NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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NPOがインターネットで寄付を受け付けるための3つの方法と選び方

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NPOがインターネットで寄付を受け付けるための3つの方法と選び方

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事では「インターネットで寄付を受け付けるための3つの方法と選び方」と題し、NPO法人等の非営利組織がインターネット上で寄付を募るための仕組みについて解説します。特に本記事で具体的に解説するのはクレジットカード決済による寄付を受け付ける環境を整える方法についてです。非営利組織のファンドレイジング支援に関わる中で非常によく聞かれる質問でもあります。ツール比較の記事などは他のWebメディア等で先行する記事があるので今回は単純なツール比較ではなく、Web上におけるファンドレイジング体制の整備を組織としてどのように位置づけていくのか、中長期の視点も踏まえながら検討していく観点からまとめていきたいと思います。

 

 

本記事の対象者

本記事は主に以下のような方を読者として想定しています。
 
  • NPO等の公益組織で特に個人向けのファンドレイジングを担当している方
  • 公益組織のファンドレイジングをサポートする立場にある方
 
なかでも特に、
 
  • これから自組織の団体Webサイトで寄付を募るための環境を整える必要がある
  • 自組織のインターネット上での寄付戦略について、ツールや環境面から見直す必要性を感じている
 
という課題を感じていらっしゃる方にはぜひ読んでいただければと思います。
 
 

あなたの組織にはインターネット上から寄付ができますか?

ファンドレイジングの手法や施策はインターネット上だけには限りません。チラシやダイレクトメールといった手法は今でも有効ですし、イベントなど実際に支援者と顔を合わせる場が持つ力もNPOにとっては非常に強力です。また、そもそも団体の支援者がどのようなターゲットなのかによっても採るべき施策はさまざまに変わってきます。
 
しかし、それでも年々インターネットの存在感は増しており、よほど特殊な事情がない限りはインターネットを無視することは得策ではありません。
 
2019年2月にジャストシステム社が発表した「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査~2018年総集編 【トレンド版】」では、「ニュースなどの情報収集に使うメディア(複数回答)」の設問において「テレビ」の70.9%を超え、「スマートフォンからのインターネットやアプリ」が75.7%と最も多い回答を集めました。年代別の調査においても10代から50代までが「テレビよりもスマートフォン」という結果が出ていますし、60代以上においてもその比率は上昇を続けています。また、スマートフォンやPCからの情報収集源として特に「SNS」を挙げる人も若い世代を中心に急激に増えています。今やインターネットはテレビよりも重要な情報源ともいえる時代になってきているようです。ほぼ一年前のデータとなりますが、おそらく2020年2月現在もこの状況が加速していることはあってもインターネット利用が退潮となっていることはないでしょう。
 
こうしたインターネット利用環境の変化の中でインターネット上から寄付ができる仕組みを整えることは、個人からの寄付・会費獲得によるファンドレイジングを意識するすべての非営利組織にとって重要性を増しているといえます。
 
あなたの組織のインターネット上での寄付受付状況はいかがでしょうか。
以下の2つのどちらかに当てはまる場合には、早急に見直しを図るべきでしょう。
 

①Webサイト上で寄付受付についての説明がなされていない

現在あなたの組織のWebサイトには寄付受付けに関する説明ページはきちんと用意できているでしょうか。
そもそも寄付受け付けや会員の募集について説明すらできていないとしたら問題外です。すぐに2020年度のやるべきことに追加して動き始めましょう。
 
「寄付受付についての説明」と一言にいっても幅はありますが、例えば「当団体は寄付は受け付けております。詳しくはお問い合わせくださいorお電話ください」などと一言書いてあるだけでは必要十分な説明とはいえません。少なくとも寄付をするつもりでWebサイトを訪れてくれた人に、どのような流れで寄付をすることができるのかを伝えられる情報は書きましょう。
 
Webサイトを見て、団体のことを詳しく知った人に、その上で寄付したいと思って欲しいと考えている場合にはさらに踏み込んだ情報が必要です。なぜ今寄付が必要なのか、いくらの寄付が必要なのか、寄付金を何に使い、どんな成果をもたらそうとしているのかとったことをしっかりと伝えられるようにしましょう。
 

②寄付受付について説明はされているが、寄付行為がWebサイト上で完結しない

Webサイト上に寄付に関しての説明ページを設置している場合でも、銀行口座の情報を記載しているのみであったり、申込書等のダウンロードをしなければならないなど、潜在寄付者が寄付を思い立った際にその場で寄付が完了できないと、「あとでやろう」と思っているうちに寄付をしようという気持ちがくじけてしまうことは少なくありません。特に前述のインターネット利用状況の調査からも分かる通り、この数年間でスマートフォンからインターネットを利用する方が急激に増えました。団体やWebサイトの特性によっても違いはありますが、半数以上の方がスマートフォンで見にきているということも珍しいことではなくなってきました。スマートフォンはPCよりも気軽に見に来てもらえる可能性がありますが、その分ちょっとしたことで「あとでやろう」と気持ちがくじけてしまいやすいため、「寄付をしよう」と思ってくれた方がその気持を持ったまますぐに寄付完了までたどり着けるような環境を整備しておく必要性はどんどん増しています
 

HPには寄付・決済の仕組みが必要

 
今回は寄付についての記事ですが、これはボランティアの受付やイベントの申込みなど他の申込みについても同様です。申込みをしたいと思ったときにそのまま決済や申込みの完了までストレスなく続けてもらえる環境が整っていないとしたら、途中で諦めてしまっている方がたくさんいるかもしれません。決済や申込みの仕組みをWebサイトに導入することには大きな投資を必要とする時代もありましたが、最近では各組織がやりたいことに合わせて気軽に導入できるサービスが多く提供されるようになってきました
 
 

インターネット上で寄付を受け付けるための3つの方法

ここからはNPO等の非営利組織がインターネット上で寄付を受け付ける環境を整える方法について解説します。具体的なサービス名も紹介しますが、それぞれのサービスの細かな特徴よりは現在NPOが利用できるたくさんのサービスをその特徴から大きく3つに分類し、自分たちの組織に合った方法を選ぶための観点についてお伝えできればと思います。3つの分類とは「クラウドファンディング」「寄付プラットフォーム」「決済システム」です。順に解説します。
 

インターネットで寄付を受け付けるための3つの方法の概要

 

クラウドファンディング

まずご紹介するのはクラウドファンディングです。この5年間程で営利・非営利を問わず認知や利用が広まってきました。クラウドファンディングとは、事業・活動に関わる何らかのプロジェクトのための必要経費をインターネット上で不特定多数の人(crowd 群衆)から募る仕組みのことで、ReadyforやCAMPFIREなど多くのサービスがあります。掲載されるプロジェクトの分野の傾向やサポート体制などサービス毎に特徴の違いはありますが、一定期間内に達成したい調達目標金額を定めて支援を募ることやその達成率がリアルタイムで更新されていくこと、SNS等でのシェアを促す仕組みが整っているなど、インターネット上で大きく人を巻き込んでいくことのできる可能性を持つのが特徴です。
 
クラウドファンディングは各サービスの提供元のサイト上にページが公開されるため、自組織のWebサイトの改修などを行う必要はなく、実施しやすい手法ですが、その分手数料がかかります。クラウドファンディングには実施方法にいくつかの種類があり、資金提供のリターンとして事業や組織に関連する物品を送る購入型と呼ばれる方法もあります。購入型で実施する場合、リターン品の内容によっては対価性ありとして、寄付収入ではなく事業収入とみなされる場合もあるなど注意が必要な点もあります(認定NPO法人を目指す場合、パブリックサポートテストの対象とはみなされなくなります)。また、そもそも多くのクラウドファンディングサービスでは開始前にサービス運営会社によるプロジェクト内容の審査があり、必ずしもすべてのプロジェクトが公開されるわけではありません。
 
そして、ファンドレイジング戦略上で注意しなければならないのは、クラウドファンディングは原則的に期間限定のキャンペーンとなりますので、長期的・継続的に寄付を受け付けるという目的とは合わない部分があります。新規事業のための初期費用の調達などまとまった資金(や支援者)が必要な場合に適した手法といえます。
 
代表的なサービス:Readyfor、CAMPFIRE、A-portなど
 
クラウドファンディングサービスを選ぶ視点例:
  • 集めたい資金は短期的なものか(新規事業の初期費用など)
  • 該当サービスに過去に類似したプロジェクトの実施事例があるか
  • 手数料はいくらか
  • サービス側のサポート体制はどの程度あるか
  • 寄付者情報は入手することができるか(継続的な支援者コミュニケーションができるか)
 
 

寄付プラットフォーム

続いて紹介するのは期間限定のプロジェクトへの寄付を募るクラウドファンディングに対して、常設で継続的に自組織への寄付を募ることができる寄付プラットフォームです。分かりやすくいえば寄付における楽天市場のようなもの、です。楽天市場というプラットフォーム上に出店しているたくさんの店舗が、店舗それぞれのページを持っているように、寄付プラットフォーム上には自組織以外にも様々な分野の非営利組織が掲載されています。寄付者目線ではたくさんの団体の中から自分の関心に合った団体を見つけることができることになるため、サービスによっては分野や地域による検索から自組織を発見してもらえる場合もあります。
 
寄付プラットフォームでは、クラウドファンディングのように使途を特定のプロジェクトに限定することなく自組織の活動全般のための資金を継続的に募っていくことが可能です。継続的に寄付を募ることができることは2つの意味があります。まずひとつ目は常に寄付の窓口が開かれていることで、潜在的な寄付者を逃すことがないということです。そして二つ目は、一人の寄付者から継続的に寄付をしてもらうことができること、つまりマンスリーサポーター等の継続寄付を受け付けることができます。寄付に特化したプラットフォームでは正会員と賛助会員など、NPOならではの会員制度にも対応した機能が用意されているものもあります。
 
導入に際してはクラウドファンディングと同様、自組織のWebサイトの大規模な改修を行う必要はありません。寄付プラットフォーム上の団体ページの作成や団体ページへのリンクを設置するなどの作業は発生しますが、プログラミングなどの高度なIT知識・技術はなくとも導入することが可能です。自組織に対しての継続的な寄付受付けの仕組みという点では次項で解説する「決済システム」と同じですが、導入・維持していくために必要な技術水準が低く、また初期費用や利用料等のコストも低い場合が多いです。一方で機能やデザインなどはプラットフォーム側に依存するため自組織の思い通りにならない点もあります。
 
代表的なサービス:Yahoo!ネット募金、CANPAN決済、Syncable、GiveOneなど
 
寄付プラットフォームを選ぶ視点例:
  • 初期費用、月額利用料はかかるか
  • 決済手数料はいくらか
  • クレジットカードブランドの対応ブランドは何か
  • 銀行振込などクレジットカード以外の決済手段は必要か
  • マンスリーサポーター、年会費など自組織に必要な寄付メニューをもれなく作成できるか
  • 寄付金額を自由に設定することができるか
  • プラットフォーム側からの流入で発生する寄付がどの程度期待できるか
  • 審査や利用開始までにどの程度の時間がかかりそうか
 

決済システム

最後にご紹介するのは自組織のWebサイトに独自に導入する決済システムです。期間限定ではなく継続的に寄付を受け付けることができ、マンスリーサポーター等の継続寄付を募ることもできるなど寄付プラットフォームと共通している点も多いですが、自組織のWebサイトの中に専用の決済フォームを設置することができ、デザインなども含め自組織の戦略に合わせたファンドレイジングを一番やりやすいのがこの方法です。インターネット上でのファンドレイジングに力を入れている団体の多くは決済システムを導入しています。
 
プログラミング等の技術的なノウハウが必要なこと(制作会社等に依頼することもできるため必ずしも自組織内に技術者が必要な訳ではありません)や、維持や管理に必要な技術的・金銭的コストも比較的高くなるなど、導入に際してのハードルは高いですが、その分自組織のWebサイト内で寄付が完結するため寄付の申し込み手続きの完了率も高くなりやすいといえます。(寄付プラットフォームの場合には、実際に寄付の決済をするのはプラットフォーム上となるため自組織から寄付プラットフォームへのリンクを設置して移動してもらう必要があります。つまり寄付者の側から見ると「団体のWebサイトから外部のサイトに移動した」と見えます)また、寄付に関するデータや寄付者の情報も十分に活用できるため、戦略的にデジタルファンドレイジングを実施していく場合には最も適した手法です。
 
代表的なサービス:Robot Payment、GMOペイメント、Pay.jp、KIFTYなど
 
決済システムを選ぶ視点例:
  • 初期費用、月額利用料はいくらか
  • 決済手数料はいくらか
  • クレジットカードの対応ブランドは何か
  • 自社サイトとの連携方法にはどのような接続方式があるか(取得したいデータを取るための設計ができるか)
  • 導入に際してのサポートは充実しているか
  • 審査や利用開始までににどの程度の時間がかかりそうか
 
 

自組織はどの方法を選ぶべきか

ここまでNPO等の非営利組織がインターネット上で寄付を受け付けるための3つの方法についてそれぞれの特徴を解説してきました。それぞれ特徴が異なる手法ですが、これからインターネット上でのファンドレイジングに力を入れたい、と考えている場合どのように選択していけば良いでしょうか。
 
組織として何を優先するかによって、また中長期的にどの程度インターネット上でのファンドレイジングに力を入れたいと考えているかなどによって、選び方や組み合わせ方は様々ですが、これまでに私が相談を受けてきた中で多かったケースからオススメの選び方・組み合わせ方をいくつかご紹介します。
 
 

①「クラウドファンディング」の利用がオススメな団体

新規事業など特定の目的のために短期的に大きな金額の資金調達目標がある場合にはクラウドファンディングの利用がオススメです。ただし、上述の通りクラウドファンディングは期間限定のキャンペーンとなるため、クラウドファンディングが成功した後に支援者の方たちに継続的な支援者となってもらえるように、寄付プラットフォームの導入も合わせて準備を進めるのがオススメです。この場合には、なるべく初期費用や月額利用料などがかからない寄付プラットフォームを選ぶと良いでしょう。
 

②「寄付プラットフォーム」の利用がオススメな団体

なるべく早く、あまりコストをかけずにクレジットカード決済(インターネット上での寄付)を導入したいという団体は寄付プラットフォームの利用がオススメです。
また、中長期的にどの程度インターネット上でのファンドレイジングに力を入れるかまだ判断しきれない団体や、口座振替など多様な手法にどこまで対応すべきか判断がつかない場合にも、まずコストが安くクレジットカード決済のみに対応しているサービスをまずは試してみるのがオススメです。
 
実際にクレジットカード決済を導入してみて、寄付がどの程度集まるかや口座振替等クレジットカード決済以外への対応要望がどの程度あるか、ということが分かってからそれらに対応するために、他の寄付プラットフォームへ乗り換えることや決済システムを導入することを判断するのでも遅くはありません。(もちろんシステム乗り換えによるコストは団体側にも寄付者側も発生しますが、あまり中長期的な、不透明なコストを大きく見積もりすぎるよりはまずはミニマムにファンドレイジングのチャレンジを初めてみて、どの程度の投資やコスト負担ができるのかを実感をもって判断できるようになる方が良い場合が多いです)
 

③「決済システム」の導入がオススメな団体

中長期的にインターネット上でのファンドレイジングに力を入れていくことを組織として意思決定している場合には、独自に決済システムを導入することがオススメです。力を入れる、と少しざっくりとした書き方をしましたが、例えば、寄付ページからの寄付率を上げるためにページ上の内容やデザインを細かく改善するサイクルを継続的に回していくような場合や、広告投資をして寄付獲得を目指していくようなことを検討している場合です。裏を返せばこのようなことを実践したい、と短期的には考えていない(あるいは現時点では想像がつかない)場合には決済システムの導入は経済的あるいは技術的な観点からコストの方が上回ってしまう可能性があるため、慎重に判断しましょう。
 
 

最後に。仕組みを整えただけでは寄付は集まらない

本記事では「NPOがインターネットで寄付を受け付けるための3つの方法と選び方」と題し、各手法の特徴や比較をする際のポイントなどをご紹介してきました。これだけ寄付の仕組みを整えることが簡単になってきているにも関わらず、仕組みが整っているかどうかやそもそもその整え方を知っているかどうかだけで寄付集めの成否が分かれてしまうよりは、あくまでも活動の成果や寄付者とのコミュニケーションのあり方といった本質的な部分で各団体の健全な競争が行われる方が良いと考えております。一つでも多くの団体が自組織にあった手法でファンドレイジングにチャレンジしていけることを願っていますので、もし本記事を読んでも迷うようなことがあればお気軽にご相談ください。
 
そして、最後に大事なことをお伝えしておきます。本記事では寄付を受け付けるための環境の整え方を解説してきましたが、仕組みを整えるだけで自動的に寄付が集まることはありません。これはいずれの方法を選んだとしても、です。インターネット上の仕組みを使って、団体にとっても寄付者にとっても便利な方法を整えていくことは大切ですが、事業や活動を行い解決したい問題があること、そのために寄付が必要であることを、しっかりと支援者の方にお伝えしていくことはいずれにしても必要であり、NPOとしての義務の一つだとも思います。社会課題解決することと、支援者となる市民に課題を伝え一緒に立ち向かっていくことは、本質的には同じ活動の両輪であるはずです。インターネットという便利なツールを何でも解決してくれる魔法だとは思わず、そして難しいと投げ出してしまうのでもなく、真摯に丁寧に向き合っていただける団体が増えていくように、今後も情報提供や個別支援をこれからも続けていきたいと思います。