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KPIとは何か?要素を分解し、改善すべきポイントを探る視点の持ち方

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KPIとは何か?要素を分解し、改善すべきポイントを探る視点の持ち方

こんにちは。NPOコンサルタント堤大介( @22minda )です。本記事では「KPIとは何か?要素を分解し、改善すべきポイントを探る視点の持ち方」と題し、マーケティングやファンドレイジングを行う上でも重要な考え方となるKPIについて改めてお伝えします。

 

「指標=KPI」ではない!KPIに関するよくある勘違い

Webマーケティングやデジタルマーケティング、あるいはそれらを活用したファンドレイジングにチャレンジしようとすると必ず目にすることになるのが「KPI」という言葉です。営利、非営利を問わず重要な考え方ですが、NPOで活動している方の中には数値で考えることや、指標について考えることに苦手意識や敬遠したい気持ちを持っている方もいらっしゃるかと思います。活動の成果(社会的インパクト)や受益者・当事者の辛さのすべてを指標化、数値化していくことにはさまざまな議論や感情があるとは思いますが(私もあります)、マーケティングにおいてはNPOの活動分野だとしても、数値化のメリットが活きる場面も多くありますので、本記事で基本的な考え方から捉え直していただけると幸いです。

一番お伝えしたいことは、「指標=KPI」ではないということです。すべてを指標化、数値化すればいいという話ではありませんし、とにかくなんでも指標・数値化して追いかけさえすれば良いということではありません。自組織の現状に合わせて追いかけるべき、指標化して考えるべきポイントはどこなのかを明確にしていくという考え化がKPI的な考え方の基本なのです。

KPIの定義

まずは言葉の定義から確認していきましょう。

KPIとはKey Performance Indicatorの頭文字を取った略語で、日本語訳としては重要業績指標とされることが多いです。重要な業績上の指標、つまり、事業上の目標を達成するために重要な影響を与える指標のことです。ポイントとなるのはKPIはあくまでも事業目標を達成するための要素、材料であり、手段であるということですね。なお、事業の目標のことはKPIに対して、KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)といい、事業目標が達成されているかどうかを計測する指標のことを指します。

下図はKPIとKGIの関係を簡単に図式化したものです。

KPIとは何か

KPIの基本は要素への分解

続いて自組織のKPIを考えていくときの基本的な考え方である「要素への分解」についてお伝えしていきます。

例えば、寄付金を募る(ファンドレイジング)活動をしているとして、現時点で年間100万円の寄付を獲得できているとします。KPI的に考える際のポイントは「要素への分解」なのですが、数学の因数分解のような要領で「寄付金100万円」を構成している要素へ分解します。例えば一番基本的な分解を行うと以下のようになります。

寄付金 = サイトへの訪問者数 × 寄付確率 × 平均寄付額

そして、この分解した式にに実際の数値を当てはめてみると例えば以下のようになります。

寄付金100万円 = サイトへの訪問者数1,000人 × 寄付確率10% × 平均寄付額10,000円

Webサイトへ1千人の人が訪問しており、そのうち寄付をしてくれたのは10%(100人)で、一人あたりの寄付額の平均は1万円だった、ということですね。

KPIを考える基本は要素への分解

このように、分解をすることがKPIを考える上で非常に重要で基本的ななことなのですが、一つ注意が必要なのは、分解したものすべてが即KPIになる訳ではないということです。分解して出てきたもの(ここでは「サイト訪問者数」「寄付確率」「平均寄付額」)はいずれも寄付に関わる「指標」であることは確かなのですが、自組織なりのKPIを考える上ではもう一段階考えることが必要です。

(なお、分解の視点には上記のように「掛け算」で分解するやり方もあれば、「足し算」で分解することもできます。寄付金額を足し算で分解するには例えば「個人寄付額」と「法人寄付額」に分けたり、「単発寄付」と「継続寄付」に分けたりすることがえきます。また、掛け算で分解した要素・指標の一つであるサイト訪問者数を今度は足し算で分解して「自然検索からの流入数」「SNSからの流入数」「メールからの流入数」などに分解することができる、といった形で指標の分解の仕方はいくつもあり、これらの視点を自由に使いこなすことがWebマーケティング的なレベルを上げることにもつながるのですが、話が長くややこしくなるので今回は省略します)

分解した要素の中で自分たちが今改善すべきものは何か

指標に分解した上で次に考えるべきこと、それは「分解した指標の中で自分たちが改善できるものは何か?」ということです。

今回の例ではそもそも現状の寄付が100万円というところからスタートしていますが、実際にファンドレイジングにこれから力を入れていこうという状況では、「これまで年間100万円だった寄付金を150万円まで伸ばしたい」など何かしら改善してたどり着きたい事業上の目標(KGI)が先にあるはずです。具体的な金額までは定めることができていなかったとしても「もっと寄付を集めたい」「イベント参加者を増やしたい」など何かしらの改善目標があるからこそ、マーケティングやファンドレイジングに取り組む必要が出てきていることでしょう。

その目標にたどり着くために、分解した指標を元に「改善できるものはどれか」を考えていくわけです。

現状の指標は以下のような状況でした。

寄付金100万円 = サイトへの訪問者数1,000人 × 寄付確率10% × 平均寄付額10,000円

この寄付金額を150万円に伸ばすためには、色々なパターンを考えることができます。例えば以下の図のような形で、サイト訪問者数を1,500人に増やすか、寄付確率を15%に上げるか、平均寄付金額を15,000円に上げるか、いずれかを達成することができれば寄付金額150万円を達成することができます。あるいは、それらの組み合わせで複数の指標を同時に上げるという形でももちろん問題ありません。論理的にはどの指標を上げても良いですし、できることならすべての指標をどんどん改善できる方が良いのは間違いありません。ただし、実際にはすべての指標を思い通りに上げるということは現実的でないことがほとんどです。

寄付金額を上げるために何の指標を上げることができるか

例えば寄付確率を上げる(サイトに訪問してくれた人のうち寄付してくれる人の割合を高める)ためには、Webサイト・Webページ上での寄付の呼びかけの文言の書き方を変えてみたり、寄付が必要なこと自体を気づいてもらいやすくするためにボタンやテキストのデザインを変えたり、あるいは寄付申し込みフォームを入力しやすいように変えたりといろいろな方法が考えられますが、基本的にはWebサイト上での何かを変更することが必要になることが多いです。組織の状況にもよりますが、そのようなデザイン的な改善について知見を持っているスタッフがいなかったり、そもそもWebサイト上の何かを変更するには制作会社に依頼しなくてはならないといった組織では、寄付確率を上げるという施策は専門性やコストの面から難しいといったこともあります。

同じような理由で平均寄付額を上げるアプローチも難しそうだ、となった場合には、分解した「サイト訪問者数」「寄付確率」「平均寄付額」のうち、自組織が現時点で改善に向けて取り組むことができるのは「サイト訪問者数」を増やすことだけだとなることは往々にしてあります。この場合、「サイト訪問者数」がKPIになります

つまりKPIとは、分解した指標そのもののことではなく、分解した指標の中で「この指標を改善することで目標達成を目指そうと定めたもののことであるということです。そのため、基本的にはKPIは目標値とセットで決まることになります。(今回の例であれば「サイト訪問者数1,500人」がKPI目標であり、そこに集中して施策を展開することで、事業上の目標KGIであった「寄付金額150万円」が達成されるという形)

指標に分解すること、そして、分解した指標の中で自分たちが改善できるものはどれなのかを考えること、KPIについてはこの基本的な視点をまず身につけることが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事では「KPIとは何か?要素を分解し、改善すべきポイントを探る視点の持ち方」と題し、KPIの基本的な考え方についてお伝えしてきました。

  • KPIとは事業上の目標を達成するために重要な影響を与える指標のことである
  • KPIを考える基本は要素への分解だが、分解した指標すべてがKPIではない
  • 分解した指標の中で「自分たちが改善できるもの」はどれかを考える
  • 「この指標を改善することで目標達成を目指す」と決めたものがKPIとなる

Web上で「KPI 例」「寄付 KPI」などと検索をしてしまうと、出てくるのは代表的な指標です。例えばファンドレイジングの文脈であれば、寄付者数、平均寄付金額といった本記事でも出てきた指標の他にも、フォーム遷移率やフォーム完了率(寄付フォームに遷移した割合や、フォームの入力を終えて寄付決済が完了した割合)などのより高度なデジタルマーケティング的な指標が出てきたり、CPC(Cost Per Click)・CPA(Cost Per ActionもしくはAcquisition)といったWeb広告に関わる指標に出会ってしまったりします。それらの指標の文脈や意味合いを理解し、改善できる状況であればそれらはKPIになり得ますし、実際にそれらをKPIにしている組織があるのも確かですが、これからファンドレイジングにチャレンジしますという状況の組織の方がそれらの指標の難しさに面食らって「KPIって難しい、よくわからない」などとなってしまうことがないように、本記事が少しでもヒントになれば幸いです。

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