こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事では「ファンドレイジングとは何か?クラウドファンディングとの違い」と題し、二つの言葉の意味や基本的な考え方について解説します。ファンドレイジングに普段から関わっている方にとってはどちらも当たり前に使用している単語かと思いますが、私が全国さまざまな場所でファンドレイジング講座の講師を務めさせていただく際に、しばしばこの二つの単語の意味や違いについてご質問いただくことがあります。カタカナ用語に戸惑いがファンドレイジングに向き合うことのハードルになってしまうことも少なくありませんので、本記事で改めてご説明いたします。また、ファンドレイジングという言葉も実は非常に定義の広い概念ですので、何気ない会話の中ですれ違いが発生しないようにご自身の認識とのすり合わせをしながら読んでいただけると幸いです。
本記事の対象者
本記事は主に以下のような方を読者として想定しています。
- 「ファンドレイジング」「クラウドファンディング」という言葉に興味はあるけれど違いがよく分からない方
- 言葉はなんとなく知っているけれど改めて基本から理解したい方
ファンドレイジングやクラウドファンディングといった言葉に興味を持ちこれから知りたい方や改めて一から理解したい方を対象として、基本的な内容からご説明を行います。
また、NPO等の非営利組織に所属している方で、自組織においてファンドレイジングやクラウドファンディングに取り組んでいきたいと考えていらっしゃる方にも参考にしていただけるかと思います。
ファンドレイジングとは?
まずはファンドレイジングという言葉からご説明していきます。
ファンドレイジング(fundrasing)とは、直訳では「資金調達」と訳されます。では資金調達とは何かというと、NPO等の非営利組織あるいは企業等の営利組織において事業活動の継続や拡大に必要となる資金を調達すること、というのが最も基本的な理解です。営利組織が投資家や銀行等からの資金提供を受ける場合などの文脈で使われることもありますが、より一般的には非営利組織が個人あるいは法人、自治体や政府等から何らかの方法で事業・活動のための資金を集めることを指します。
以下では、非営利組織におけるファンドレイジングについてさらに詳しく解説します。
狭義のファンドレイジングと広義のファンドレイジング
ここまではファンドレイジングについてその日本語訳である「資金調達」という側面からその意味をご説明しました。では非営利組織が資金調達するにはどんな方法があるでしょうか。その方法には寄付金や会費、助成金、そして事業収入などさまざまなものがあります。そして実はファンドレイジングという言葉が指す意味合いもさまざまな資金調達方法のどこまでを含めるかによって狭義の捉え方から広義の捉え方まで幅があります。
以下はファンドレイジングが指す意味合い範囲を表した概念図です。
ファンドレイジングという言葉の定義のうち、最も狭義には寄付金集めのことのみを指します。ただ、この最も狭い定義で使われることはあまり多くはなく、会員からの会費や助成財団や企業等からの助成金、自治体や政府等からの補助金など寄付金以外の支援性の財源(組織の外部者が組織や事業活動の対象となる受益者を支援することを目的に提供される資金)をすべて含むより広い定義で使われることが一般的です。さらに最も広い定義では、支援性の財源だけではなく事業収入や融資、社会的投資、金利など非営利組織が行う資金獲得のための活動全般を含めることもあります。そして、こうした非営利組織の資金調達活動つまりファンドレイジングを担当する職種がファンドレイザーです。
NPO担当者はフレンドレイジングの理解を!
ファンドレイジングという言葉の定義上の意味合いについてはここまでの説明で概ね完了しています。ただ、もしあなたがNPO等の非営利組織で実際にファンドレイジングに関わる立場であるようでしたら、さらにお伝えしたい考え方があります。ここまでにご紹介した3つの定義よりもさらにその概念を広げた捉え方として「フレンドレイジング」と私は呼んでいます。
ファンドレイジングという言葉は英語では「fund raising」であり、この頭文字を取った「FR」という形で表記されることもあります。フレンドレイジングというのは、「Fund」と同じくFを頭文字とする単語「Friend」を使った造語であり、その意味するところは、資金調達という金銭的な側面だけに目を向けるのではなく、資金提供という形で共感を示してくれる方とのつながりをつくり広げていく「仲間(フレンド)づくり」の活動と捉え直すということです。
この言い換えは、単にポジティブなイメージを持たせるだけの言葉遊びではなく、ファンドレイジング活動の本質とは何かという点につながる考え方です。
ファンドレイジングは資金調達活動であるということをこれまで説明してきましたが、ではそもそも、私たち非営利組織が集めたいものは本当にお金そのものでしょうか。
非営利組織は資金調達活動において事業活動のための資金を募りますが、決してお金そのものを集めたい訳ではないはずです。お金そのものが目的なのではなく、調達した資金で事業を実施し、それによって受益者が抱える課題が解決されることをこそ望んでいらっしゃるのだと思います。そして社会課題を抱える受益者には経済的負担能力がないことなどから寄付金や会費、助成金といった支援性の財源の獲得を求められます。だとすると、特に支援性財源の獲得においては、その資金提供には資金の出し手である支援者が社会課題や受益者の状況に共感を示してくれることが重要な前提であり、ファンドレイジング活動を通して募るべきものは資金そのものというよりも、何よりもまず社会課題解決や非営利組織が掲げるビジョンの実現に一緒に共感・参加をしてくれる「仲間」であると考えることができます。
そしてFRをこのようにフレンドレイジング(仲間づくり)と捉え直すと、ファンドレイジングの定義はさらに広がっていきます。ビジョン実現に共感し「仲間」として参加をする方法は非常にたくさんあり、おカネによる参加はその一つでしかないからです。
どういうことかといいますと、
寄付という形で共感し参加をする仲間は「寄付者」
会費という形で共感し参加をする仲間は「会費」
といった形で資金面での支援者の呼び方がさまざまあるように、
おカネではなく時間を提供してくれる仲間は「ボランティア」
専門性を提供してくれる仲間は「プロボノ」
このように資金以外による支援者も仲間としての参加の方法の一つであるといえます。
さらに、
社会的なネットワークや信頼性などを提供する「理事」
自分の生活や人生の一部を使ってもビジョンの実現に参加をしたい「職員」
といった形で、組織に関わる自分たち自身もビジョン実現のための仲間の一人だと捉えることができます。
このように考えてくると、ファンドレイジングというのは単に資金集めをする活動ということではなく、ビジョン実現のためにさまざまな方法で参加してくれる仲間を、それぞれの人にあった方法で参加してもらうための活動全般であると非常に広く捉えることができます。
非営利組織が掲げるビジョンやミッションは非常に大きく、その実現にはおカネだけでなくさまざまな想いや能力をもったヒト、モノ、情報・ネットワークなどさまざまな経営資源が必要になります。ビジョン実現のために必要な資源をしっかりと棚卸しをし、必要な資源はおカネだけでなくヒトもモノもすべてファンドレイジングで集めていく対象ということができますし、その資金や資源の提供を促す際には、一方的に支援をしてもらうということではなく、ビジョンに共感し一緒にそのビジョン実現に参加をしてもらう仲間として捉えていくことが大切です。
このように捉えることができれば、本来の資金調達という意味に立ち返ったときにも単に「お金をください」ではなく、ビジョンに共感した「仲間になってください」という伝え方ができ、ファンドレイジング活動がより楽しくやりがいのあるものになるのではないでしょうか。
クラウドファンディングとは?
続いてクラウドファンディングという言葉について説明をしていきます。
クラウドファンディングとは、事業や活動に関わる何らかのプロジェクトのために必要となる経費をインターネット上で募る仕組みのことです。クラウドは「crowd 群衆」という意味の英単語で、インターネット上で不特定多数の人から寄付を募るというその特徴から名付けられています。
つまり、クラウドファンディングとはインターネット上の仕組みを使った資金調達手法の一種ですので、ファンドレイジングという言葉との関係ではファンドレイジングの具体的手法の一つがクラウドファンディングであるということができます。
なお、クラウドファンディングを始めとしてインターネット上で資金を募る手法の種類やその導入方法については以下の記事で詳しく解説していますので、具体的手法に興味のある方は以下の記事もぜひお読みください。
まとめ
以上、本記事では「ファンドレイジングとは何か?クラウドファンディングとの違い」と題して、ファンドレイジングとクラウドファンディングという言葉をそれぞれ解説しました。
本記事のまとめとして「ファンドレイジングとクラウドファンディングの違い」を整理すると以下のようになります。
ファンドレイジングとはNPO等の非営利組織が資金調達をすることの総称であり、また資金調達のための行為や施策そのもののことをいいます。一方でクラウドファンディングは、個人や団体が特定の目的のための必要資金をインターネット上の不特定多数から募る資金調達手法のことを指します。
つまりクラウドファンディングは、NPOのクラウドファンディング(資金調達)施策として、街頭募金や寄付つき商品などファンドレイジングの具体的手法の一つと位置づけることができるものであるということです。
ともに「ファンディング」という言葉を含むカタカナ用語であり、初めて聞いた方の中には混乱してしまう方もいらっしゃるかと思いますが、本記事を読んで整理していただけたら幸いです。