こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。本日の記事は「NPOのWebサイトでコンバージョンを決める(目標設定する)ために考えるべきこと」と題し、Webマーケティングにおける目標設定として基本的であり、重要な考え方である「コンバージョン」について解説するとともに、コンバージョンの決め方・考え方に関してNPOならではのポイントについてもお伝えしていきます。
- 「あなたの団体のWebサイトのコンバージョンは何ですか?」
- Webマーケティングの目的はコンバージョンを増やすこと
- コンバージョンの内容は団体によって異なる
- NPOのコンバージョン定義のポイント
- コンバージョンは状況により見直していく
- まとめ
「あなたの団体のWebサイトのコンバージョンは何ですか?」
この質問に答えることはできるでしょうか。
本記事ではWebマーケティングを進めていく上での要となる「コンバージョン」について考えていきます。この記事を読み終わる頃には「自団体のWebサイトでのコンバージョンは○○だ」と答えられるように、考えながら読んでいただけると幸いです。
Webマーケティングの目的はコンバージョンを増やすこと
そもそもコンバージョンとは何でしょうか。アクセス解析ツールであるGoogleAnalyticsではコンバージョンは目指すべき目標という意味で使用されています。
コンバージョン(conversion)とは日本語で「転換」という意味です。
何が転換するのかというと、サイト訪問者が顧客へと転換するということです。
検索やSNSなど様々な経路でWebサイトに訪れる人がいますが、たくさんの訪問者の中から顧客を作り出すことこそがWebマーケティングで目指すべきものということですね。
顧客という言葉は金銭を対価とする営利目的の事業の対象者のことを指しているように感じる方もいるかもしれませんが、広く自団体のサービスや活動の対象者という意味で捉えてください。NPOの活動に当てはめた言い方をすれば受益者(自団体の活動で支えたい対象やその家族など)や支援者(寄付者やボランティアなど)という言い方になります。
Webサイトの訪問者が受益者や支援者へと転換するすることがコンバージョンということです。
多くの場合、受益者や支援者を増やしていくことがWebマーケティングで目指すべきことですので、Webマーケティングの目的はコンバージョンを増やすことということができます。
コンバージョンの内容は団体によって異なる
コンバージョンを考える上で難しいのは、その内容が団体毎に異なるということです。
先程コンバージョンとはWebサイトの訪問者から受益者や支援者へと転換することであると述べましたが、Webサイト上でどのような行動を取ってもらえれば受益者や支援者へ転換したとみなすのかということを決める必要があり、受益者や支援者のあり方は団体の活動内容や状況によって変わります。
受益者の内容が団体によって異なるのはイメージがしやすいかと思いますが、支援者についても単に寄付者やボランティアということではなくどのような支援を求めているのかは活動内容や状況によって異なってきます。
例えば、
- 寄付は募集しておらずボランティアを募集している
- マンスリーサポーターを募集している
- クラウドファンディングの支援者を探している
- 個人ではなく法人からの支援を募っている
など、必要な支援の形はさまざまに考えられます。
みなさんの団体では現在、受益者や支援者をどのように定義できるでしょうか。
Webマーケティングの担当者は何よりもまず、この点を考えコンバージョンの内容を明確にすることから始める必要があります。
逆にコンバージョンが明確でないということは、Webサイトの訪問者に何をして欲しいのかがはっきりしないサイトということになりますので、サイト上で行う情報発信も誰向けのものなのか曖昧になり伝わりにくいものになってしまう可能性があります。
NPOのコンバージョン定義のポイント
実際に自団体のコンバージョンを定義する上では以下の2つの点を考慮することが必要です。
- 自団体(のビジョン・ミッション)にとって望ましい行動
- 自団体で計測可能な行動
1についてはここまで述べてきたことと同じです。
自団体のビジョン実現・ミッション達成にとって望ましい行動をとった人を顧客(受益者や支援者)とみなすということですね。
支援者向けのマーケティングを例に考えてみると、自団体にとって望ましい行動とは、「寄付の申込」や「ボランティアの申込」、「イベントへの参加申込み」、さらには「自団体が取り組んでいる社会課題についての認知」などいくつも考えることができます。
サイト訪問者にして欲しい行動がいくつもある(コンバージョンが複数ある)ということは戦略が複雑にはなりますが、悪いことではありません。大切なのはそれぞれのコンバージョンに対して2つ目の条件「自団体で計測可能な行動である」を当てはめていくことです。
自団体で計測可能であるとはどういうことかというと、担当者が欲しいと思った時に参照できるデータであるということです。
「寄付獲得」や「ボランティア申込」「イベント申込」は件数や金額を数えれば良いということが直感的に分かりやすいかと思います。
では「社会課題についての認知」の場合はどうでしょうか。
この点を明確にしていくためには、Webサイト上でどのような行動を取ってくれたら「社会課題について認知したと言えるか」を考えていく必要があります。
例えば、「ある社会課題について詳しく知っていると答えた人の数」はデータとしてはありえますし、そのようなデータを取るための調査を行うことも不可能ではありませんが、Webマーケティングをしていく中で欲しいと思った時に参照できるとはなかなか言えませんので、Webマーケティングの目標となるコンバージョンの指標としては適さないといえます。
一方で、
社会課題について説明したページをページ用意し、ページを読んだ人の数
であれば、Webサイト上で計測していくことができます。
具体的にはGoogleAnalyticsなどのアクセス解析ツールを使用することで特定のページが閲覧された回数や閲覧した人数を計測することができます。ページを訪問した人がどれくらい内容を読んでくれているかの参考にするためにページを訪れた人の平均滞在時間という指標も使うことができます。
また、単にページを読んで欲しいということではなく、社会課題を知り共感してくれた人には、さらにその一歩先の行動までを取ってもらいたい、と考えることもできます。その場合例えば、
社会課題のページを他の人にシェアすることで社会課題の認知拡大に参加する人の数
という行動であればWebサイト上で計測することが可能です。社会課題の理解や認知、あるいは共感というWebサイト訪問者の内面の変化自体を計測することはできませんが、「○○な行動をしてくれたのであれば理解や共感をしてくれたといえるだろう」というWebサイト上の行動を考えるということです。
このように、Webサイト上でどのような行動をどこまで取ってほしいのかを考え、その行動を取ってくれる人が増えるように工夫していくというのがWebマーケティングの施策の考え方です。
なお、「特定のWebページを読む」と「Webページをシェアする」という二つのコンバージョンは択一の指標ではなく、一人の顧客に取ってほしい行動の段階として捉えることもできます。顧客に取って欲しい行動を段階的に考えていくということは、ファンドレイジングでよく使われるステークホルダーピラミッドとWebマーケティングを連動して考えていくということにもつながりますが、やや複雑になるため本記事では省略します。
コンバージョンは状況により見直していく
特定のWebページを読むことやシェアをするという行動が、実質的に社会課題の認知につながっているのか?という疑問を持つ方もいるもしれませんが、定義するコンバージョンはあくまでも仮説と捉えましょう。
設定する仮説が間違っている可能性はありますが、仮説でも良いので基準を設けることで、少なくともその基準に対して成功しているのか失敗しているのかという状況判断をすることができます。仮説は間違っていれば修正すれば良いですが、そもそも基準がなければ改善を意識したPDCAを回すことはできず仮説が正しいのかという疑問を持つこともできなくなってしまいます。
実際にPDCAを回しながらWebマーケティングが自団体のビジョンの実現やミッション達成につながっているのかを定期的に見直していくためにも、まずは、Webサイトの訪問者がサイト上でどのような行動を取ってくれると嬉しいのか?というコンバージョンの定義を行うことが大切です。
まとめ
以上、本記事ではNPOのWebサイトにおけるコンバージョンについて考えてきました。最後に、本記事の最初に挙げたのと同じ質問をもう一度させていただきます。
「あなたの団体のWebサイトのコンバージョンは何ですか?」
本記事の内容を踏まえて自団体のコンバージョンを考えることができたでしょうか。ぜひ一度自団体のコンバージョンは何なのかを今一度見直してみてください。自団体のWebサイトのコンバージョンについて以下の点をチェックしながら、欠けている点があれば解決できるように検討やサイト改善のアクションをすすめていただければ幸いです。
- 自団体のWebサイトのコンバージョンを最低一つ以上言える
- 自団体のWebサイトではコンバージョンを計測している(例:Google Analytics上で「目標」設定している)
- コンバージョンについて目標値が決まっている
- コンバージョンの獲得状況について定期的に確認し、サイトやWebマーケティング施策の改善点を検討している(PDCAを回している)