NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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マンスリーサポーター制度名称に宿る寄付者とのあるべき関係性①

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マンスリーサポーター制度名称に宿る寄付者とのあるべき関係性①

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事では「マンスリーサポーター制度名称に宿る支援者とのあるべき関係性」と題し、近年多くのNPOのファンドレイジング施策の柱となりつつあるマンスリーサポーター制度について考えていきます。現在すでに制度を持っており、サポーターを募っている団体の方にも、これからマンスリーサポーター制度を始めることを考えていらっしゃる団体の方にも、ぜひお読みいただけると幸いです。

 

 

 

マンスリーサポーター制度とは?なぜ今注目を集めているのか?

マンスリーサポーター制度はNPOのファンドレイジング施策としては中心的な施策となることも多く、非常に多くの団体が導入しているためご存じの方も多いと思いますが、簡単に概要をご説明します。

 

マンスリーサポーター制度とは?

マンスリーサポーターとは、その名のごとく「マンスリー」でNPOを「サポート」するための制度であり、日本語で分かりやすく言えば月額寄付会員制度のことです。毎月一定の金額を寄付し続ける制度であり、寄付者としては、毎月無理のない範囲で社会課題の解決に寄付を続けることができる制度です。

(従来からNPOにある会員制度との整合性を取って年会費会員を正会員、マンスリーの会員を賛助会員などのように定款上に明確に位置づけているケースや、特に既存の会員制度とは関連を持たせずまったく別個に制度運用しているケースなど様々ありますが、本記事は制度設計自体の細かい話に触れることが本筋ではないため割愛します)

 

注目される理由①財源としての安定性

マンスリーサポーター制度がファンドレイジングの施策として注目を集めている理由として最も大きなものは何と言っても財源としての安定性の高さです。すでに述べた通り月額の寄付制度ですので、寄付を受けるNPO側からすれば毎月一定額の収入が継続的に入ってくることになります。もちろん一人ひとりの毎月の金額は大きくないことが多いですので、事業・組織運営を安定させるだけの収入規模とするためには寄付者(サポーター)の数を集めることが必要であり、そのための施策実施にはそれなりの人的・金銭的コストがかかりますので、簡単で楽な財源という訳ではありません。

それでも、特に昨年は新型コロナウィルスの影響により通常の事業収入の目処が立たなくなってしまった団体や、寄付収入でもチャリティコンサートなどのイベントによる寄付を柱としていた団体は大きな打撃を受けることになってしまった一方で、マンスリーサポーターに支えられている団体は比較的安定した収入を得ることができておりました。もちろんサポーターの皆さまも新型コロナウィルスの影響は受けておりますので、やむなくサポーターを退会される方も各団体でいらっしゃったとは思いますが、財源の特徴として「安定性」という強みがあるという点は確かです。

 

注目される理由②マンスリー決済に対応した安価なNPO向け決済システムの普及

マンスリーサポーター制度が注目を集めている理由の2つ目は技術的な環境面が整ってきたということです。NPOとしてマンスリーサポーター制度を開始するためには、毎月の寄付決済(クレジットカード決済や銀行口座引き落とし)ができる決済システムを導入する必要があります。

こうしたシステム自体は以前から存在し、長年マンスリーサポーター制度を運営している団体も少なくありませんが、近年の変化として「安価で利用できるNPO向けシステム」が普及してきているという点が挙げられます。特にシステム利用料として初期費用や月額費用がかからず、決済手数料のみで利用できるシステムが複数登場したことが背景としてはとても大きいといえます。

この決済システム事情の変化というのは私のようにファンドレイジングを支援するコンサルタント(外部支援者としてのファンドレイザー)の視点で見ても非常に大きな変化で、以前であれば決済システムの導入決定には細かなシミュレーションが欠かせませんでした。下手をすると「システムを導入したは良いけれど、まったく寄付が集まらず、月額利用料ばかり取られるために返って赤字になってしまった」という事態になってしまうからです。それが今では、初期費用や月額費用なしで使えるシステムが増えたため、どんな団体であれ「とにかくまずは初めてみる」という意思決定が非常にしやすくなったといえます。(もちろん登録しただけで簡単に寄付が集まるものではないことは変わりはなく、だからこそファンドレイジングのコンサルティングが必要とされるのですが)

なお、決済システムの種類による特徴の違いや初めて導入する際の選び方などについては以前別の記事を書いておりますので興味がある方はぜひ以下の記事もお読みください。

 

www.daisuketsutsumi.com

 

コロナ禍との関連でいえば、ファンドレイジングにおいても対面を前提とした施策が打ちにくくインターネットの活用が中心となる団体が多い中で、決済システムを導入し、団体のWebサイトやSNSを通じて寄付やマンスリーサポーターへの入会を呼びかける体制を整えた団体も多くありました。また、クラウドファンディングのような形で一定期間に一定の目標人数を掲げてマンスリーサポーターを募るキャンペーンに取り組む団体も増えてきています。

 

寄付に力を入れるなら始めるべき!でも始める前に考えるべきことがある

ここまでをまとめると、マンスリーサポーター制度は寄付財源として安定した収入につながり得る可能性を持っており、環境的にも始めやすい状況が整っている、ということになります。寄付に力を入れていきたいと考えていらっしゃる団体であれば寄付決済システムの導入やマンスリーサポーター制度の構築はぜひ検討していただければと思います。

ただし、マンスリーサポーター制度を始めるのであれば、サポーターを募り始める前にしっかりと考えるべきことがある(そして残念ながらそれを考えることなく始めてしまっている団体が少なくない)、というのが私が感じている課題意識であり今回の記事でお伝えしたいことです。

マンスリーサポーター制度を構築する際にNPOが考えるべきこと、それは「寄付者との関係性」です。「寄付者の関係性」とは少し抽象的な言い方ですが、これから募り始めるマンスリーサポーターというのは団体にとってあるいは受益者にとってどういう存在なのか、ということです。もちろんそれはマンスリーサポーターに限らず、寄付を募る上ではすべての寄付者に対して考えるべきことなのですが、これまで繰り返し述べてきた通り、マンスリーサポーターというのは毎月寄付し続ける存在であり、寄付者の中でも特に団体や団体のビジョンに対しての共感度が高い支援者であると言えます。だからこそ、支援者との関係は特に丁寧に考えてから募り始めるべきだと思いますし、マンスリーサポーターとはどのような存在であり、団体や受益者にどのような価値を提供するのか、ということが明確になっている程、新規のサポーター募集の情報発信も魅力的なものとなり、サポーター集めが成功しやすくなるはずです。

 

今回の一連の記事ではこの寄付者とのあるべき関係性が端的に表現されやすいものとしてマンスリーサポーターの制度名称から考えてみたいと思います。

次回は実際に複数の団体の事例を取り上げながら「寄付者との関係性を考える」ということを掘り下げていきます。

(第2回は1月22日に更新予定です)