策としての特徴については先日公開した『今すぐ寄付すべき「理由」をつくる!寄付キャンペーンの意義』をお読みいただければと思いますが、具体的にはREADYFORやCAMPFIREなどのプラットフォームを活用したクラウドファンディングや、プラットフォームは使わずに自組織Webサイト内で展開する寄付キャンペーンなど様々ですし、キャンペーンの内容としても新規事業等のための資金を募る通常のクラウドファンディングだけでなく、団体の周年記念のキャンペーンや団体スタッフの誕生日を活用したバースデードネーションマンスリーサポーター(月額寄付者)を一定数募ることを目標に掲げて実施するキャンペーンなどその種類も多様です。

私自身もファンドレイジングのコンサルティング支援を行う際に、クラウドファンディングを始めとした寄付キャンペーンに伴走することもありますし、時にはキャンペーンの企画や実施をしてみてはどうかと団体側に施策として提案することもあります。特に組織として初めてファンドレイジングに力を入れていくような状況の団体には、施策としてマッチすることは多いと考えています。

団体として寄付を募っている、募っていくということを団体の内外に大きく打ち出すことにもなりますし、一定の目標に向かって様々なメディアや機会を活用しながら寄付依頼を行い、目標達成するというファンドレイジングの成功体験を団体として得ることができ、その後のファンドレイジングにはずみがつくからです。(さらに言えば、キャンペーン期間中には例えばSNS一つをとっても様々な投稿を試すので、施策の種類ややり方によってうまくいくものといかないものがあることや分析が必要なことまで一気に学ぶことができます)

ただし、寄付キャンペーンを企画・実施するにはいくつか意識すべき注意点もあります。多くの団体がファンドレイジングにチャレンジするようになったことは歓迎すべきことだと思いながらも、あまり望ましくないファンドレイジング施策が増えてしまうことは、団体にとっても寄付者にとっても良いことではないと思いますので、SNS等でキャンペーンを多くのキャンペーンを見かける中で注意していただきたい点をお伝えします。

最近寄付キャンペーンを実施した方やこれから企画しようと考えていらっしゃる方はぜひチェックしていただければ幸いです。

①寄付集めは団体の総力戦!

まず一点目は、ファンドレイジングはチームプレイであるということです。これは寄付キャンペーンに限った話ではなく、ファンドレイジング全般について言えることです。もちろん団体の中にファンドレイジングを担当する方や部門が存在し、主な施策の担当者が明確に決まっているということもあると思いますが、意識として団体全体でファンドレイジングに取り組むという共通認識を持てているかどうかで、ファンドレイジングの成果が変わってくることは少なくありません。(ですので私に団体内ファンドレイジング研修会をご依頼いただく場合は、ファンドレイジング担当以外の方も含めなるべく団体内の多くの関係者に受けていただくことをお願いすることが多いです)

特に、寄付キャンペーンにおいてはチームプレイ、総力戦という点はキャンペーンの成否に大きく影響します。

先日の記事で示した寄付キャンペーンの定義は以下のものでした。

一定期間において、
“特定の寄付金額目標”の下で、
多様なメディアを介して、
組織的に人々に働きかける一連の活動

この定義の文言にも入っている通り寄付キャンペーンは「組織的に人々に働きかける」ものです。先日の記事でお伝えした通り、潜在支援者に寄付の意思決定をしてもらうためには「寄付したい」と思えるだけの理由が必要で、寄付キャンペーンはその理由を積極的に作りにいくという特徴を持つものでした。期間限定で、特定の目的のために、みんなが盛り上がっているからこそ「私も寄付しようかな」と思えるようになるということですね。この「盛り上がり」というのが重要で、当の団体側が盛り上がっていたり、頑張っていたりする雰囲気や熱意が伝わらなければ、「寄付したい」と思わせることはできないでしょう。

キャンペーン期間中には寄付の呼びかけ(メールやメッセンジャーなどでの寄付依頼、SNS投稿・シェアなど)をあの手この手で実施していくことになると思います。単純に多くのスタッフが参加し分担しながら実施をすることも有効ですし、盛り上がり感・お祭り感の演出としてSNSに多くのスタッフが参加の動画や画像が投稿されている方が楽しさは伝わりますし、そうした盛り上げ感を演出する施策はファンドレイジング担当者一人だけに丸投げするよりもみんなで考えた方が確実に良い企画が出てきます。

「そもそも本来の事業が忙しく、その継続が危ぶまれているから寄付を募る必要があるのにそんなに人手や手間をかけられない!」という気持ちも非常によく分かりますが、寄付を募り、多くの方に応援をしてもらう経験はきっと本来の事業の力にもなります。みんなで盛り上げて期間限定のお祭りを楽しみましょう。

②やりっぱなしにしない!

二つ目の注意点は「やりっぱなしにしない!」です。これもファンドレイジングとしてはある意味当たり前の話ですが、特に団体として初めてファンドレイジングを実施する場合にはご注意ください。寄付はいただいて終わりではありません。寄付をいただくことから寄付者としての関係がスタートするのです。寄付をいただいたら「ありがとうございます」と「お礼」を伝えることや、いただいた寄付を活用して事業・活動を実施したら、その寄付金の使途やそれによる成果を「ご報告」することなど、寄付者コミュニケーションの方法や内容、タイミングなどを丁寧に検討しましょう。

クラウドファンディングプラットフォームを活用して寄付キャンペーンを実施する場合はリターン品(返礼品)と合わせて事前に検討できている(プラットフォーム側から検討するようサポートが入る)ことが多いと思いますが、自組織で実施している場合やプラットフォーム側からのフォローがない場合もあるかと思います。できればキャンペーンの企画段階で事前に検討しておくことが望ましいですが、キャンペーンが終わってからでも遅くはありません。しっかりと設計しましょう。

また、キャンペーンとしてWebサイトやSNSで大体的に告知をしている場合が多いと思いますので、全体としての告知も当たり前ですが必要です。キャンペーン終了や目標達成を告知することはもちろんのこと、いただいた寄付を使ってプロジェクト(事業)の進捗があった場合や成果が出た場合など、全体での告知と、ひとりひとりの寄付者へのコミュニケーションをどのように行っていくのか、検討することが必要です。

③キャンペーンは一度きりで終わらせない!

三つ目は「キャンペーンは一度きりで終わらせない!」です。二つ目の「やりっぱなしにしない!」と表現は似ていますが、寄付者コミュニケーションの話ではなく、団体のファンドレイジング施策としての話です。

初めてのファンドレイジング施策として寄付キャンペーンにチャレンジして1ヶ月〜2ヶ月を駆け抜けることは団体として大きなパワーを必要とします。準備期間や終了後のコミュニケーションなども含めれば数カ月間に渡った施策となることも少なくありませんし、前述の通り寄付キャンペーンはお祭り感がある特別な施策です。終了後には達成感があると思います。ただし、そこで満足しきったり燃え尽きてしまってはいけません。

たとえキャンペーンが目標達成して資金調達に成功していたとしても、それで団体としてのビジョンが実現されるわけではないはずです。その後も事業・活動は継続・発展させる必要がありますし、資金調達は続けていく必要があります。キャンペーンが終了した後のファンドレイジングをどのように行っていくのかを考えましょう

キャンペーン終了後は、定常的に寄付を募っていくために、SNS等での寄付依頼に関する投稿を定期的に行う
次は◯◯の時期に寄付キャンペーンを実施する

といったような形です。寄付キャンペーンは単純に資金が集まるということだけでなく、キャンペーン期間を通してさまざまなメディアを活用して呼びかけを行うことで、注目が集まったり、認知が高まったりする効果もあります。その勢いをその後のファンドレイジングにも活かしていけると良いですね。

④新たに団体のことを知ってくれる人を増やす!

四つ目は「新たに団体のことを知ってくれる人を増やす!」です。三つ目の注意点「キャンペーンは一度きりで終わらせない!」に続く話となります。寄付キャンペーンはできれば一度きりではなく、半年に一度や年に一度など団体の定期的なファンドレイジングイベントとして盛り込んでいけるとよりファンドレイジング成果は大きくしやすいといえます。

ただし、その際に注意をしないといけないのがこの四つ目の注意点です。前回の記事で解説した通り寄付キャンペーンは、ステークホルダーピラミッドの下の方に位置する潜在支援者層に一斉に寄付する理由・きっかけを提供するという性質のものです。実施した寄付キャンペーンで多くの潜在支援者の方が寄付してくれたとしたら、ステークホルダーピラミッドはピラミッド構造ではなくなっていきます。そのままの状態で次の寄付キャンペーンを企画しても、新たな寄付者の獲得にはつなげにくいということです。

ですので、次の寄付キャンペーンを再び効果的なものにするためには、キャンペーンを実施していない期間にいかに団体の認知を高めることができるか、つまり広報活動をしっかり行い潜在支援者層を増やすことが大切です。ここでいう広報活動は必ずしもメディアへの掲載を求めるようなPR活動だけでなく、通常の活動の中での地域社会の方との出会いを一つ一つ大切にしていくということも含みます。そうした普段の関係性の積み上げがあるからこそ、寄付のきっかけを提供するという寄付キャンペーンが効果的になるのです。

⑤寄付疲れを起こさせない

最後の注意点は「寄付疲れを起こさせない」です。これは三つ目の「キャンペーンは一度きりで終わらせない!」とは逆に、寄付キャンペーンの資金調達成果の強力さに注目して、何度も寄付キャンペーンを企画するようになった団体の方に注意していただきたい点です。寄付キャンペーンはファンドレイジング施策として非常に強力な施策ではありますが、常にキャンペーンばかりを実施すれば良いというものではありません

四つ目の注意点でも解説した通り、新たな潜在的な支援者を増やすことができていなければ、同じステークホルダーに延々と寄付のお願いをし続けることになります。もちろん、一人の寄付者の方に一度寄付していただいたら終わりなのではなく、ビジョン実現に向けて一緒に歩んでもらえるよう、団体として次にチャレンジしたいことを示しながら何度も寄付者としての応援をしていただけるように(ステークホルダーピラミッドを徐々に登って社会参加を高めてもらえるように)コミュニケーションしていくことは非常に重要ですし、それはファンドレイジングの本質的な部分でもありますが、とはいえ、私たち一人ひとりの市民が寄付することのできる金額には限度があります。短期間に何度も何度もキャンペーンが展開されると「もう寄付できないよ」と寄付者の方が寄付疲れを起こしてしまう場合もあります。

そもそも短期間に何度も寄付キャンペーンが展開される場合、以前の寄付キャンペーンの名目になっていたプロジェクトがまだ実施中であったり事業成果が出ていなかったりする場合もあります。そうすると金銭的な限度ということだけでなく「寄付のお願いばかりしてくるけど、前にした寄付はどうなったのだろう…?」と不信感を与えてしまう場合もあります。

夏季募金・冬季募金といった形で定期的に寄付キャンペーンを企画している団体も多くありますが、寄付キャンペーンの開催は年1回から多くても最大3回までにするのが目安です。それ以上の資金調達についてはキャンペーン以外の施策を企画するようにしましょう。


以上、いかがでしたでしょうか。

本記事は主に寄付キャンペーンを初めて実施した方やこれから実施する方など、ファンドレイジングにまだ慣れていない団体の方を想定して注意点をまとめてみましたが、ファンドレイジングにある程度慣れている団体の方でも改めて自組織のファンドレイジングに見直すべき点がないか振り返っていただけると幸いです。良いファンドレイジング施策による良い寄付体験が増えていくことが、社会全体としての課題解決スピードを増していくことになると考えていますので、少しでもファンドレイジング担当の方の参考になれば嬉しいです。

 

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