NPOコンサルタント堤大介のブログ - 朝ぼらけタイガー

NPOなど公益組織のコンサルタント。NPO関連の話題の他、読んだ本のレビューなどを書きます。

Peer to Peerファンドレイジングとは?自ら50万円集めて考えたこと

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NPOコンサルタントの堤大介( @22mida )です。

コンサルタントとして様々な組織のご支援をさせていただく中で、やはりファンドレイジングに関わるご相談は一番多いです。

本日はファンドレイジングの施策として日本でも徐々に注目を集めているPeer to Peerファンドレイジングについて、自分自身の経験を踏まえてお伝えできればと思います。 

Peer to Peer(P2P)ファンドレイジングとは?

Peer to Peerファンドレイジングとは何でしょうか。

 「peer to peer」という言葉自体は「仲間同士の、同等の」というような意味を持つ言葉です。

 ではpeer to peerなファンドレイジングとは何かというと、組織主導で行う通常のファンドレイジングに対して、個人が主導して行われるファンドレイジングのこと。一個人が特定の組織のために周囲の友人・知人から寄付を募るファンドレイジングを行うことを指しています。

従来のファンドレイジング施策は多様であれど、いずれも組織が直接寄付者となるような個人へ支援依頼の働きかけを行って行うものでした。

これに対して、Peer to Peerのファンドレイジングでは自組織が直接行うファンドレイジングに加えて、団体が寄付を募るファンドレイザーを集め、そのファンドレイザーそれぞれが寄付者への働きかけを行うことで、寄付の間口を広げることが可能となります。

このPeer to Peerファンドレイジングにおいてファンドレイザーとして寄付を募る役割を果たすのは、必ずしもファンドレイザーを生業にしているプロの人ではありません。むしろ、一般の人が自分の身の回りの人から寄付を募る等身大の寄付の輪が広がっていくことがPeer to Peerファンドレイジングの魅力です。

Peer to Peerファンドレイジングは現在世界中のファンドレイジング施策において注目されています。アメリカでは数年前からオンラインで発生する寄付の1/3以上はPeer to Peerによるものだとする報告もあり、日本でも徐々に注目を集めてきています。

 

Peer to Peerファンドレイジングの種類

次に、Peer to Peerファンドレイジングにはどのような種類があるのか、具体的に紹介していきます。

 

チャリティランナー

まず、日本で最も馴染みあるのではないかと思われるのがチャリティランナー。東京マラソンや大阪マラソンのチャリティランナーが有名ですね。

指定されている団体から一つ寄付先の団体を選び、決められた額の寄付を集めることでマラソン大会への出走権を獲得できるという仕組みです。例えば東京マラソン2019のチャリティでは12月2日時点で、20団体22事業に対して総額5億8,000万円の寄付金が集まっています。(詳しくはこちらをご参照ください)

マラソンという大きなチャレンジをするということと合わせて、自分が応援するNPOや解決を望む社会課題に対する想いを表現しやすいのがチャリティランナーの特徴です。

※チャリティランナーとしての寄付金は自身で支払うこともできます。そのため、特に通常の出走権の倍率が高すぎてなかなか抽選にあたらない東京マラソンでは、寄付を募るのではなく自ら満額を投入する人が年々増えており、Peer to Peerのチャレンジをする方たちがそのチャレンジを楽しむ間もなく先着枠が締め切られているのではないかという懸念点もあります。


バースデードネーション

自身の誕生日をきっかけに立ち上げるファンドレイジングキャンペーンで、「自分への誕生日プレゼントをくれる代わりに、自分が応援しているNPOへの寄付を」呼びかけるというものです。Facebook等の実名制SNSでは誕生日祝いのやりとりは非常に盛り上がりますよね。その際にBirthday wishesと一緒に寄付を募るのがバースデードネーション。寄付をする側にとってみれば、その人が応援するNPOへの寄付で誕生日のお祝いができるというのは「その人が欲しい未来をプレゼントする」ことだとも言える素敵なPeer to Peerファンドレイジングです。


ウェディングドネーション

誕生日ではなく結婚というタイミングを使って実施するPeer to Peerファンドレイジングがウェディングドネーションです。結婚のタイミングにはご祝儀などお金を贈ることが習慣としてあるため、それを寄付に転用したり、合わせて寄付を募るということができます。
イギリスではロイヤルウェディングの際にウェディングドネーションの呼びかけが行われています。(詳しくはこちら→CNN.co.jp : ヘンリー王子とマークルさん、「結婚祝いの代わりに寄付を」


その他チャレンジ

上記以外でも何かしらの記念日をきっかけとしてPeer to Peerファンドレイジングのキャンペーンを立ち上げることや、あるいはマラソン以外の何かしらのチャレンジを掲げて挑戦するということもあります。むしろ、上記は代表的な事例ではありますが、Peer to Peerファンドレイジング自体は自由な発想でどんどんと広がっています。


私のPeer to Peerファンドレイジング歴

私自身もこれまでに2度Peer to Peerファンドレイジングを経験しました。

 

東京マラソンチャリティランナー

まず1つ目は東京マラソン2017でのチャリティランナーです。
チャリティランナーとしてチャレンジをした背景などは当時のブログにまとめています。

 

www.daisuketsutsumi.com

www.daisuketsutsumi.com

 結果としてはこのチャレンジで約12万円の寄付を集めることができました。
また、チャレンジを通じた目標として掲げていた「一人前の公益組織コンサルタントになる」についても今現在仕事を続けることができており、達成することができていると考えています。
(本チャレンジ中、唯一達成できなかったのがフルマラソン自体の目標タイムです。4時間切りを目指し、目標とするペースでは走れたものの、混雑により総走行距離が伸びてしまい4時間5分という非常に残念なタイムでのゴールとなりました。いま思い出しても悔しい…)


ウェディングドネーション

2度目のPeer to Peerは今年の3月末から4月にかけて実施したウェディングドネーションです。

実施の背景や報告については同じくブログにまとめています。

 

www.daisuketsutsumi.com

www.daisuketsutsumi.com

 

パートナーと一緒に取り組んだウェディングドネーションでは、40万円を超える寄付をいただくことができ、寄付先として指定していた2団体にそれぞれ20万円以上の寄付を送ることができました。

寄付先の一つの団体では私たちの寄付の使い途の現場を明示してくださり、私自身もその現場を見学する機会をいただきました!その報告はまた別途書きたいと思っています。

 

Peer to Peerファンドレイジングの意義

Peer to peerファンドレイジングにはどのような意義があるでしょうか?

ファンドレイジングキャンペーンを立ち上げる個人にとっては、自分が寄付をするだけでなく寄付を募る側に回ることで団体に対してより力強い応援することができるという点がもっとも大きいと思います。

また、自分自身が矢面に立って寄付を募り、自分の想いに共感してもらったり応援してもらったりするという経験は、自分で寄付をするときとはまったく違う嬉しさがあり、普段自分が行なっていた寄付という行為がどれだけNPOを力づけていたのかが良くわかります。

NPO側にとっても大きな意義があるのですが、少し話が長くなるのでこの点は記事を分けて別途書きたいと思います。

 

Peer to Peerファンドレイジングの集め方

Peer to Peerファンドレイジングを立ち上げたらどのように寄付を集めていけば良いでしょうか?

ここでは自分自身が実際に寄付集めを経験する中で意識したいくつかのポイントを紹介します。

 

①キャンペーンページを作成する

キャンペーンページには多くの場合タイトルと本文を記載することができます。

タイトルには「バースデードネーション」というキーワードを入れるなど「寄付集めのキャンペーンであること」が何らかの形で伝わるようにしておくことがオススメです。

本文に書いた方が良いのは次のような要素です。

  • Peer to Peerファンドレイジングとは何かの説明(「バースデードネーションとは?」「チャリティランナーとは?」)
  • なぜキャンペーンを立ち上げようと思ったかの背景
  • 寄付先決定の理由(団体を応援している理由、団体との出会い・きっかけなど)
  • 最後に一言(「寄付をお願いします!」) 

②まずは自分で寄付する

キャンペーンページを立ち上げたら少額でも構わないので、まずは自分自身で寄付をしましょう。

多くのサービスでは寄付時にコメントを応援コメント(サービスによっては写真・画像も)を入れることができます。寄付者がページを訪れたときにいくらかでも寄付が入っている方が参加のハードルは下がりますし、コメントが入るイメージが伝わると自分も応援コメントをいれたいと思ってくださる方もいます。

 

③SNSで発信する

自分で寄付をしたらFacebookやTwitterなど自身が使っているSNSで発信をしましょう。

残念ながら多くの寄付プラットフォームは掲載しただけで寄付が集まるものではありません(寄付プラットフォームに限りません。楽天市場などE-Commerceのプラットフォーム等でも掲載しただけで売れるわけではありません)

何よりPeer to Peerファンドレイジングの強みは、寄付を募るファンドレイザーの身の回りの友人・知人からの共感をとても得やすいということですので、積極的にSNSを活用しましょう。Facebookのようにある程度文字数を投稿できるSNSであれば、キャンペーンページ本文に書いたような実施の背景を改めて記載して伝えていくと良いでしょう。

 

④お礼コメントは必ず返す

寄付をしてくれた方はコメントをしてくださることが多いです。お礼コメントは必ず返しましょう。

寄付をしてもらったらお礼をするという当たり前のことをやることはお互いの気持の上でも大切ですし、キャンペーンをより盛り上げていくためにも重要です。本人からのコメントがすぐに(何日分も放置されずに)返ってきている温かいやりとりを見ると、後からページを訪れた人にも「自分も!」と思ってもらいやすくなります。

また、コメントは寄付決済時に入力するプラットフォーム側に溜まっていくものと、SNSでの投稿自体へのコメントの両方がありますので、どちらもチェックしてこまめにコメントを返しましょう。

細かなテクニックですが、プラットフォーム側にコメントをいただいた人の中でSNSでつながっている人がいる場合には、SNSの方でもメンション(orタグ付け)しつつお礼コメントをお返しすると投稿自体のリーチが伸びやすくなります。

 

⑤SNSにはこまめに何度も発信する

Peer to Peerファンドレイジングは数日間から1ヶ月程度の期間をかけて実施していくことが多いかと思います。SNSの投稿はどうしても流れていってしまいますので、期間中に何度か行っていくのがオススメです。何度か投稿することによって「あとで寄付しよう」と思ってくださっていた方にリマインドしていくこともできます。

発信の回数を重ねる際は、同じような内容で投稿し続けるのではなく、寄付額の推移を伝えたり、関連するニュースを紹介したり、応援する団体のことを紹介したり、キャンペーンを実施しながら嬉しかったことを伝えたり(私はチャリティランナーの寄付集めをしているときに、小学校時代にブラジルに転校した友達と20年ぶりに再会し、寄付をもらうというとても素敵な経験をしました)と、いろいろと角度を変えながら投稿していくことがオススメです。

また、④でSNSにプラットフォーム側に集まったコメントにSNS上でもお礼コメントを書くという方法を紹介しましたが、特にFacebookの場合はお礼コメントを記載する投稿は一つにまとめた方が良いです。Facebookの仕様上、コメントが多くつく投稿は表示の優先度が上がるのでよりリーチが伸びやすいです。

 

⑥メールやLINE、電話などSNS以外も駆使する

ここまで主にSNSでの話をしてきました。Peer to PeerファンドレイジングはSNSとの相性がとても良いです。

ただ、SNSだけで終わらせてしまうのはもったいないです。SNSはあまり使わない友人にはそれぞれの関係性や距離感に合わせて、メールやLINE、電話などを適切に選択していきましょう。

また、伝える内容も相手に合わせて変えていく方が良いです。

例えば私の場合、Facebookでつながっている方たちは仕事柄NPO界隈の方がとても多いので、団体を応援する理由などは自身の社会課題に対する思いなどと絡めて説明して多くの方に共感いただきました。

一方で地元の友人たちは必ずしもNPOや社会課題といったキーワードにピンとくるわけではないので、「東京マラソンにエントリーするため(チャリティランナー)」「結婚を祝って欲しい(ウェディングドネーション)」といった形で相手が共感してくれそうなポイントに合わせて連絡をすることを意識していました。

 

⑦オフラインの対面の場も積極的に活用する

最後はオフラインの場の活用です。⑥の相手に合わせた伝え方をしていくということの延長でもあります。目上の方や特に親しい友人には直接近況報告を兼ねて会いに行き、その際に寄付のお願いをするということもやっていました。

また、仕事でお会いする方たちにも可能であればファンドレイジングを実施していることをお伝えし、寄付をお願いしました。

直接お会いした方に寄付をお願いする場合のコツはなるべくその場で寄付をしていただくということです。その場で操作方法を教えながら決済をしていただいたり、それが難しい場合には直接手渡しでいただくこともありました。(相手のご希望でのし袋入りで手渡しでいただくことも多かったです)

手渡しで寄付を受け取った際には、後ほど自分で代理で寄付を行い、やはりSNSでつながっている場合にはお礼コメントを送っていました。

 

以上、いくつか細かなポイントや具体的な話も交えつつ紹介しましたがいかがでしょうか。

 

クラウドファンディングとの共通点

上記のポイントは基本的にはクラウドファンディングを実施する際のポイントと共通している部分が多いです。同じオンラインの仕組みを使ったファンドレイジングキャンペーンなので共通して効果のあることが多いといえます。

そして、もっと言えば団体が行うステークホルダーピラミッドを活用したファンドレイジング戦略とも考え方は同じです。

相手との関係性に応じて、SNSが良いのか、LINEでの個別連絡が良いのか、対面でお願いした方が良いのかを見極めて働けかけの方法やタイミングを考えていくという基本的なことを積み上げていくというのはファンドレイジングの主体が個人であれ団体であれ重要だということですね。

特に対面、オフラインの場をしっかり活用するのは、オンラインを使ったキャンペーンだからこそ忘れてしまいがちですが、とてもおススメです。

どこまで力を入れてPeer to Peerファンドレイジングを実施するかは人によって様々だと思いますが、目標金額を定めてしっかり実施したい場合には上記のようなことも参考にしてみてください。

特にファンドレイザー等、NPO支援を仕事にしている方、あるいはこれから仕事にしていきたい方は、まず自分自身で目標金額を定めて寄付を募ってみるという経験を積むことを激しくオススメします。

自分自身が矢面に立って寄付を募るという経験はファンドレイザーとしての精神面、心構えを整えてくれますし、目標金額を達成するためにしっかりと自身のステークホルダーを分析した上で戦略を立てることで、ファンドレイザーとして知識や技術が実践を伴った実践知になります。


Peer to Peerファンドレイジングの始め方

Peer to Peerファンドレイジングを始めるには以下のようなサービスを活用することがおススメです。

Syncable

いきなり自社サービスの紹介で恐縮ですが、私が籍を置く会社で運営するファンドレイジングプラットフォームSyncableでは登録されている団体から応援したい団体を選んでPeer to Peerファンドレイジングを実施することができます。バースデードネーションの他、自由なテーマでのキャンペーン作成も可能です。

syncable.biz

JapanGiving

私の知る限り日本で初めてPeer to Peerのサービスを提供したサービスです。掲載されているプロジェクト(JapanGivingはクラウドファンディングサービスでもあるためプロジェクトへの応援、という形が取られています)から応援したいものを選んだ上で、自由なテーマでPeer to Peerファンドレイジングを開始することができます。

japangiving.jp

FRIENDonation(フレンドネーション)| 日本ユニセフ協会

日本ユニセフでは独自にPeer to Peerファンドレイジングのための専用サイトを作成しています。ユニセフに限らずグローバルに活動する大手NGOでは独自サイトの作成も少なくないのですが、ユニセフはいち早く日本語サイトも公開しており力を入れています。記念日等で実施するCelebrationと、マラソン等のチャレンジで実施するChallengeから選択してキャンペーンを立ち上げることができます。

friendonation.jp

polca

Peer to Peerファンドレイジング用のサービスではありませんが、polcaを活用した事例も良く見かけます。polcaは個人が自由にミニクラウドファンディングキャンペーンを立ち上げることができるサービスで、寄付先を明示することでPeer to Peerファンドレイジングキャンペーンを実施することが可能です。私自身のウェディングドネーションはpolcaを活用しました。

polcaは使い勝手が良く気軽に実施できるのが強みですが、ファンドレイジング専用サービスでないため「お金の受取手が一度実施者本人となり、終了後に自分で団体への寄付を行う必要がある(そのため団体側目線では個別の寄付者が誰だったのかは分からない。寄付者目線では支援先が寄付控除対象団体だったとしても団体から領収書の発行などを受けることはできない) 」等注意が必要な点もあります。

polca.jp

東京マラソン

指定されている寄付先団体・事業から一つを選んでその団体への寄付を10万円集めた先着で3000名には東京マラソンへの出走権が与えられるという仕組みです。毎年7月頃エントリーがスタートします。東京マラソン2018より、一般のエントリーよりチャリティランナーのエントリーのスタートが早く始まるようになったためチャリティランナー自体が大きく注目を集めることになりましたが、一方で前述の通りPeer to Peerファンドレイジングとしての意義は薄れているのではないかという懸念点もあります。

www.runwithheart.jp

大阪マラソン

東京マラソンと同じく、指定されている団体への寄付を集めると出走権を獲得できます。大阪マラソンでは目標金額は70000円に設定されています。東京、大阪どちらのチャリティランナーも経験した方のお話では東京マラソンよりもチャリティランナーへのホスピタリティがしっかりしており、何度もやりたくなるのが大阪マラソンのチャリティランナーだ、というお話を聞きました。

www.osaka-marathon.com

 

まずはSyncableやJapanGivingで実際に開催されているPeer to Peerファンドレイジングを見てみるとよりイメージが湧きます。また、自分が応援してみたい団体がないか上記のサービスで団体を探してみることもオススメです。

 

以上、本記事ではPeer to Peerファンドレイジングについて私自身の経験を踏まえて紹介してみました。

本記事を読んでPeer to Peerファンドレイジングにチャレンジしたいと考えてみる方や、自身で寄付集めの経験を積んでみようと思うファンドレイザーの方がいればありがたいですし、団体としてPeer to Peerファンドレイジングを考えていきたいというNPOの方がいれば嬉しいです。
(団体向けのPeer to Peerファンドレイジングに関する記事はまた別途書きたいと思っています)

 

せっかくの寄付月間です。みんなでPeer to Peerファンドレイジングをもっともっと広めていきましょう!