NPOコンサルタント堤大介のブログ│朝ぼらけタイガー

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キーワードは共感から応援へ?スマホで気軽な新世代の寄付サービス6選

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キーワードは共感から応援へ?スマホで気軽な新世代の寄付サービス6選

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本記事では「キーワードは共感から応援へ?スマホで気軽な新世代の寄付サービス6選」と題し、比較的最近登場した寄付サービスをご紹介します。今回紹介するのは6つのサービスです。

 

新世代の寄付サービス6選

本記事では6つの寄付サービスをご紹介します。寄付専用のサービスとして運営されているものの他、メインのサービスに付随する形で寄付機能が提供されているものもありますし、NPOやNGOが自組織の寄付拡大を目指して独自に開発しているものまでさまざまあります。なお、新世代の寄付サービスということでスマホ特化しているものばかりですので各サービスの画面についてはPCよりスマホでご確認いただいた方が良い点はご注意ください。

エイドル

aidl.me

まず1つ目は「エイドル」です。2022年の7月にリリースされたばかりの新しい寄付サービスです。

エイドルの一番の特徴は「トップサポーター」という制度。芸能人、起業家、アーティストなどさまざまなジャンルの著名人等がトップサポーターに就任し、先頭に立ってNPOへの支援の旗を振ってくれています。さらに各トップサポーターからは寄付者向けの特典(サインやグッズ、体験など)が提供されており、エイドルに掲載されているNPOのいずれかにサブスク寄付(月額の定額寄付)を申し込むと、抽選でトップサポーターの特典が当選する、という仕組みです。

面白いのはサブスク寄付の金額選択肢が50円、5,000円、50万円というかなり極端な3つに限定されていることです。どのNPOにどの金額で寄付をしても特典の当選確率は変わりませんが、寄付するNPOの数が2つであれば当選確率2倍、3つであれば3倍といった形で単純な寄付額よりも多くのNPO・社会課題に触れるきっかけをつくろうという設計思想があるようです。インフルエンサー等が旗振り役となってNPOへの支援を行い、それをきっかけにNPOや寄付に触れる方が新たに増えていくことは楽しみですね。

リリース後最初の初代トップサポーターはお笑いコンビEXITのりんたろー。さんで、2023年3月からは、キャプテン翼の作者高橋陽一先生率いるサッカークラブ南葛SCが就任しています。南葛SCからの特典はサインやグッズの他、高橋陽一先生と一緒に試合観戦する権利や選手からのビデオメッセージなど体験的な特典が複数用意されているのも面白い点ですし、今後どのようなトップサポーターが登場するのかも注目したいところです。リリース時にはトップサポーターは毎月変わると記載されていたのですが、現状はもう少しゆったりしたペースで交代されているようです。現在の南葛SCさんでは寄付先のNPOの一つとの対談イベントが企画されたりもしており、単純な寄付だけではない企画を仕掛けていったり、寄付者からの反応も含めて盛り上げを作っていくことを期待したいので、3ヶ月ぐらいは就任期間があると良いのかなと感じます。また、今後寄付者が増えていった際には、寄付先NPOからのお礼や活動報告など著名人への共感から寄付した人のNPOや社会課題への関心をさらに高めていくような工夫をサービスとして作っていってくれるのかなどは期待したいポイントです。

Pay it Forward Project(ペイフォワードプロジェクト)

pf-project.jp

2つ目にご紹介するのは2023年3月29日にサービス開始されたばかりのPay it Forward Project(ペイフォワードプロジェクト)です。

サービス名に冠されている、Pay it Forwordとは直訳すると「先に払う」という意味になりますが、自分が受けた善意を直接お礼や恩返しをするのではなく別の誰かに善意を渡すことで、善意の輪をつないでいくという考え方です。

使われ方の想定として、サービスページ上では次のような例が記載されています。

●カフェでごちそうしてもらったとき
●プレゼントやお祝いをもらったとき
●仕事を手伝ってもらったとき
●日頃の感謝を伝えたいとき

このように日常生活で、知人や友人に対して何かちょっとした感謝を示したいときに本サービス上で寄付を行うと「ペイフォワードカード」をSNS等を通してシェアできるようになっています。

このペイフォワードカードが本サービスの中心で、さまざまなクリエイターが書き下ろした様々なデザインのカードの中から選ぶことを楽しんでもらうような狙いになっているようです。

また、まだサービス開始して間もないのでサービスページ上ではあまり大きく表現されていませんが、自分がシェアをしたペイフォワードカードをきっかけに寄付が広がっていくこと、つながっていくことを「寄付のバトン」と表現したり、そのつながりが実際にどの程度の影響力をもったのか(自分をきっかけにいくらの寄付が発生したのか)を可視化するといった機能も用意されており、全体的に寄付という行為のイメージ自体をポジティブなものにしていきたいという狙いが感じられます。

solio

solio.me

3つ目にご紹介するのは「ジャンルを選んで寄付をする、ソーシャルポートフォリオサービス」を謳うsolioです。サービス開始は2020年なので今回ご紹介するものの中では「メルカリ寄付」と並んで最も長く運営されています。

solioは言うなれば寄付版の投資信託といったイメージのサービスです。ユーザーは「国際協力」「子どもの教育」「人権保護」「動物保護」など12のジャンルの中から自分が寄付したいと思うジャンルを一つ以上選択します。あとは毎月の寄付金額と各ジャンルへの配分割合を決定すれば自分の「ソーシャルポートフォリオ」が完成します。

寄付の経験がなかったり、NPO/NGOに詳しくない人からよく聞く悩みとして「どこに寄付すれば良いのかわからない」「どこが信頼できる寄付先なのかわからない」というものがありますが、solioではこうした初心者の悩みになってしまう部分をサービス側が肩代わりしており、気軽にまずは考えやすい切り口(関心のある社会課題を選ぶ)だけを考えて寄付を始めることができます。

solioが他のサービスと違うところはサービス自体の特徴や機能面だけでなく、運営する側の組織の面にもあります。solioの代表は若者支援を行うNPO法人であるDxP(ディーピー)の代表を務めている今井紀明さんです。実際に寄付側のNPOを経営している方が運営に関わる寄付サービスというのは面白いですよね。今井さんの目線からの情報発信もなされているのも良い点です。

note.com

solioはポートフォリオを謳っているだけあって、自分が支援している分野の割合グラフや累計の寄付額などのデータが可視化されたり、ポートフォリオを公開・シェアしたり(金額は公開されず、シェアされるのは分野の割合グラフ)といった面も力を入れているようなのですが、この辺りは寄付者の人数や金額が増えてデータが集まれば集まるほど面白いはずなので(分野ごとの詳細画面に累計寄付額が表示されているのですでにある程度見えてきていますが、分野による寄付額・人数の偏りをどう考えるかなど)、ポートフォリオというサービスの特性から見えてくる話題提供や問いかけによって、NPO業界や寄付を盛り上げていってくれることを期待したいですね。

メルカリ寄付

donation.mercari.com

4つ目はメルカリ寄付。その名の通り株式会社メルカリが運営する決済サービスメルペイの残高を寄付できるというサービスで、メルカリのアプリ上から利用することができます。(一点注意が必要なのは「メルペイ残高の寄付」という点。メルカリで出品したサービスの「売上金」をメルペイ残高にするためには「アプリでかんたん本人確認」を済ませるか、支払先銀行口座の登録を行う必要があります)

メルペイの利用さえ問題がなければあとは非常に簡単です。一覧の中から寄付したい先を選び金額を選び、住所等に問題がないか確認をして決定するだけ。住所の情報などはメルカリの利用の中で事前に登録されている場合がほとんどですので、基本的には数タップで完了します。金額も1円からとなっており(団体により最低金額が異なる場合はあります)、非常に気軽に寄付を行うことができるのも良い点です。

面白いのは、寄付先一覧にはNPOだけでなく自治体や大学も並んでいることです。検索やジャンルの選択などの余計(?)な機能は削ぎ落とされ、NPOも自治体も大学も同じように一覧に並んでいるのを最初に見たときはなかなか新鮮だったのですが、ふるさと納税制度によって自治体への寄付もかなり一般的になってきているというかむしろふるさと納税制度を使って自治体へは寄付したことあるけれどNPOへ寄付したことはないという方もいらっしゃるであろうことを考えると特段の違和感は覚えない方が多いのではないかと思います。

こうした大手Webサービスによる寄付サービスやNPO支援プランはとりあえず出しただけだったり、出したは良いがあまり情熱が伴わずに尻すぼみになってしまうケースなども残念ながら見受けられるのですが、メルカリ寄付は今のところリリース以降も情報発信やサービスの拡充が続いており、一定以上の熱意を感じます。日本財団と連携した寄付型梱包資材の取り組みなどメインのサービス自体と寄付をつなげた取り組みなども素晴らしく、今後にも期待したいです。

メルカリ寄付の情報発信などはこちらから↓

merpoli.mercari.com

1TAP SAVE LIFE

onetapsavelife.japanheart.org

5つ目と6つ目にご紹介するのはNPOが独自に運営する寄付サービスです。まずはジャパンハートさんが運営する1TAP SAVE LIFEというアプリ。

小児がん治療などの医療費をワンタップで100円からお見舞い(支援)できるというサービスです。ジャパンハートさんはカンボジアで「こども医療センター」を運営しているのですが、そこに小児がんで入院している子どもたちへの寄付を募っています。自分の寄付が何に役立つのかを実感してもらいたいという点が強く表れた設計となっており、アプリ上で子どもたちそれぞれのプロフィール、ストーリー、病状や治療の状況、治療にあといくら必要なのかなどが表示されており、それを見て、どの子を支援したいかと金額を選択して寄付するという仕組みになっています。

受益者と寄付者を直接マッチングするような表現はワールドビジョンさんのチャイルド・スポンサーシップ制度を始め昔からある寄付表現の一つのあり方ではあるのですが、1TAP SAVE LIFEという名称にも表れているようにかなりスマホを意識して攻めた設計になっているなという印象ですが、「海の向こうの病院へスマホで気軽にお見舞い」といった柔らかな印象になるコピーもうまく使いながらバランスを取っているなと感じます。

2023年4月5日から5月31日まではSNSと連動したキャンペーンを実施しています。アプリのインストールや、SNS上でのシェアやいいねなどのアクションが集計され、そのアクションの合計数に基づいてパートナー企業であるSHIFT(1TAP SAVE LIFEアプリの開発も強力している企業)が寄付を行ったり、期間中に発生した寄付金額へのマッチングギフト(同額を上乗せ寄付すること)が行われるといった内容です。ぜひこの機会にアプリをダウンロードしてチェックしてみてください。

キャンペーンについては詳しくは以下をご確認ください。

prtimes.jp

オトナリ

florence.or.jp

最後にご紹介するのは子育てや親子の支援を幅広く行っているフローレンスさんが2021年にリリースしたオトナリです。

オトナリというサービス名称には「ちょっと嬉しい気持ちを、オトナリにおすそ分け」というコンセプトが込められているそうです。特徴は「スマホから気軽に」という点に特化してデザインが行われているところです。

フローレンスさんでは以前から団体への寄付の決済方法としてAmazonPayが導入されているのですが、オトナリではこのAmazonPayによる気軽な寄付をもっと押し出そうという狙いがあります。寄付を行う際の大きな障壁になることの一つが住所やクレジットカードなどの個人情報の入力の手間であることは、寄付をしたことのある方やNPOで寄付を募っている方であれば誰しも感じたことがあるかと思います。特にスマホを操作していて、手元にクレジットカードがないといった場面では「あとで寄付しよう」と後回しになってしまったまま機会損失している寄付は決して少なくないでしょう。それがAmazonを普段から利用している方であれば住所の記入もクレジットカード情報の記入も必要がありません。Amazonにログインするだけで登録されている情報をそのまま活用することができます。先にご紹介したジャパンハートさんの1TAP SAVE LIFEもAmazonPay決済を利用(加えてApplePayも対応)していましたが、スマホ特化の場合にはこのように決済の手間を省くことはポイントになりますね。

オトナリを見ていて面白いなと思ったのは、フローレンスという一つの団体の専用の寄付サービスでありながら、最初に「自分の関心によって寄付する活動を選ぶ」という寄付をすることを考えたユーザーが自然と想定するであろう行動が用意してあることです。「赤ちゃんを虐待死から救いたい」「障害児家庭が何にでも挑戦できる社会にしたい」「ひとり親家庭の貧困の連鎖を止めたい」の3つの中から選ぶのですが、幅広い事業を展開しているフローレンスさんだからこそできる表現の仕方だなと思いますし、自分が何に共感して寄付をするのか少額であっても少し立ち止まって考えてから寄付をしていただいた方が寄付者の方との関係は長く続きやすいように思います。

 

以上、いかがでしたでしょうか。

本記事では、「キーワードは共感から応援へ?スマホで気軽な新世代の寄付サービス6選」と題し、6つのサービスをご紹介しました。次回は「共感から応援へ」などこれらのサービスに共通する特徴やそこから見える傾向の分析を試みます。

最後までお読みいただきありがとうございました。
記事を楽しんでいただけたら、ぜひSNS等でシェアいただけますと嬉しいです。

 

2023/04/12 追記
続編の記事を公開しました。

www.daisuketsutsumi.com

 

 

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